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小平奈緒が実践する「ノートを書く」習慣 専門家も認めるその効能

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2018/03/22 11:30 AERA dot.

 日本のスピードスケートをけん引する存在となった、小平奈緒。彼女の輝かしい実績の裏には、「ノートを書く」という習慣があった。専門家も認めるその効能とは。

「怒った猫のような背中を意識し、肩を上げる」

 このフレーズは恐らく、平昌五輪スピードスケート女子500メートルで金メダルを獲得した小平奈緒(31)のノートにも記されている。

 長野五輪男子500メートル金メダルの清水宏保(44)も指導した、コーチの結城匡啓(まさひろ=52)の表現だ。

 信州大学スケート部のコーチを務めていた時代から、結城は年に1度、選手を集めて「技術討論会」を開いてきた。部員全員が自らのスケート技術の変化を分析し、映像やデータを駆使して仲間に説明する。「精神論ではなく言葉で技術を理解し、指導できる人材を育成する」ことを目的に、始めたものだ。

 指導者から一方的に講義を受けるのではなく自らの言葉で説明することは、受け身にならず主体的に考える力の発露であり、スケート技術を言語化するトレーニングにもなった。

 大学2年の時から12回にわたりこの討論会を経験してきた小平は、日々意識したことなどを「技術カルテ」と呼ぶノートに書いた。その積み重ねも、言葉の力を高めてくれたに違いない。例えば、昨年4月に平昌五輪への意欲を尋ねられて口にしたのは、インド独立の父、マハトマ・ガンジーの言葉だ。

「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ」

 日常生活のすべてを学びととらえて、貪欲にトレーニングする、という決意の表明だった。

 オランダ留学では「百聞は一見にしかず」であることを学んだ、とも話す。

 自らを俯瞰(ふかん)する能力が高く、言葉選びのセンスもいい。

 こうした言語能力の高さと競技者としての「強さ」は無関係ではないと指摘する人がいた。諏訪東京理科大学共通教育センター教授で脳科学者の篠原菊紀さん(57)だ。こう話す。

「ノートを書くという行為には、大きな効能が二つある」

 アスリートのノートでは、練習で良かった点、悪かった点を挙げ、その対策を練るのが一般的。スケートならその日の滑りをイメージして、刃の角度は、重心はどうだったか、と振り返る。篠原さんによれば、

小平奈緒が実践する「ノートを書く」習慣(※写真はイメージ) © dot. 小平奈緒が実践する「ノートを書く」習慣(※写真はイメージ)

「このとき、体の動きの指令を出す『前運動野』や『運動野』などは、競技中以上に活発になることがわかっています」

 書いているだけでスキルアップのトレーニングになるということだ。これが一つ目の効能。

「内容が具体的であればあるほどいい。スキルの組み立てが頭の中に構築されるので、例えば他人の滑りを見ただけで練習の中身や背景までわかるようになります」(篠原さん)

 二つ目は、考えるだけで終わるより、頭に残りやすいこと。多くの場合、選手たちがノートを書くのは就寝前。人の記憶は眠っている間に定着することが、多くの研究で証明されている。ノートに書く行為は、記憶の整理と定着に「効く」のだ。

(文中一部敬称略)

(ライター・島沢優子)

※AERA 2018年3月26日号より抜粋

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