古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

羽生結弦の不在を痛感したNHK杯。日本勢が17年ぶりにメダルを逃す。

Number Web のロゴ Number Web 2017/11/14 田村明子
怪我というアクシデントは防ぎようがない。平昌五輪へ向けて、羽生自身との新たな戦いが始まる。 © photograph by Naoki Nishimura/AFLO SPORT 怪我というアクシデントは防ぎようがない。平昌五輪へ向けて、羽生自身との新たな戦いが始まる。

 11月12日に終了した、GPシリーズ第4戦目のNHK杯。何という、波乱に満ちた大会になったことか。

 パトリック・チャン、村上大介と表彰台候補だったトップ選手が次々と欠場を表明。そして当然連覇が期待されていた羽生結弦が前日の公式練習で負傷し、右足首と膝を傷めて棄権というショッキングな展開になった。

 SP前日の11月9日、羽生は公式練習中に挑んだ4ルッツの着氷で、右足を変な角度でつき、バランスを崩して開脚に近い姿勢で転倒した。数秒間立ち上がらず、その後リンクからいったん上がって、数分後に戻ってくると曲かけは上半身のみで演技をし、すぐに氷を上がった。

 翌日、日本スケート連盟の小林強化部長は、本人はSPに出るつもりで療養中と記者たちに語ったが、その後棄権の発表があった。診断名は、右足関節外側靭帯損傷。聞くところによると前日から微熱があり、かなり体調が悪い中をおして出てきた公式練習だったという。

着氷する右足は、これまでも何度も傷めてきていた。

 3年前には中国杯で直前に他の選手との衝突事故にあいながらも、出場を決行した羽生のこと。たとえ体調不良でも、自国のファンたちが大勢集まり、まして自国開催のGPファイナル進出がかかっているこの大会で、本人は絶対に良い演技を見せて優勝したかったのに違いない。

 着氷する右足は、これまでも何度も傷めてきていた。

 オータムクラシックでは右膝の違和感で、4ループを回避している。だが4サルコウに難易度を落としたSPで、歴代最高スコアを更新。それでも自分にできる最大限に挑み続けないと、納得できないのが羽生結弦という選手である。

全日本選手権には間に合う見込み、との発表が。

 その後日本スケート連盟は、羽生が10日間は絶対安静が必要で、全治およそ4~5週間と診断されたことを発表。

 12月21日から開催される全日本選手権には間に合う見込みで、本人も出場を希望していることを明かした。

 羽生本人は連盟を通し、

「皆様にご心配をおかけし、申し訳ございません。何とか全日本までに間に合うよう、治療・リハビリに努力いたします。全日本ではいい演技が出来るよう頑張ります」とコメントした。

 だが、その際の最大のチャレンジは、本人が納得できる内容の演技になるかどうか、ではないだろうか。

 ジェイソン・ブラウン、ネイサン・チェンなど、ライバルたちからも続々と早い復帰を願うメッセージがよせられた。今おそらく日本中、いや世界中のファンたちが一日も早い回復を願って祈っているに違いない。

30歳のベテラン、ボロノフ12年目の初優勝。

 羽生もチェンも不在の男子で、それではジェイソン・ブラウンが初タイトルを手にするかと思った筆者の予想はみごとにはずれた。

 GP大会初優勝をきめたのは、ロシアのベテラン、セルゲイ・ボロノフだった。スケートファン以外にとっては馴染みのない名前かもしれないが、彼は決して無名の新人ではない。

 2006年世界ジュニアで2位になり、翌シーズンシニアに上がってきたときは将来を期待される新人だった。だが怪我などもあり、長い間伸び悩んできた苦労人である。

 バンクーバーもソチも五輪出場を逃し、それでも欧州選手権では2度表彰台に上がり、2014年NHK杯では2位になって進出したGPファイナルでは3位に入賞した。

 4回転はルッツやフリップなどの新兵器は持っていないものの、4回転トウループを若い頃から安定して跳んできた。30歳になった現在も、実直に安定した演技を見せ続けてきたのである。そして今回、シニアGP大会デビュー12年目にして、初のタイトルを手にした。

「出せるものを全て出しきることが出来た。高揚感で満たされています」と会見で嬉しそうに語った。

今年の男子では、ベテラン勢が表彰台を制した。

 SP4位から上がって総合2位になったアメリカのアダム・リッポンは、フリーが28歳の誕生日だった。

 3位に入ったイスラエルのアレクセイ・ビチェンコは29歳。いずれも男子シングル選手としては、ベテランばかりである。

「もっとも年上の選手3人が表彰台に上がったのは、すごくクールだと思う!」とリッポンは会見で、記者たちを笑わせた。

 ジェイソン・ブラウンはジャンプミスがあって総合4位。おそらく本人が願っていたGPファイナル進出は厳しいだろう。

女子ではメドベデワが優勝し、ファイナル進出決定。

 女子は、予想通りエフゲニア・メドベデワが優勝。

 フリーでは珍しくジャンプミスも出たものの、逆転を許さずに総合224.39でトップを保った。カロリナ・コストナーはフリーでは3位だったが、総合212.24で2位になった。

 総合210.19で3位に入ったのは、ロシアの新人、ポリーナ・ツルスカヤだった。

 2016年世界ジュニアで優勝候補でありながら、直前に怪我をして欠場した選手である。質の高いジャンプと表現力を兼ね備えた、これからが楽しみな若手の1人だ。

 メドベデワとコストナーはともに、記者会見では日本の観客の質の高さを絶賛。

 ファイナル進出をきめたメドベデワは「GPファイナルで戻ってくるのを楽しみにしている」と語った。

宮原知子の復帰戦は5位に終わったが……。

 今年2月に股関節疲労骨折と診断されて世界選手権も欠場した宮原知子にとって、この試合は復帰戦となった。

 治療は思ったよりも長引いて、濱田美栄コーチによると、ジャンプの練習を再開してからまだ1カ月たっていないという。そんな中でも転倒などの大きなミスはなく、総合191.80で5位。怪我さえ完治しているのなら、これから急ピッチで調子を上げていくことは可能だろう。

 本郷理華が総合7位、シニアGPデビューだった白岩優奈が8位だった。

17年ぶりにメダルを逃した日本フィギュア勢。

 2001年に本田武史が優勝、恩田美栄が2位になって以来、このNHK杯ではずっと日本の選手が表彰台に上がり続けてきていた。

 だが本大会は、17年ぶりに男女ともに表彰台を逃すという残念な大会になってしまった。

 日本の関係者もファンも、みんなが「羽生がいてくれるから大丈夫」と思っていたはずである。

 現在のトップ男子に求められるレベルの過酷さと、羽生結弦というスターの存在の大きさを、改めて実感させる大会となった。

Number Webの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon