古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

【北朝鮮情勢】「北朝鮮も戦争回避したいはずだ」伊藤俊幸・元海将 広島「正論」友の会講演会詳報

産経新聞 のロゴ 産経新聞 2017/04/18
【北朝鮮情勢】「北朝鮮も戦争回避したいはずだ」伊藤俊幸・元海将 広島「正論」友の会講演会詳報: 元海将の伊藤俊幸氏を招いた広島「正論」友の会の第6回講演会=広島市 © 産経新聞 提供 元海将の伊藤俊幸氏を招いた広島「正論」友の会の第6回講演会=広島市

 「トランプ米大統領の安全保障政策と日本への影響」と題して17日、広島市で開かれた広島「正論」友の会の第6回講演会。元海自呉地方総監の伊藤俊幸・金沢工業大虎ノ門大学院教授は、核兵器開発を進める北朝鮮に対し、米国が圧力を強める緊迫した国際情勢について、「北朝鮮側も戦争回避したいはず」などと解説した。講演の詳報は次の通り。

 北朝鮮をめぐる情勢が緊迫しているが、米海軍の空母が増派されたからといって、即座に戦争が始まることにはならない。トランプ政権の考え方や北朝鮮の対応などを冷静に判断する必要がある。

 一国が他国に対して武力行使できるとする法的根拠の一つは国連憲章。第2条で武力行使を否定しているものの、武力制裁を決議するための条項もあり、結果的に武力行使を容認している。第51条では国による自衛権も認めている。

 トランプ政権はシリアを攻撃したが、これは国連決議による制裁ではなく、自衛権の行使でもない。従って、国際法上は違法ということになるが、これを非難しているのは、空爆されたシリアのアサド政権と、それを支援するロシア、イラクのみ。ほとんどの国から非難されていないのは、攻撃の理由がシリアの化学兵器使用に対する制裁だからだ。「人間の安全保障に関する人道的介入」ととらえられている。

 

そこで北朝鮮をめぐる情勢だが、北朝鮮は核兵器を所有しているが、化学兵器使用は確認されていない。国際的に違法である化学兵器に対して、核兵器を持っていること自体は制裁対象とならない。核不拡散条約はあるものの、北朝鮮は加盟国ではないし、インドやパキスタン、イスラエルなどの保有国は制裁されているのかということになる。

 そのため、米国は即座に北朝鮮を攻撃するオプションを選べない。しかし、北朝鮮が進めている核開発は何とかやめさせたい。それが今の情勢だ。ミサイルに関しては、いくら発射実験を繰り返しても、今のところ米国は軍事的脅威とは思っていない。核開発の方を深刻だととらえている。

 トランプ政権は元々、北朝鮮にはまったく関心がなかった。安全保障担当スタッフの布陣をみても、明らかに中東重視。中でもイスラム国(過激組織、IS)対策を重視しており、打倒作戦の準備を着々と進めている。

 一方、北朝鮮の金(キム)正(ジョン)男(ナム)氏が化学兵器で暗殺され、米国世論が北朝鮮に注目。トランプ政権は急(きゅう)遽(きょ)、北朝鮮に対する行動を起こした。

 しかし、現状は太平洋、インド洋を担当する艦隊に対して、空母の遊(ゆう)弋(よく)ルートを通常より北朝鮮に近づけるように指示した程度。圧力をかけてはいるものの、あくまで“平時のミッション”にすぎない。核実験停止要求に対し、どんなボールを投げ返すかの選択権は今、北朝鮮側にある。

 

この情勢の中で、北朝鮮は最高人民会議(国会)が久しぶりに外交委員会を作った。米国にパイプを持っている複数のメンバーを起用。しかも、金(キム)日(イル)成(ソン)生誕105周年の軍事パレードで金正(ジョン)恩(ウン)朝鮮労働党委員長がスピーチをしなかった。これは、最高指導者がいったん口に出したことは訂正ができないから。代わりにナンバー2が「全面戦争には全面戦争を、核戦争には核戦争を」と述べた。つまり北朝鮮の側から引き金を引く気はない、というメッセージだ。

 背景には米軍の戦闘能力の高さがある。イラク戦争では特殊部隊が活躍し、イラク軍内部の指揮・連絡機能を寸断した。いくら兵力が残っていても、司令部からの命令がなければ末端の部隊は動きようがないのが軍隊。米軍は、動きがとれなくなったイラク軍部隊の隙間を縫って進撃し、最終的にフセイン大統領の首を取った。この実力は当然、金正恩委員長も知っており、戦争になれば命がないと怯えている。従って北朝鮮側も強硬にみえる発言はともあれ、戦争を回避したいと思っているはずだ。

産経新聞の関連リンク

image beaconimage beaconimage beacon