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ミッツ・マングローブ「サッカー新歴史『ヴォルゴグラードの葛藤』」

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2018/07/11 16:00

 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、サッカー、ワールドカップの日本-ポーランド戦を取り上げる。

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 ご多分に漏れず『にわかサッカー観戦者』(ただし独りで、静かに)と化している私ですが、Jリーグ発足時の常軌を逸したサッカーフィーバーに続き、あの“ドーハの悲劇”を目の当たりにさせられた『非サッカーファン』にとっては、どうしても「どうせまた最後に……」というネガティブな想像をしてしまいます。私の場合、その後日本がワールドカップ初出場を決めた“ジョホールバルの歓喜”とやらを、海外にいて知らないため、ドーハの記憶が書き換えられないまま現在に至っているのです。ジョホールバルと聞いても、女性ホルモンを多量摂取する老舗ニューハーフ店のママの顔しか思い浮かびません。

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する © Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

 それにしてもネットもメディアも、本田選手に対する『手のひら返し』を自虐的に扱うことで、あれほどまでに人格すら否定するようなひどい物言いをしていたのをちゃっかり正当化しているのが非常に胸クソ悪い。日の丸を背負っている人には節操は関係なしなのでしょうか? 私がいまいちサッカー好きになれない理由がまさに集約されています。とりあえず本田圭佑さん、貴方はホントに男前です。カッコイイ!

 てなわけで、たった今、日本vs.ポーランド戦が終わりました。なんとも珍しいものというか、もはや素人が茶々を入れられる次元ではないような気もしますが、この妙なもどかしさを世間はどう感じ、そして処理しているのか。もちろん独りで観たので分かりません。相変わらず渋谷のスクランブル交差点には人が溢れているようですが。

 勝ち点も得失点差もセネガルと並んだ状態で、日本を決勝トーナメントに推し進めたのはイエローカードの差。今大会から導入の『フェアプレーポイント』という制度だそう。真っ向勝負を放棄して、裏でセネガルが負けることに賭けるという他力戦術を取った日本にとっては何とも皮肉なネーミングです。それにしても最後の11分間。パスを回し続ける選手、見守るベンチ以上に戸惑っていたのは、実況アナウンサーと解説陣だったのではないでしょうか。誰ひとりとして「逃げ切れ、ニッポン」とか「決勝トーナメントにさえ進めればいいんだ、気にするなニッポン」といった言葉を発する人がいなかったのは、いわゆる「勝負は最後まで全力で正々堂々と」という日本人のスポーツに対する精神性において、あの短時間では乗り越えられない矛盾があったからだと思います。ある意味彼らは日本人を貫いた。

 さて、この日本サッカー史に残る『勝利という名の敗戦』を、世の中は今後どのように伝えてゆくのか気になるところです。『ヴォルゴグラードの11分』『ヴォルゴグラードの賭け』『ヴォルゴグラードの後味』いろいろ出てきそうですが、早くも「観客はお金を払って観ているんだからつまらない試合するな!」「W杯のチケットは高額なんだぞ!」といった論調が高まっている様子。散々分かったような口を叩いておきながら、結局最後は金かい! 思っても口に出したら無粋。

「何を言われようと、あの時は決勝トーナメントに進むための賭けに勝ったんだ」と胸を張って語り継いでゆくべきだと思いますが、この調子だと「あの件には極力触れないように」的な自主規制案件化しそうな雰囲気です。ともすればドーハの二の舞いだったというのに。

※週刊朝日  2018年7月20日号

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