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F1ライセンス取得条件は厳しすぎ?リザーブドライバー不在に見る問題。

Number Web のロゴ Number Web 3日前 尾張正博
F2ハンガリーGPで優勝を飾り、そのままザウバーでF1合同テストに参加した松下信治だが、F1デビューへの道はまだ険しい。 © photograph by AFLO F2ハンガリーGPで優勝を飾り、そのままザウバーでF1合同テストに参加した松下信治だが、F1デビューへの道はまだ険しい。

 夏休み前、最後の一戦となったハンガリーGPで、ちょっとしたハプニングが起きた。ウイリアムズのレギュラードライバーを務めるフェリペ・マッサが体調を崩して、グランプリの途中で欠場を余儀なくされたのだ。

 ただし、そのタイミングが最悪だった。というのも、F1では代役のドライバーがレースに出場するには、決勝前に少なくとも1回はプラクティスセッションに参加しなければならないという規約がある。マッサが欠場を決定したのは、土曜日のフリー走行3回目の直後。つまり、その時点でレースの前に残されたセッションは予選しかないため、ウイリアムズは急きょ代役を探さなければならなかった。

 ウイリアムズには、元F1ドライバーのポール・ディ・レスタというリザーブドライバーがいる。リザーブドライバーとは、文字通りレギュラードライバーに不測の事態があった場合の予備のドライバーだ。

リザーブドライバーは常に帯同しているわけではない。

 ただしリザーブドライバーは、グランプリ期間中に常にチームと帯同しているわけではない。例えば、マクラーレンはジェンソン・バトンがリザーブドライバーを務めているが、ハンガリーGPにはバトンは不在だった。リザーブドライバーを雇うだけでも高額な報酬が必要になるうえ、その移動費もまかなうとなると、費用は膨大になるからだ。

 幸いディ・レスタは、イギリスのテレビ局の解説者としてハンガリーGPに来ていたから、急きょ土曜日のフリー走行3回目終了後から予選までの2時間半の間に、予選に参加するための最低限の準備ができた。これがもしマクラーレンに起きたアクシデントだったらどうなっていたか、と考えると笑い事では済まされない。

 これはマクラーレンの危機管理体制が甘いと言っているのではない。たとえば王者メルセデスはハンガリーGPに限らず、今年はシーズンを通してリザーブドライバーが不在だ。その理由のひとつになっているのが、スーパーライセンスの問題だ。

「18歳以上で、有効な自動車運転免許所持」の義務化。

 スーパーライセンスとは、4輪モータースポーツを統括するFIA(国際自動車連盟)がF1に参加するための資格として設けている、特別なライセンスだ。かつては盛んに行われていたテストで、ある一定の距離F1マシンを走りこめば取得できたのだが、現在は事実上テストが禁止されたために、取得が難しくなっている。

 実は2016年から、この規則がさらに厳しくなった。それは前年にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が史上最年少となる16歳でスーパーライセンスを取得したことがきっかけだった。

 世論の批判をかわすため、FIAは下位カテゴリーでの実績をポイント制にして数値化するとともに、取得の条件に「18歳以上で、かつ有効な自動車運転免許所持」を義務付けた。

 これによって、スーパーライセンスを所持できるドライバーは大幅に制限されることになった。そのためF1各チームは、リザーブドライバーを準備しておくことが難しくなってしまったのだ。

 もうひとつ、今回のディ・レスタの件で浮き彫りとなったことがある。たとえ元F1ドライバーといえども、ほとんどテストする機会がないと、いざ代役として出走してもとても戦える状態にはならないのだ。

グランプリ期間中のサードカー復活を見直してほしい。

 リザーブドライバーがレースに出場する機会は、契約中に1回あるかないか、という程度。つまりほとんどのリザーブドライバーは、基本的にレースに出場しないのをわかっていて、サーキットで待機していることとなる。それが、多くのチームがリザーブドライバーと契約していなかったり、レースに毎回は帯同させていない遠因となっている。

 そこで見直してほしいのが、グランプリ期間中のサードカー(3台目のマシン)の復活だ。現在テストが制限されているのは、コストの問題からである。もし、グランプリ期間中にサードカーを走らせることができれば、サーキット使用料はなくなり、移動費も追加の数人のメンバーだけですむ。あとはスーパーライセンス取得の条件に、「サードカーで一定のペースと距離を走り込むこと」という一文を復活させればいい。

 こうすれば、現在F2のタイトル争いから脱落して、ポイント上はスーパーライセンス取得が難しくても、才能があると言われる若手をF1で試すことができるだろう。そしてチームがその才能を認めれば、F1ドライバーとしての道を開くこともできる。

F2で戦う松下信治にも厳しい条件がつくことに。

 例えば、現在F2を戦っている松下信治は、現在のシステムでは今年ランキング2位以上を獲得しないとスーパーライセンスを取得できないが、現時点でランキング6位と厳しい状況が続いている。だが、ハンガリーGP直後に行われたF1の合同テストではザウバーのマシンを難なく乗りこなしていた。

 それで即、松下にF1ドライバーになる資格があると断言はできないが、厳しすぎるスーパーライセンス取得条件によって、はじめからその「芽」を摘む必要はない。

 現行のスーパーライセンス取得条件がもし正しかったら、F1ドライバー・フェルスタッペンは誕生していなかったのだから。

小林可夢偉のような道を開くために、何が必要?

 2009年のブラジルGPで、前戦日本GPで負傷したティモ・グロックの代役としてF1デビューした小林可夢偉。彼はその年のGP2(現在のF2の前身)ではランキング16位に終わっていたが、テストドライバーとしての仕事も評価対象にしていた当時のFIAの規約によって、スーパーライセンスを取得していたため、運を開くことができた。

 テストが規制されている現在のF1でこういったデビューを可能にするには、金曜日にサードカーを走らせるしか方法はないだろう。これには、もうひとつのメリットがある。

 現在パワーユニットで後れを取っているホンダの開発への後押しだ。サードカーに搭載するパワーユニットは年間の基数制限と関係なく使用できるようにすれば、開発をスピードアップさせるチャンスが生まれる。

 ハンガリーGP直前に、いったん発表されたザウバーとの提携を解消したホンダ。セカンドチームを探すことも大切だが、レギュレーションの見直しをFIAに働きかけるのも、この世界では勝負のひとつであることを忘れてはならない。

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