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“無双状態”から残念なことに…「開幕直後限定」で凄かった選手&チーム

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2020/06/30 16:00
2016年の開幕直後に“無双状態”となった阪神の江越大賀 (c)朝日新聞社 © AERA dot. 提供 2016年の開幕直後に“無双状態”となった阪神の江越大賀 (c)朝日新聞社

 開幕直後だけ凄い成績を残した選手といえば、1979年の田代富雄(大洋)が思い出される。

 4月7日の開幕戦、前年の日本一・ヤクルトを相手にリーグ初、史上2人目の開幕戦3本塁打を放ち、3打数3安打4打点2四球の打率&出塁率10割スタート。開幕3戦目の広島戦でも4号を放つなど、3試合通算10打数6安打7打点の固め打ちで、シーズン40発以上も楽勝と思われた。

 ところが、同13日の巨人戦で4打数無安打2三振に終わり、開幕からの連続試合安打も「4」でストップすると、4月終了時点で打率2割4分、5本塁打と急降下。さらにシーズンの最後には、日本最多の5試合連続併殺打も記録し、打率2割3分5厘、19本塁打とまさかの結果に……。

 77年の開幕直後には5試合連続本塁打も記録しており、「ホームランか三振かの大味な主砲だったけど、愛すべき選手だった」と懐かしむファンも多いはずだ。

 同じく79年の開幕直後、彗星のようにデビューしたのが、近鉄のルーキー右腕・香川正人だ。

 4月10日の開幕3戦目、ロッテ戦で7回から2番手でプロ初登板すると、2回2/3を無失点に抑え、いきなりプロ初勝利。6月前半まで5勝0敗2セーブと負け知らずの大活躍も、間もなく肘を痛めて登録抹消。その後、一度も1軍のマウンドに上がることなく、83年限りで引退した。ルーキーイヤーの開幕直後限定という短い期間ながら、チームの前期優勝に貢献し、勝率10割の生涯記録も残した“伝説の投手”である。

 一方、開幕直後限定の“伝説の打者”と呼べそうなのが、16年の江越大賀(阪神)だ。

 4月3日のDeNA戦でシーズン1号を放つと、同9日の広島戦まで出場3試合にまたがる3打席連続弾と4試合連続本塁打の快挙を達成。だが、4月下旬から21打席連続無安打と当たりが止まり、その後は1軍と2軍を往復しながらシーズンを終えた。以来、恵まれた身体能力をなかなか発揮できずにいるが、6年目の今季は“新たなる伝説”を期待したい。

 開幕から6試合連続完投勝利の無双状態から、一転して長いトンネルに入ってしまったのが、93年の小宮山悟(ロッテ)だ。

 4月10日のオリックス戦を完投勝利で飾ると、その後も投げるたびに完投、また完投で連勝街道を驀進。5月13日の近鉄戦も9回2失点で勝ち投手となり、史上初の開幕から6連続完投勝利を達成した。

 ところが、ここから悪夢の6連敗を喫し、チームも最下位転落。悩んだ小宮山は、連勝中のビデオを何度も見たり、走り込みを多くするなど、トンネル脱出に向けて努力を続けた。

 そして、7月11日の西武戦で5安打1失点の完投勝利。チームも4日ぶりに最下位を脱出した。59日ぶり勝利の小宮山は「もう一度、勝ちつづけるプレッシャーを感じたいね」と復活宣言も、この年自己最多の12勝を挙げながら、14敗と負け越すなど、最後までチグハグなシーズンだった。

 ちなみに当時のロッテも、92年、98年と4月は首位だったのに、いずれも終わってみれば最下位と、“開幕直後だけ強いチーム”のイメージがあった。

 今度はチーム編。開幕直後に驚異のロケットスタートに成功しながら、5月以降、急失速したチームも少なくない。

 93年の広島は、4月15日に横浜を11対0と下し、球団史上初の開幕5連勝を達成すると、同17日の巨人戦も、0対2の5回に連打とブラウンの好走塁で一気に逆転。連勝記録を「6」に伸ばした。

 開幕7連勝がかかった翌18日の巨人戦は、延長戦の末惜敗したが、9回に3点差を一挙に追いつき、「あの粘りというのはねえ」と山本浩二監督を感服させた。その後も白星先行で、4月を11勝4敗と大きく勝ち越し、2年ぶりの優勝も期待されたが、5月は一転して二度にわたって5連敗を記録するなど8勝15敗と失速。さらに8月末から9月にかけて11連敗を喫し、結局、優勝したヤクルトに27ゲーム差の最下位、山本監督も引責辞任と、まさに“春の珍事”を地で行くような結果となった。

「プロ野球史上最大の転落劇」に泣いたのが、06年の巨人だ、3年ぶりに原辰徳監督が復帰し、ロッテからイ・スンヨプ、オリックスからパウエルと投打の主力を補強。開幕の横浜3連戦を2勝1敗と勝ち越して首位に立つと、4月8日から1分を挟む8連勝を記録するなど、同18日の時点で13勝2敗と、2位・中日に4ゲーム差をつけた。4月は球団最多タイの17勝6敗2分と大きく勝ち越し、「今季は巨人でほぼ決まり」の声も聞こえてきた。

 だが、5月の交流戦を境に急失速。6月には6勝19敗と月間最多の球団新記録をつくり、8月には最下位まで転落した。最大貯金「14」からの転落劇は、プロ野球史上初の屈辱だった。

 最終的に4位まで戻したものの、2年連続勝率4割台、4年続けてV逸と球団のワースト記録を相次いで塗り替えてしまった。

 02年、星野仙一監督就任1年目の阪神も、開幕直後は、前年まで4年連続最下位のチームとは思えないような確変ぶりだった。

 3月30日の開幕戦で、井川慶が巨人相手に1失点完投勝利を収めると、勢いに乗って、球団タイ記録の開幕7連勝。4月10日の広島戦に勝ち、開幕10試合で9勝と、神がかり的な強さを誇った。

 だが、サッカーW杯開催に伴う変則日程で、ローテーションに余裕ができたはずの6月に泥沼の8連敗を含む4勝13敗と急失速。その後も濱中治、矢野輝弘ら主力に故障者が続出し、4位でシーズンを終えた。

 とはいえ、原巨人も星野阪神も、翌年は揃ってリーグ優勝。「凄かったのは開幕直後だけ」の苦い経験は、けっして無駄ではなかった。(文・久保田龍雄)

●プロフィール

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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