古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

渋野日向子は本物か? 早熟女子ゴルファーはなぜ「短命」が多いのか

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2019/08/13 17:00
渋野日向子は活躍を続けられるのか? (c)朝日新聞社 © Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 渋野日向子は活躍を続けられるのか? (c)朝日新聞社

 20歳の渋野日向子が、AIG全英女子オープンで42年ぶりの日本人メジャー優勝を果たしたことで、女子ゴルフが再び脚光を浴びている。渋野の凱旋出場となった北海道meijiカップでは、札幌国際カントリークラブで大会が開催されてから最多となる1万6,407人を3日間で動員。「シブコフィーバー」ぶりを示す結果となった。

 渋野は、これまでと180度激変したメディアや周囲への対応に終われ疲労度も相当なものだろうが凱旋試合を13位タイでフィニッシュ。帰国2戦目のNEC軽井沢72ゴルフトーナメントでも、上位進出や優勝という相当なプレッシャーをかけられそうだ。

 しかし、渋野のプレーは周囲のこうした重圧を受けにくいようだ。プロ、アマを問わず多くのゴルファーを指導しゴルフメディアでも活躍する中井学プロは、次のように評価する。「渋野選手のスイングは、メンタルに揺さぶられないスイングです。パッティングも魅力的ですが、実はアイアンが非常に良いです。インパクトからフォローにかけてのハンドアクションが少なく身体でヘッドを返しています。これは長持ちするし、プレッシャーがかかっていても、それがショットのミスになりにくいスイングをしています」。

 一方、渋野は、国内で今季2勝する活躍を見せているがプロテストに合格したのは昨年のことでそれまでは無名、いわば突然現れたヒロインだ。女子ツアーには過去にもこうして彗星のごとく現れスターダムに登りつめた後に、長続きせず旬が短くなってしまう選手が少なくない印象がある。余計なお世話ではあるが、今回の空前の盛り上がりを見ると、渋野もそうした道を辿ってしまうのではないかという一抹の不安もよぎる。

 ここ数年だけ見ても、国内では森田理香子、堀奈津佳、渡邉彩香らがトッププロとなった後に低迷した現実がある。例えば森田は2013年に賞金女王にまで君臨したが、2015年に賞金ランク20位になるとそれ以降は不振に陥り、昨年はニチレイレディスが最後の出場で賞金ランクは131位。現在は休養中となっている。

 また堀も、2013年に2勝を挙げ賞金ランクは前年の72位から10位へと躍進したが、2015年にシード落ち。そこから2年間はプレーした試合全てで予選落ちを喫し、今季も5試合に出場しているがやはり予選で姿を消している状態だ。

 渡邉も身長172センチの恵まれた体格から繰り出されるティーショットが魅力で、2015年には賞金ランク6位となったが、これがピーク。ここからはシーズンごとに成績を落とし、今季は先週まで17試合で予選落ちする結果となっている。

 このようにツアーのトッププロとなった彼女たちが、長く同じようなプレーができない理由はどこにあるのだろうか。中井学プロによれば、その要因は大きく分けて2つあるという。

「プロテストを突破して、1勝目、2勝目くらいまでは勢いで行けることがあります。ただそこで調子が悪くなった時に、不調になった原因が分からず苦しんでいるようです。上手になった過程を、上手に踏めていない場合があります」

 女子プロたちは、小さな頃からプロゴルファーになるために、日夜、ゴルフに取り組んできた。当然、ゴルフは上手い。彼女たちの努力に対して中井プロも「本当に尊敬に値する」と頭が下がるという。

 しかし、そんな彼女たちはプロとなり、試合で良いスコアを出すわけだが、その結果がどうして起きているのかを理解していないというのだ。上手くなった理由が分からなければ、悪くなった理由も分からないということ。勢いの良い上昇気流にも乗るが、一旦、歯車が狂うと急降下。落下速度を落としたり、再び上昇気流に乗せる術を見い出せないのだ。

 中井プロは続ける。「2つ目の原因として考えられるのがバーンアウトでしょう。彼女たちはジュニアの時代からゴルフを生活の中心にしてきました。優勝して目標を達成し、その後も休みなく試合に出続けていると、さすがに疲弊してしまいます。最近は20代前半でトップに立つことが少なくないですが、それ故、バーンアウトも早いのではないでしょうか」。

 燃え尽き症候群とも呼ばれるバーンアウトは女子プロに限らず、どんなアスリートにも起こることだ。記録更新やオリンピックのメダル獲得に向け、極限のトレーニングなどに取り組んできた人が、突然、ガス欠したように無気力になる。もちろんこれはアスリートだけの現象ではない。人並み以上に仕事や勉強に取り組んでいた人にも起こるし、誰でもバーンアウトする可能性はあるだろう。

 昨今の女子ゴルフ界は、1998年度生まれの「黄金世代」がツアーを席巻している。今季も22戦が終了し、その内8勝は1998年、99年生まれの日本人選手だ。渋野もそんな「黄金世代」の一人。気になるのは、彼女たちが今のような活躍を続けることができるのかということだろう。

 中井プロは「『黄金世代』の良さの一つは活躍している人数が多いことです。みんな上昇志向も強いですが、ライバルが多いためバーンアウトしにくいと言えるでしょう。全英女子を制した渋野選手は、今後も国内でプレーするようですが、その理由として『日本で十分に成績を出していない』と話しています。これは42年ぶりの快挙を達成しても全く満足していないということ。他の『黄金世代』も渋野選手の活躍に大きな刺激を受けました。彼女たちが切磋琢磨している以上、燃え尽きることはないでしょう」と分析してくれた。

 息の長い選手でいるためには、多くのライバルに囲まれた方が良いというわけだ。となると大切になるのが、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)や国内ゴルフ界がしっかりと、そうした環境を整え持続性を持たせること。個人や選手に任せてスターの誕生を待つのではなく、全体が一丸となり多くの有望選手を輩出できる育成方法を確立し、それをシステム化することだろう。

AERA dot.の関連リンク

image beaconimage beaconimage beacon