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台湾・蔡政権1年:中国から圧力 内政は停滞

毎日新聞 のロゴ 毎日新聞 3日前
会合であいさつする台湾の蔡英文総統=台北市で2017年5月19日午前、福岡静哉撮影 © 毎日新聞 会合であいさつする台湾の蔡英文総統=台北市で2017年5月19日午前、福岡静哉撮影

 【台北・福岡静哉】台湾で民進党の蔡英文政権が発足し20日で1年を迎える。中国と台湾が「一つの中国」に属すると中台間で確認したとされる「1992年合意」を受け入れない姿勢に対し、中国からの圧力が強まり内政は停滞している。支持率は低下傾向で、改革に向けた「生みの苦しみ」の渦中にある。

 蔡氏は19日、海外の華字紙記者らとの会合で「(中台)外交で我々が堅持してきた立場と価値は変わらない」と強調した。馬英九前政権(国民党)と同様に合意を受け入れるよう迫る中国に屈しない姿勢を改めて示した。

 影響は地域経済に及んでいる。中国から台湾への観光客は政権発足以降、毎月減っている。圧力の一環とみられ、東部・花蓮(かれん)県の景勝地、太魯閣(たろこ)国家公園で土産物店を営む王春蓮さん(51)は「売り上げは半分以下だ」と不満顔だ。

 蔡氏は「(中台)双方が『新たな答案』に臨むべきだ」などと妥協点を探るが、中国側に歩み寄る様子はない。22日からの世界保健機関(WHO)総会に台湾はオブザーバー参加できない見通しで、中国国務院台湾事務弁公室の安峰山報道官は「特別な配慮を続けるのは難しい」と参加阻止に動いた点に言及した。

 対米関係では、北朝鮮問題を巡り米中が接近し、台湾には不利な情勢だ。日本との関係は良好だが、東日本大震災以来続く福島など5県産食品の禁輸措置は世論の反対で解禁のめどがたっていない。

 民間団体・台湾民意基金会の調査によると、発足当初69.9%あった蔡政権の支持率は今年4月には38.6%。他の調査では支持率20%台もある。外交の停滞に加え、内政で野党との対話を重視する蔡氏の姿勢が裏目に出て年金改革、労働法制改革など多くの懸案が反発を受け、足踏みしている。総統府資政(顧問)の呉澧培氏(82)は取材に「失望している」と率直に語った。

識者談話

 政治大学(台北市)客員教授 松田康博・東大教授(中台関係論) 蔡政権に支持者は新鮮な人事や果断な政策決定を期待した。だが国民党系のベテランを登用するなどして批判を浴び、経済成長・格差是正策でも新機軸を打ち出せていない。国民党の不透明な資産の回収、年金改革、司法改革、同性婚など難しい課題を同時に進めようとし、反発を受けて停滞している。決断力と実行力に疑問符をつけられているが、一つずつ実現すれば支持率は回復するはずだ。

 2020年には総統選がある。内政の成果が乏しければ18年11月の統一地方選で苦戦し求心力が落ちる。既に民進党内で不満が強まっており年内に成果がなければ再選に黄信号がともる。対中関係は今秋の共産党大会まで展望を描けない。中国は蔡政権との公的パイプを閉ざし、圧力を強める傾向にある。ただし双方とも自制しており、それが「新たな常態」になるかもしれない。【聞き手・福岡静哉】

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