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育成選手を「大量指名」でチームが強くなるんじゃないか説を検証

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2019/12/03 16:00
ソフトバンク・千賀滉大 (c)朝日新聞社 © AERA dot. 提供 ソフトバンク・千賀滉大 (c)朝日新聞社

 今年10月、西武が来シーズンから三軍を新設することが発表された。一軍で監督も務めた田辺徳雄が三軍統括に就任し、投手陣の育成のために広島で9年間三軍投手コーチを務めた青木勇人も招聘している。更に11月にはオリックスも2021年から三軍制を敷くと報道されている。

 この流れは育成を目的とした三軍を常設し、育成選手を数多く抱えているソフトバンクと巨人が今年の日本シリーズを戦ったように結果を出していることが大きく影響していると言えるだろう。育成ドラフトで多くの選手を指名し、三軍で育てるというやり方は本当に有効なのか。この2チームの結果を見ながら検証してみたいと思う。

 ソフトバンクが正式に三軍を発足させたのは2011年から。その前年の2010年から積極的に育成ドラフトに参加するようになり、今年までの10年間で57人の選手を指名している。同じ期間での支配下での指名は52人のため、いかに育成ドラフトで多くの選手を指名しているかということがよく分かるだろう。今年指名した選手は当然まだ結果が出ていないため、昨年までの9年間で指名した50人の中で支配下登録された選手を調べたところ、以下の11人という結果だった。

 千賀滉大、牧原大成、甲斐拓也、飯田優也、釜元豪、石川柊太、張本優大、曽根海成、堀内汰門、大竹耕太郎、周東佑京

 千賀は球界を代表するエースになり、甲斐も完全に正捕手と言える存在となっている。ほかに一軍の戦力となった選手では、牧原、石川、大竹、周東もカウントして良いだろう。そう考えると50人中6人が成功し、確率は12%と言える。この数字は果たして多いのか少ないのか。比較するために同じ期間に支配下で指名した47人のうち、一軍戦力となっている選手をカウントして見ると以下のような顔ぶれとなった。

 柳田悠岐、武田翔太、嘉弥真新也、東浜巨、高田知季、加治屋蓮、森唯斗、上林誠知、高橋純平、高橋礼、椎野新、甲斐野央

 47人中12人、成功確率は25.5%という結果となった。ドラフトも打撃と同様に3割当たれば成功と言われており、まだ結果が出ていない選手も多いことを考えると支配下の指名も十分成功していると言える。これに成功率は1割程度とはいえ、千賀、甲斐、周東の日本代表クラスが育成指名から輩出されており、さらに戦力に厚みを持たせる結果となっている。日本シリーズ三連覇も不思議ではない。

 一方の巨人はどうだろうか。育成選手からのスター輩出では2005年入団の山口鉄也、2006年入団の松本哲也とソフトバンクの先を行っていたが、正式に現在の三軍が発足したのは2016年からである。ただ、事実上の三軍にあたる「第2の二軍」を創設したのはソフトバンクが三軍を創設したのと同じ2011年。そのため同様に2010年から2018年までの9年間に指名した育成選手51人のうち支配下登録された選手をカウントしたところ、以下のような顔ぶれとなった。

 岸敬祐、土田瑞起、長谷川潤、篠原慎平、増田大輝、青山誠、田中貴也、松原聖弥、坂本工宜、加藤脩平、山下航汰、堀岡隼人

 支配下登録された人数だけを見ると、ソフトバンクを上回る12人という結果である。しかし一軍のレギュラークラスは皆無で、かろうじて増田が今年戦力となったくらいである。加藤、山下、堀岡は今後が楽しみではあるが、ソフトバンクとはだいぶ差があることは間違いない。この期間の支配下指名された54人の成功選手も調べてみたら以下となった。

 沢村拓一、高木京介、菅野智之、小林誠司、田口麗斗、岡本和真、桜井俊貴、重信慎之介、中川皓太、大城卓三

 54人中10人が成功とカウントでき、成功率は18.5%となった。こちらもソフトバンクと比べると少ない数字である。また顔ぶれを見ても、沢村、菅野、小林、岡本、桜井は1位指名の選手である。1位が期待通りに主力となっていることは喜ばしいことではあるが、下位指名からの主力は、高木、田口、中川くらいというのは寂しい結果である。この点でも育成力に課題があると言わざるを得ないだろう。

 しかしそんなソフトバンクにならって、二軍の新本拠地を2023年に完成させることを発表。また現在の二軍本拠地であるジャイアンツ球場の内野グラウンドも大規模改修されることとなった。新たに三軍を新設する西武、オリックスも二軍施設の改修に手をつけている。このようなハード面の充実は成功選手を輩出するために必要な要素という認識は、確実に広がっていると言えるだろう。

 その一方で70人という支配下登録の枠と、育成契約の選手は3年間で一度自由契約になるという縛りが次の悩みとなっている。ソフトバンクからは過去にも亀沢恭平がこの流れで中日の支配下選手となり、このオフも高校卒3年目の長谷川宙輝が自由契約となって、ヤクルトと支配下契約を結んだ。

 今後三軍制を敷く球団が多くなると、彼らのような事例も増えてくることが考えられるだろう。ただ裏を返せば、選手が活躍の場を求めての移籍が活発化し、現在導入の方向で話が進んでいる現役ドラフトにも繋がる話とも言える。そう考えると三軍新設の動きは、プロ野球界全体にとっては良い話と言えるのではないだろうか。

 今後、ソフトバンク以外の球団から千賀や甲斐、また亀沢や長谷川のような事例がどんどん出てくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール

西尾典文

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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