古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

2022年に「宇宙ホテル」が開業? お値段は12日間で10億円、米ベンチャーが発表

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2018/04/17 08:56
ハーバービジネスオンライン: オーロラ・ステーションの想像図 Image Credit: Orion Span © HARBOR BUSINESS Online 提供 オーロラ・ステーションの想像図 Image Credit: Orion Span

 2022年、休日は宇宙ホテルで贅沢なひとときを。ただしお値段は10億円なり――。

 米国のベンチャー企業オライオン・スパン(Orion Span)は2018年4月5日、こんな壮大な計画を発表した。この宇宙ホテルの名前は「オーロラ・ステーション」(Aurora Station)。最大4人の旅行者を乗せ、12日間にわたって宇宙に滞在できるという。

 三ツ星ホテルならぬ、ホテル自身が星になるこの計画は、はたして実現する可能性はあるだろうか。

◆NASAの技術者も参加した宇宙ホテル

 オライオン・スパンは、ソフトウェア技術者で起業家のFrank Bungerさんによって設立された。また、米国航空宇宙局(NASA)で宇宙ステーション関連の仕事に従事していたエンジニアが参加している。

 オーロラ・ステーションの全長は約13m、直径約4mで、内部は大型のビジネス・ジェット機ほどの広さをもつ。船内には2人の乗員、4人の乗客の合計6人が、12日間にわたって滞在できる。打ち上げは2021年、運用開始は2022年からを予定しているという。

 ステーションは高度320kmの軌道をまわり、約90分で地球を一周する。旅行者は眼下に広がる美しい地球の姿を眺めたり、一日の間に16回の日の出と日の入りを見たりすることができる。

 船内にはスイート・ルームのほか、VRを使った娯楽スペース、高速無線インターネットなど、ホテルとしての機能もしっかり用意されている。宇宙ホテル、あるいは民間の宇宙ステーションを建造するという計画はすでにいくつかあるが、同社はとくに“ラグジュアリー”であることに重点を置いている。

 旅行者は打ち上げ前に訓練を受けることになるものの、その内容は従来の宇宙飛行士が2年かけて行っていたことを踏襲しつつ、合理化によって3か月にまで短縮するという。宇宙飛行に必要な知識の座学をオンラインで行ったり、自社の施設で訓練を行ったりすることで合理化を実現するとしているが、具体的な方法は不明である。

 またステーション同士を合体させ、さらに広くすることもできるという。さらにホテルとしてだけでなく、国の宇宙機関の宇宙飛行士が滞在する場所としても、微小重力(いわゆる無重力)環境を利用した実験や試験を行う場所としても使用できるなど、幅広い活用を見込んでいる。

◆すでに4か月分の予約も完売!

 オーロラ・ステーションへの宿泊にかかる費用は1人あたり950万ドル(約10億円)で、これにはホテルへの滞在費のほか、ホテルまでの宇宙船の往復運賃や地上での訓練代なども含まれている。

 950万ドルといえばプライベート・ジェット機や大型クルーザーより安いこともあり、俳優やスポーツ選手、石油王など、購入できる人は少なくないだろう。

 また現在、ロシアも宇宙旅行を販売しているが、こちらは2000万ドルから4000万ドルもする。それと比べると半額以下なので、“破格”でもある。

 ちなみにデポジット(手付金)は8万ドル(約860万円)で、すでに4か月分の予約が完売したという。ただ、解約は比較的自由で、払い戻しも受けられるため、予約した全員が今後、実際に950万ドルを支払えるかはわからない。

◆しかし、本当に実現するのか??

