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松坂世代が消える可能性も…今季が正念場の「崖っぷち選手」

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2018/01/13 16:00 西尾典文

 1月に入り、球界では新入団選手の入寮、自主トレのニュースが連日のように報道される季節となった。即戦力が期待できる選手や清宮幸太郎(日本ハム)のような大物ルーキーはキャンプインしてからも高い注目を集めることは間違いない。しかし、そんな輝かしい未来を期待される選手がいる一方で、今シーズン成績を残せなければ引退の可能性が高い選手も少なくない。そこで今回はそんな崖っぷちの選手について触れたい。

 かつてプロ野球界の一大勢力だった「松坂世代(1980年度生まれ)」の選手たち。今月、中日がテストを行うことが発表された松坂大輔本人以外にも岐路に立たされている選手が多い。投手で真っ先に名前が挙がるのが杉内俊哉(巨人)だ。2015年に野球選手としては前例のない股関節の手術を受けて長期離脱し、昨年は春先に二軍戦で復帰したものの今度は左肩を痛め、そのまま復帰できずにシーズンを終えた。最多勝と最優秀防御率を各1回、最多奪三振を3回受賞し、通算142勝77敗という成績は見事だが、故障の程度が大きいだけに復活への道のりは簡単なものではないだろう。

元ソフトバンクの松坂大輔 (c)朝日新聞社 © dot. 元ソフトバンクの松坂大輔 (c)朝日新聞社

 故障との戦いという意味では館山昌平(ヤクルト)を忘れてはいけない。2008年から5年連続で二桁勝利をマークし、右のエースとして活躍していたが、それ以降は故障の影響で成績が低下。昨年は2試合に先発しただけで0勝に終わった。これまでの手術歴は9度を数え、トミー・ジョン手術だけでも3回経験している。ヤクルトは功労者に優しい球団ではあるが、今年が3年契約の3年目ということもあり、回復の兆しが見えなければそのまま引退ということも十分に考えられる。

 連覇を果たした広島では、永川勝浩が昨シーズンは一軍での登板なしに終わった。球団記録となる通算165セーブをマークしているが、2010年以降は抑えの座を完全に明け渡している。落差の大きいフォークで三振を奪う投球から、ボールを小さく動かして打たせて取るスタイルへの変化を図ってはいるが、もともと緻密さがある投手ではなく、かつての球威が戻らないと厳しい印象だ。

 他にも、投手ではトライアウトから這い上がったものの、故障で今季は育成契約となった久保裕也(楽天)、野手では代打での成績が下降しているG.後藤武敏(DeNA)と矢野謙次(日本ハム)も崖っぷちの松坂世代と言えるだろう。

 松坂世代以外にも、かつてのタイトルホルダーが苦しんでいる。2010年に日本記録となるシーズン47ホールドをマークし、翌2011年には中継ぎ投手ながらMVPにも輝いた浅尾拓也(中日)もここ数年は故障続きだ。2016年にはプロ入り初の一軍登板0に終わり、昨年も終盤に復帰したものの、わずか4試合の登板で打ち込まれる場面が目立った。端正なマスクと華々しい活躍から地元ではいまだに絶大な人気を誇るが、今年も過去2年と同様の状態であれば契約更新は難しいだろう。

 2011年、2012年と2年連続最多勝に輝いた内海哲也(巨人)も過去3年間で13勝と低迷が続いている。大きな故障があるわけではないが、球威の低下によってかつてのスタイルが通用しなくなっている印象を受ける。チームが急激に世代交代を進めていることもあり、生え抜きの元エースも戦力として見極められる立場であることは間違いない。

 2007年に最優秀防御率と最高勝率のタイトルを獲得した成瀬善久(ヤクルト)もFAで移籍した2015年から一気に成績を落とし、昨年は0勝に終わって、オフには1億円以上の年俸ダウンとなった。かつては130キロ台のストレートでも面白いように空振りを奪っていたが、フォームもボールも年々キレを失っている。内海と同様にかつてのスタイルでは厳しいのは明らかであり、復活のためにはモデルチェンジが必要だ。

 野手では2010年に首位打者と最多安打のタイトルを獲得し、盗塁王にも2度輝いている西岡剛(阪神)も危うい立場だ。2016年、左アキレス腱断裂の大けがを負い、昨年夏に何とか復帰したものの攻守とも精彩を欠く結果に終わった。内野も外野も若手が台頭しており、存在感は年々薄れてきているだけに、勝負強さなどでベテランらしさを見せないと苦しいだろう。

 年齢などを考えると、どの選手も厳しい状況だが、過去に崖っぷちから這い上がった選手が存在していることもまた事実である。昨年は岩瀬仁紀(中日)が4年ぶりに50試合に登板し、見事にカムバック賞を受賞した。防御率4.79は褒められた数字ではないが、6月は14試合に登板して無失点で12年ぶりの月間MVPも受賞している。全盛期のスピードとキレは失われたが、丁寧に打者のタイミングを外す投球はベテランの味を感じさせるものである。

 また、チームメートの山井大介(中日)も最後のチャンスと見られていたシーズン終盤の先発で好投して2勝を挙げ、今季の契約をつかみとった。一度栄光を極めた選手が故障や不調から復活する姿は昔から多くのファンを魅了してきたことは間違いない。今年も昨年の岩瀬のように崖っぷちで踏ん張る選手が出てくることに期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール

西尾典文

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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