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広陵・中村奨成、U-18の“大不振”はドラフトに影響するか?

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2017/09/14 西尾典文

 夏の甲子園での活躍で高校ナンバーワン捕手としての評価を不動のものにした中村奨成(広陵)。入学直後から名門・広陵の正捕手となり、2年時からは中軸も任せられていたが、地方大会の時点ではどちらかというと守備の印象が強い選手だった。広島大会では初戦で右手首に死球を受けた影響もあり、6試合での打撃成績は17打数3安打と2割以下の打率に終わっている。準決勝、決勝でホームランを放つ長打力は見せたものの、確実性は乏しかった。さらに言うとチーム自体も秋、春と連続で県大会優勝を果たしている広島新庄の方が前評判が高く、甲子園出場も難しいと見る声が多かった。広島大会の初戦に11球団30人ものスカウトが集結したのも、甲子園ではプレーが見られない可能性が高いと考えていた関係者が多かったことを物語っている。もし広陵が甲子園出場を逃していた場合、中村の評価も高くても外れ1位か2位程度の評価だったと予想される。

 繰り返しになるが、中村の運命が大きく変わったのはやはり甲子園での活躍である。6本塁打、17打点、43塁打は大会新記録、19安打、6二塁打も大会タイ記録と広島大会での不振が嘘のように打ちまくり、スカウト陣からも「間違いなく1位で競合する」と言わしめるまでに評価は上昇した。チームは惜しくも準優勝に終わったものの、大会の主役であったことは間違いない。

 しかしそんな中村もU-18ベースボールワールドカップでは大きな挫折を味わうことになる。大会前は清宮幸太郎(早稲田実)、安田尚憲(履正社)とともに中軸を任せられる予定だったが、甲子園での打棒はすっかり鳴りを潜め8試合での成績は25打数3安打の打率.120で、ホームランはおろか打点、長打も0に終わったのだ。その原因の一つはやはり甲子園大会での疲労である。捕手として6試合フル出場した疲れは確実に残っていたように見えた。具体的には下半身の粘りが足りなかったことが大きい。甲子園ではステップしても体がしっかりと残っていたが、U-18では体勢が崩れて早くバットが出てしまうようなスイングが目立っていた。もうひとつは、やはり木製バットと動くボールへの対応である。金属バットでは140キロ前後のストレートでもリストの強さで押し込んで長打にすることができていたが、木製バットでは速いボールに差し込まれてしまうことが多かった。安定して結果を残すためには体力面の強化と小さい動きで強く振り切れるスイングを身につけることが必要になるだろう。

 そしてバッティング以上に残念だったのが、守備の面でも持ち味を発揮できなかったことである。アメリカ戦では見事なスローイングを見せた一方で送球ミスも重ね、不用意な失点に繋がってしまった。それ以降はコンディションの問題もあって古賀悠斗(福岡大大濠)がマスクをかぶることが増え、中村の出場はほとんどが指名打者と代打であった。要として期待されていただけに、攻守にわたる不振は日本チームにとっても大きな痛手だったことは間違いない。

U-18ベースボールワールドカップで不振だった広陵・中村奨成(c)朝日新聞社 © dot. U-18ベースボールワールドカップで不振だった広陵・中村奨成(c)朝日新聞社

 気になるのはU-18のプレーぶりがプロ側の評価にどう影響するかということであるが、結論から先に言うと大きく評価が下がることはないと考えられる。まず大きいのはキャッチャーの評価基準として最も大きいウエートを占めるスローイングの能力がずばぬけて高いことである。甲子園でもイニングの間に投げるセカンド送球では中村より速いタイムを計測する選手は数人いたが、ボールの質という意味では完全に頭一つ抜けている印象を受けた。これは高校生に限らず、アマチュア全体でもトップと言えるレベルである。ただ肩が強いだけでなくフットワークも素晴らしく、中京大中京戦と聖光学院戦で見せたバント処理でのセカンド封殺は球場全体をどよめかせるほどの迫力だった。そしてもうひとつは甲子園という大舞台で自分の持っている力をフルに発揮することができたという事実が何よりのプラス要因である。抽象的な表現になるが、日に日に注目が集まる中でも結果を残し続けたという“スター性”はプロで活躍するために必要不可欠なものであり、そういう要素を評価するプロ関係者も多い。

 さらに中村の後押しとなるのが、有望な若手捕手が少ないプロ側の事情である。どの球団も将来の正捕手候補には苦労しており、ましてやそれがスター性のある人材となると12球団見回してもほとんど見当たらないのが現状である。捕手はプロでも最も時間のかかるポジションであり、中村も一軍に定着するまでにはクリアするべき課題は少なくないが、モノになった時のスケールの大きさは何物にも代え難い魅力だ。高校卒の捕手としては城島健司(元ダイエーなど)以来の大物であり、甲子園大会終了時点で早くもプロ志望を表明していることも頼もしい限りである。もし清宮が大学進学となった場合には、ドラフト会議の目玉となることは間違いないだろう。(文・西尾典文)

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