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中国経済もデフレ開始か? お金を使わなくなり始めた中国の若者たち

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2019/02/13 08:33 ハーバービジネスオンライン
今、中国で大人気のチーズティーの店。週末になると3~4時間待ちになることもザラ © FUSOSHA Publishing Inc. 提供 今、中国で大人気のチーズティーの店。週末になると3~4時間待ちになることもザラ

 春節(旧正月)で爆買いする訪日中国人の姿が今年も注目されたが、本国では真逆の現象が起きている。経済が低迷期に突入し、デフレの懸念も出てきた中国の今をリポートする!

◆不況に備える中国若年層セコロジー生活

 急速な経済成長を背景に消費拡大が続いてきた中国だが、風向きが変わり始めた。米中摩擦が先行きに暗い影を落とし、GDPの伸び率も28年ぶりの低水準。さらに年初に李克強首相は「苦しい生活に備えよ」と述べ、経済失速を警告した。こうしたなか、庶民の間で、購入する財やサービスのグレードを下げ、節約に繋げる「消費降級」と呼ばれる動きが広がっている。

 その実態を調査すべく、取材班は現地へ飛んだ。まず訪れたのは広東省広州市の繁華街、一角に長蛇の列が続く一軒の店舗が。ここは全土100店舗以上を展開するカフェチェーン「喜茶」だ。同店の名物は中国茶や紅茶に泡状のチーズを浮かべた「チーズティー」なるドリンクで、若い女性を中心に人気が高い。この日は、注文するまで1時間、注文後に商品受け取りまで40分待ち。それでもまだマシなほうで、別の店舗では最長7時間待ちを記録し「並び屋」も横行しているというのだ。

 短気でせっかちな中国人が、いったいどうしたというのか。前に並ぶ若い女性2人組に聞いた。

「友達と話しながら並ぶので苦にならない。1時間並んで、お茶を飲みながら1時間。300円で2時間楽しめればコスパはいい。それに有名店で撮った写真は、SNSにもアップできる。スタバだと一杯450円はするし、希少性もない。今さらフラペチーノの写真なんて自慢にもならないでしょ」

 中国では今、喜茶のほか、日本でも人気のタピオカミルクティーやフルーツドリンクを出す店など国内発のカフェチェーンが若い女性を中心に人気を博している。

 一方、スタバの中国での売り上げは昨年、進出20年で初めてとなる前年同期比2%減となった。実情を探るべく、深圳市内の店舗を訪ねるとまさかの満席。ただ、よく見るとテラス席に陣取る多くの人々の手元にはカップが見当たらない。その代わりに、持参した水筒に口をつけている人が目立つ。彼らは店では何も注文せず、席だけを利用しているのである。

「中国の飲食店は、何も注文せずに居座る客に対して意外と寛容なんです。スタバは無料でWi-Fiも使えるので、延々スマホゲームをする人も多い。出前アプリで別の店の食事を頼んでスタバまで配達させるツワモノもいます」(現地駐在の日本人女性・36歳)

◆外食すらしなくなった中国の消費者層

 こうした消費者による“セコロジー”の横行により、売り上げが低迷しているのはスタバだけではない。深圳市内で日本料理店を経営する日本人(44歳)は話す。

「利益率の高い酒類を売ってナンボの日式居酒屋では最近、酒の持ち込みに泣かされています。スーパーで買った日本酒や焼酎を持参する客が少なくない。日本酒の場合、市価の3~4倍で出しますから、客にとってはかなり安上がりです。先日、火鍋店に行ったらスーパーで買ってきた豚肉や羊肉のパックを持参している連中も見かけましたよ」

 さらに財布のひもが固い人は、外食すらしないという。

「今、話題の節約術が『インスタント麺買い置きチャレンジ』です。まず給料日に1か月分のインスタント麺を買う。ネットでまとめ買いすれば60食分が2500円ほどで手に入る。これでできるだけ食い繫ぎ、食費を浮かせる。どれだけ節約できたか、SNS上で自慢するのがはやっています」(前出の日本料理店経営者)

 そんな流行を反映してか、インスタント麺の売り上げは昨年、急激に伸びた。なかでも伸び率が高いのは高価格帯の商品で「外食を控えて家でプチ贅沢」といった消費動向を表している。インスタント麺のトッピングや白飯のおかずに欠かせない小袋のザーサイ(一袋10円程度)も大幅に売り上げを伸ばしている。

 かつて賄賂の代名詞だった中国焼酎の「白酒」も低価格帯が席巻。一瓶100円ほどの最低ランクの「二鍋頭」がバカ売れしている。

◆貿易統計ではすでにデフレの兆しもあり

 消費降級は「食」だけにとどまらない。アパレル業界も消費降級に苦しんでいる。上海に住む日本人女子留学生(26歳)は話す。

「無印やユニクロのコンセプトを模倣したシンプルデザインで安価なアパレル雑貨店が雨後の筍のように誕生している。若い女性はブランド品を買わず、そういう店で500円くらいのワンピースやシャツ3、4着を買って着回している人も多い。SNSの普及で友人と集まったり、繁華街に出かける機会が減っているので、それで事足りてしまうんです」

 タクシーも、もはや1人で乗るのはぜいたく品というイメージになりつつある。北京に住む日本人駐在員(45歳)の話。

「大手配車サービス『滴滴』が始めた相乗りサービスが大人気。アプリ上で同じ方向に移動したい人同士をマッチングするんですが、うまく相乗り相手が見つかればタクシー代が半額~3分の1以下になる。相乗りで行けるところまで移動し、そこからはシェア自転車に乗り換えるという移動手段が常識となりつつあります」

 庶民の間で消費降級の動きが広がるなか、中国国家統計局が公表した昨年12月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比で0.99%の上昇にとどまり、前月の2.7%から大幅に鈍化している。

 丸三証券経済調査部長でエコノミストの安達誠司氏は、中国経済でさらに深刻な事態が進んでいる可能性を指摘する。

「中国政府が公表する経済指標は、中立性が疑問視されることが多いですが、相手国のある貿易統計は比較的信用できる。昨年12月の中国貿易統計を見てみると、輸入は前年同期比で7.6%減と’16年7月以降最大の落ち込みとなっている。貿易戦争が続く米国からの輸入は35.8%減って、これは容易に理解できますが日本からの輸入も7%減で、EUからの輸入も減少している。これはもはや、米中摩擦の影響ではなく、国内の消費全体が落ち込んでいることを示している。デフレを疑ってもいいレベルです」

 日本経済の救世主といわれる中国人観光客の爆買いも、いつまで続くのか。あまり頼りすぎないほうがいいのかもしれない。

取材・文・撮影/奥窪優木 吉井 透 五月花子

― お金を使わない中国の若者 ―

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