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有名ブロガーとの収賄疑惑で韓国の有名議員が自殺。窮地に陥る韓国のリベラル勢力

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2018/08/14 15:34

 韓国警察によると7月23日朝、ソウル市のマンションの入り口付近で男性が死亡しているのが見つかった。警察はマンションの17~18階の階段で死亡男性の身分証や遺書とみられる文書などを発見。男性が飛び降り自殺したとみている。

 死亡した男性の名は「魯会燦(ノ・フェチャン)」。韓国の国会議員でありながら、野党「正義党」の院内代表も務める政治家である。現場で発見された遺書には、こう書かれていた。

「ドルイドキング事件と関連し、金銭を受け取ったのは事実だ。しかし、不正なことはなにもない。家族に申し訳ない」。賄賂疑惑の中で、彼を死へと追いやったものはなんなのか。世論と政府に衝撃が広がっている。

 そもそも、ことの発端は今年5月。

 韓国の有名ブロガー「ドルイドキング」が、SNSで「いいね」や「コメント」を偽造し、世論操作をした疑いで逮捕起訴された。のちに文在寅大統領の側近との接触も明らかになり、「2017年の大統領選への影響」がドルイドキング事件の最大の焦点となっている。

 ほかにも、「ドルイドキング」を名乗っていた金容疑者は、政界工作をしていた疑いも浮上しており、現在もドルイドキング特別検査チームによる捜査が進行中である。

 死亡した魯氏はドルイドキングの側近から不正な政治資金を受け取った疑いが持たれていた。この疑惑は、ドルイドキングの側近とみられるこの男が、魯氏に約5000万ウォンの資金を渡した政治資金法違反、および証拠偽造などの疑いで今月17日に逮捕され、急展開を見せていた。

 当初から疑惑を否定してきた魯氏は、この男の逮捕後にも再三にわたって否定し続け、逮捕の翌日、18日に韓国与野党の院内代表がそろってアメリカを訪問した際にも、「ドルイドキング側から金を受け取ったことなどない。とんでもない話だ」と話していた。ほかにも、「(特検が)調査するのであれば、誠実に堂々たる態度で真実を暴こう」とも。

◆魯氏の死亡によって「捜査ふりだし」不可避に

 魯氏の遺書は、これまでに3通発見されている。

 2通の遺書には家族に対する思いが綴られていた。そして残る1枚の遺書には、ドルイドキング事件特検チームによる捜査に関する内容が書かれていた。

ハーバービジネスオンライン: 魯会燦氏の死を報じる韓国のYTNニュース © HARBOR BUSINESS Online 提供 魯会燦氏の死を報じる韓国のYTNニュース

 報道によると、遺書には「2016年に2度にわたって、ドルイドキング側から資金を受け取った。(中略)のちにわかったことだが、(受け取った資金は)多くの会員たちの自発的な募金であったため、正式な後援の手続きを踏まなければならなかった。 しかし当時は、そのようにはしなかった」、「今となっては、とても愚かな選択であり、幼稚な判断だった」と書かれている。(参照:MBN)

 魯氏の自殺を受けて、捜査を担当していた特検チームには、動揺が広がっている。

 まさに、捜査の果てに掴んだドルイドキングの側近の身柄確保を通じて、ようやく魯氏への追及を強めようとしていた時。そもそも、盧氏の死亡が報じられた23日には、盧氏に資金を手渡したとされる男の事情聴取を行う予定だった。特検チームは盧氏の死亡を受けて、この聴取を中止にしている。

 金銭授与を認めた盧氏は、死亡したことによって起訴が不可能なため、「公訴権なし」で、不正資金事件が終結する見通しだ。

 しかし、特検チームは、盧氏が遺書を通じて金銭受け取りの事実を認めているだけに、資金を渡した「ドルイドキング」こと金容疑者らに対する捜査の必要性を強調している。韓国の政治資金法45条によると、不法に造成された資金を受け取った人のほかに、渡した人も処罰される規定となっている。

 また、今回の盧氏の遺書によって、ドルイドキングの政界工作が決定的となり、「2017年の大統領選」への影響に対する捜査が本格化されるかどうかも、今後注目される。

 一方で、盧氏は、韓国の進歩政治の象徴だったといえる。

 政界デビューを果たした時から、常に弱者側の立場にたっていた。自身も慎ましく質素な生活を送ることを心がけ、リサイクル用品などを愛用し、贅沢な暮らしはしなかった。

 本質を突きながらもユーモアに富んだ発言は国民から支持を得て、絶大な支持を誇っていた。一般受付を行っている葬儀場には、参列者が絶えず、すすり泣く声も多く聞こえてくる。盧氏を称えたメッセージが会場にあふれ、院内代表を務めていた「正義党」への入党者が増えつつあるのだとか。

 ソウルにある延世(ヨンセ)大学の大講堂で行った追悼式には、1600人を超える人が殺到。(参照:OhmyNews)韓国各地で「魯会燦(ノ・フェチャン)現象」が相次いでいる。(参照:連合ニュースTV)

◆文在寅政権にとっても痛手に

 盧氏の死は、現在の文在寅政権にとっても、大きな打撃となりそうだ。

 韓国は大統領制であり、大統領の出身政党が与党とされる。したがって、与党が議会の第一党とは限らず、議席の過半数を制しているとは限らない。与党が過半数の議席を有していない場合、法律改正などの政策を実現するためには、野党との協力が必要である。

 これまでの韓国国会は、与党である「共に民主党」と野党「自由韓国党」、「正しい未来党」に加え、「民主平和党」(14議席)と「正義党」(6議席)が立ち上げた共同交渉団体「平和と正義の議員の会」 (20議席)の4大勢力で成り立っていた。

 交渉団体は日本の国会における院内会派に相当し、20名以上の国会議員を有する必要がある。盧氏が死亡したことによって、「平和と正義の議員の会」所属議員数が19席となり、交渉団体の要件を充たすことができなくなってしまった。したがって、国会は今後、与党「共に民主党」と野党「自由韓国党」、「正しい未来党」の3交渉団体の体制での運営となる。

 保守系である「自由韓国党」と「正しい未来党」が現政権の「共に民主党」を2対1で圧迫する形勢となったことで、文在寅政権が掲げる改革立法にも、劣勢が見込まれる。

 革新系交渉団体とされていた「平和と正義の議員の会」が、盧氏の死によってなくなることは、現政権にとってかなりの痛手であるといえる。

 この一件で「ドルトイキング」事件は収束されるのか。政治家(やその秘書)の死をもって収束される事件は、いつもどこかグレーできな臭い。

 万が一にも、文在寅大統領が「ドルイドキング」の工作によって当選したとされるならば、いずれはその工作が、ブーメランとして自身にかえってくるかもしれない。

<文・安達 夕 @yuu_adachi>

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