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辻直人、Bリーグファイナルを今語る。「引退しなきゃいけないってこと?」

Number Web のロゴ Number Web 4日前 辻直人
決勝戦は最後の最後まで勝者がわからない劇的な試合だった。勝ったのは栃木だが、川崎が相手だったからこそ実現したのだ。 © photograph by Kiichi Matsumoto 決勝戦は最後の最後まで勝者がわからない劇的な試合だった。勝ったのは栃木だが、川崎が相手だったからこそ実現したのだ。

 5月27日、Bリーグ初代王者を決めるBリーグチャンピオンシップファイナルが行われた。相手はレギュラーシーズン東地区1位の栃木ブレックス。栃木はNBL時代の'15-'16シーズン、プレーオフのセミファイナルで戦った相手でもある。その時は僕たち川崎ブレイブサンダースが勝利し、ファイナルに進出した。

 あれから1年。大きな舞台で栃木と再び対戦することとなった。レギュラーシーズンでの対戦成績は1勝1敗の五分だったが、Bリーグ初代王者を決める大舞台ということもあって、お互いに「負けたくない。負けられない」というプライドをかけた戦いとなった。この一戦にかける僕ら選手たち、そしてスタッフの思いや意気込みには、並々ならぬものがあった。

 そして、いよいよ試合開始。第1クォーターは気持ちの面でもプレー面でも、いい感じで入ることができていたと思う。その勢いのまま「ここからさらに上げていこう」「流れを掴んでやろう」と考えていた。しかし、第2クォーターに入ると、僕たちは思うように点を伸ばすことができなかった。

 試合前から栃木のディフェンスが非常に厳しくタイトだというのは理解していたことだし、その上でも自分たちのプレーを出さなければと考えていたのだが……。終わってみれば、79-85というスコアで敗戦。初代王者という称号を手に入れることはできなかった。

試合後にチームを包んだ失望感。

 試合後は大きな失望感に苛まれていた。

 '16-'17シーズン、僕は怪我の影響やリハビリで、シーズンをフルに戦うことができず、チームに迷惑をかけてしまった。その間、チームメイトはそれぞれスキルアップしていて、結果、チーム力の底上げをすることができていたと思う。

 '15-'16シーズンまでは“自分がやらなければ”と前に出ていた場面が多かったが、怪我をしたからというだけではなく、'16-'17シーズンはある程度みんなに任せていた部分があったと思う。それが良い方向に作用することもあれば、逆に悪い方向に作用することもあった。

1年目の“やりきった”と、今回の情けなさ。

 シーズンを通しての自分の評価という面では、思い切ったプレーをあまり出せていなかったかもしれない。怪我の影響もあり、なかなかコンディションが戻らなかったのは事実だ。そんな状態でファイナルという舞台に挑んでしまったことが悔やまれる。また、チームがレベルアップしている中で、自分だけが少し“傍観者”になってしまっていた部分もあったと反省している。

 Bリーグ初年度のファイナルを経験して思い出すのは青山学院大学を卒業し、チームに加入し戦った'12-'13シーズンだ。そのシーズン、川崎(当時東芝ブレイブサンダース)はレギュラーシーズンで3位となりプレーオフに進出した。ファイナルではアイシンシーホース(現シーホース三河)に目の前で優勝を決められ、タイトルを逃した苦い経験がある。まさに今回と同じようなシチュエーションだ。

 ただ、唯一違ったのはあの時はガムシャラにプレーしていたこと。加入1年目で、まだ新人だったということもあるだろうけど、自分でも「悔いがない」と感じるくらい全力を出し、試合後は“やりきった”と完全燃焼した記憶がある。でも、今回は残念ながら100%力を出し切れていなかった。

「もっとやれたんちゃうかな」

「もっと攻めたらよかった」

 ファイナルの試合直後に心を占めたのは、悔しさよりも情けない思いばかりだった。

引退さえ、頭をよぎった。

 普通、こういった場面では悔しさを感じるものだ。過去、試合に負けた後はほぼ悔しさしか感じていない。でも、不思議とこの時だけは“悔しい”という思いが込み上げてこなかった。

「そういう気持ちを感じないということは、引退しなきゃいけないってこと?」

 そんな考えさえも頭をよぎったくらいだ。悔しさがこみあげてきたのは、敗戦から2日経ってようやく、という感じだった。

注目度は上がったが、パフォーマンスが付いてこず。

 ここであらためて、Bリーグ1年目の挑戦を振り返ってみようと思う。

 '16-'17シーズンは、高校卒業後、初めて関東で一人暮らしをした大学1年生の時と少し似ている。環境の変化、規模は異なるけれど注目される中でのプレーだったし、そして納得のいくパフォーマンスができなかった。

 '16-'17シーズンはチームや周りの選手、スタッフが大幅に変わったわけではないけれど、僕自身に対する注目度もそれまでとは比べ物にならないくらい高くなった。

 納得のいくパフォーマンスができないもどかしさから焦りを感じ、それを繰り返す悪循環。終盤に来て、徐々にこれまでとは異なる環境にも少しずつ順応できるようになったけれど、環境の変化には終始悩まされるシーズンでもあった。

 ただ、その中で解決方法も見出しつつあり、「こうすれば怪我をしないだろう」という手応えも掴むことができた。

川崎という場所に根付いてきた、という感覚。

 シーズン中に課題に挙げていた試合中の状況によって変わるタイムマネジメントも、来季以降も課題の1つではあるけれど、徐々に改善しているのではないかなと思う。

 来季はコートの上で毎試合ベストパフォーマンスを見せたい。シューターとして、'16-'17シーズンに残した数字にまったく満足していないし、そこはさらに追求し、結果を出していかなければと危機感も強い。

 また、これからはバスケットボールクリニックの開催など、個人、そしてチームとして、地域のバスケットボールの発展にもっと貢献していかなければならないという思いも強い。それはBリーグでプレーする僕らの役割の1つだろう。

 Bリーグ開幕を機に、川崎市民やファンのみなさんが優しく声をかけてくれることがとても多くなり、“応援してくれているんだな”ということが伝わってきた。だからこそ、会場にもっと足を運んでもらえるよう、プレー面で魅せることはもちろん、ビラ配りなどの集客活動も積極的に頑張っていきたい。

来シーズン、川崎は超激戦区の東地区に参入。

 さて、もうみなさんご存知だと思うけれど、'17-'18シーズンから川崎ブレイブサンダースは中地区から東地区に移る。

 レバンガ北海道、栃木ブレックス、千葉ジェッツ、アルバルク東京、サンロッカーズ渋谷と激戦必至の地区だ。毎試合、タフで厳しい戦いが予想されるし、チャンピオンシップに進出することも本当に簡単なことではない。

 でも、そういった厳しい環境でプレーすることは、常に高い意識でのプレーが必要とされるので、個人としてもチームとしても、さらにパワーアップするんじゃないかなと僕はプラスに捉えている。そうやってお互いが切磋琢磨し、日本バスケットボール界がさらに発展させていければと心から願っている。

(構成:石井宏美)

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