 宇宙に浮かぶ豪華ホテルとはまた壮大な構想だが、建造はまだ始まっておらず、影も形もない状況なので、本当に2021年に打ち上げられるかはわからない。

 おそらく最大の問題となるのは、ホテルまでの人と物資の輸送手段である、宇宙船とロケットをどう確保するかということだろう。

 現在、イーロン・マスク氏率いるスペースXと、大手航空宇宙メーカーのボーイングが新しい宇宙船を開発しており、両者とも従来の宇宙船より低コストに運用でき、宇宙旅行にも使えると謳ってはいる。

 しかし、NASAなどはこの宇宙船に1人あたり10億円ほどの運賃を支払う予定で、もっと価格がこなれない限り、オライオン・スパンが掲げる「打ち上げと滞在込みで10億円」という滞在費は実現できそうにない。

 宇宙ホテルを建造することや、それを打ち上げることはそれほど難しくはないが、ホテルまでの足がなければ、山奥や絶海の孤島に建つホテル以上の、誰もたどり着けない秘境になりかねない。

◆まずは市場調査と国の需要が目的?

 オライオン・スパンがこのような計画を発表した背景には、まず潜在的な顧客となる富裕層からの反応を見ることが第一にあるのだろう。少額のデポジットを用意していることからも、「潜在的にこれだけの顧客がいる」という数字を出し、投資家などにアピールする狙いがあると考えられる。

 また、前述のように宇宙旅行に使える手頃なロケットと宇宙船がない以上、まずは宇宙ホテルとしてではなく、米国や欧州、日本などの国の宇宙機関の宇宙飛行士の滞在や、研究機関や企業などからの宇宙実験などといったことから始まることになろう。

 現在、米国など世界各国が共同で運用している国際宇宙ステーション(ISS)は、老朽化が進んでいることもあり、2020年代のうちに運用を終えざるを得なくなる可能性が高い。NASAなどは月を回る軌道に新しい宇宙ステーションを建造することを検討しているが、いずれにしても、現在ISSで行われているような飛行士の滞在や、研究機関や企業が実施している宇宙実験などはできなくなる。

 しかしオーロラ・ステーションがあれば、NASAなどの宇宙機関から委託を受けて、飛行士の滞在や宇宙実験を事業としてできるようになる。宇宙飛行士の訓練の合理化もまた、従来NASAなどの施設で行われたものに取って代わることができれば、そこでも利益が生み出せるかもしれない。

 とくに米国では、「民間にできることは民間にやらせる」という方針の下、宇宙開発の民間への開放が進んでいる。すでに貨物を輸送する無人船や、宇宙飛行士を運ぶ有人宇宙船、それらを打ち上げるロケットの開発や運用は民間が担っている。スペースXやボーイングが宇宙船を開発しているのもまさにその方針があってのことである。そして宇宙ステーションの分野でもまた、同じ流れを歩むことになろう。

 まずはそうした国が主体となる事業をこなし、実績も作りつつ、ロケットや宇宙船のコストが下がったころに、本格的に宇宙ホテルとしての活用も始めるというのが、彼らの思い描いている未来予想図なのかもしれない。

 たとえその目論見がうまくいっても、私たち庶民が宇宙ホテルに行ける日はまだ当分先のことになるだろう。それでも、そんな日が少しずつ近づいてきているのは確かである。

<文/鳥嶋真也>

宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行っている。著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。

Webサイト:http://kosmograd.info/

Twitter:@Kosmograd_Info(https://twitter.com/Kosmograd_Info)

【参考】

・First-Ever Luxury Space Hotel, Aurora Station, to Offer Authentic Astronaut Experiences(https://docs.wixstatic.com/ugd/8e3cbb_cd88361473594115b5e4b765430c7ef3.pdf)

・Orion Span Announces Aurora Station(https://www.orionspan.com/aurora-station-announcement)

・Orion Span | First Four Months of Reservations Sold(https://www.orionspan.com/first-four-months-sold-aurora)

・Orion Span’s Aurora Station(https://www.orionspan.com/aurora-station)

・Aurora Space Station Reservations(https://www.orionspan.com/aurora-station-reservations)

HARBOR BUSINESS Onlineの関連リンク

HARBOR BUSINESS Online
HARBOR BUSINESS Online
image beaconimage beaconimage beacon