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韓国の満塁男 今、日本で第2の人生スタートの理由

西日本スポーツ のロゴ 西日本スポーツ 2019/09/11 10:47 西日本新聞社
© 西日本新聞社

元韓国代表内野手の李〓浩(イ・ボムホ)氏(37)のコーチ研修が、2010年にプレーしたソフトバンクで始まった。

韓国・起亜で今年7月に引退。研修はファームで行われ、期間は今月6日から秋季キャンプ終了までの予定だ。日本で第2の人生をスタートさせた「韓国の満塁男」が、今の思いを語った。(聞き手・構成=森 淳)

※〓は「木へん」に「凡」

09年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝の9回、ダルビッシュに同点打を浴びせた男と言えば分かりやすい。ソフトバンク時代は思うような成績を残せなかったが、西武涌井(現ロッテ)のノーヒットノーラン阻止を覚えているファンも多いだろう。イ・ボムホ。通算満塁本塁打17本の韓国プロ野球記録保持者は、今夏、プロ20年目のシーズン途中に現役を退いた。

「20年間フルタイムで試合に出てきました。だんだん、実力も落ちてきていました。ファンにそういう姿を見せたくなかった。ずっと左のハムストリングを痛めていましたが、それが理由ではなく、実力が落ちてきたからです」

韓国ハンファでプロ入りし、ソフトバンクをへて起亜でプレー。7月13日、古巣ハンファ戦を引退試合に選んだ。引退後のキャリアについて思いを巡らす中、韓国球団の監督を歴任した金星根(キム・ソングン)氏(76)に電話をかけた。同氏はソフトバンクで「コーチングアドバイザー」として、ファームの指導に関わっている。

「引退の日を決め、引退してから、何をしたらいいのか考える時間がありました。指導者になると決めたのではなく、最初に勉強することが大切だと思いました。日本にしても、米国にしても、野球の勉強がしたかった。金星根さんに電話をかけて、手伝ってもらえませんかと頼みました。ホークスからも、OKですよ、ぜひ来てくださいと返事をもらえました」

48試合に出場し、打率2割2分6厘、4本塁打、8打点。ソフトバンクで過ごした1シーズンの成績は、不本意なものだった。この年は、現役生活20年でどんな意味を持っているのか。

「韓国では感じられないことを、たくさん感じました。韓国では、活躍できなくても毎日試合に出られました。日本では、私は外国人。枠があって、投手を3人登録したら、野手は1人しか入れない。最初はそういうことも考えずに来たんです(苦笑)」

三塁手として、競争相手は当時プロ5年目だった松田宣だった。次の話に出てくる数字の出典は判然としないが、それぐらいのイメージを持っていたということなのだろう。

「最初にびっくりしたのは、守備のうまい、あんなサードもいるんだなということ。50試合でエラーが一つとか、天才みたいな選手だなと。ケガが多かったと聞いていましたが、ケガさえなければ、彼は日本一のサードになれると思っていました」

当時の回想を聞いていると、ポジションに関係なく、幅広く日本人選手と会話していた様子が浮かび上がってくる。

「和田さんや杉内(現巨人ファーム投手コーチ)さんたちと、話をできる時間もたくさんありました。2軍の投手もたくさん話をしてくれた。試合にはたくさん出られなかったけど、今まで野球をやってきた中で、いい経験だったと思います」

韓国と日本の野球の違いは感じていたのか。

「日本は何にしても、基本からきちんとやりますよね。僕はちゃんと基本ができているのかな…とずっと考えていました。当時の2軍の球場も、寮も、日本の方が立派だった。練習プログラムにしてもそうです」

今回のコーチ研修の話が具体化していく一方で、日韓関係は悪化していった。

「心配な部分も少しありました。韓国の人たちはどう思うのか。日本にいる人たちは普通に接してくれるだろうか、もしそうでなかったら、どうすればいいのか…。迷い、考えた部分はありました」

ただ、それも取り越し苦労だった。ファームでコーチ研修を始める前日、1軍にあいさつするためヤフオクドームをたずねると、かつての仲間たちが明るく迎えてくれた。

「みんなが、久しぶりだ、元気だったか…と。国は国、スポーツはスポーツ。松田(宣)選手なんて一番、『おー! ボムホさーん! 久しぶりー!!』と言ってきてくれた。2010年はそうでもなかったんですけどね(笑)」

ソフトバンクでのコーチ研修は、来日前には発表していなかった。母国でも、すぐに反応があった。

「韓国でも記事が出たんですが、応援してくれているファンの人たちもいます。『こうやって学んできました』とファンにも言えるようにしたい。自分が学んだことが、韓国で役に立つ。きっとファンも理解してくれると思います」

グラウンドでは通訳を伴って、いろいろな場所に顔を出している。

「私は内野手ですから、まず勉強したいのは内野守備、フォーメーションですね。状況に応じて、どう選手を動かすか、とか。松山(2軍内野守備走塁)コーチに聞いています。的山(2軍バッテリー)コーチにも捕手の動きとか、聞くことがたくさんある。打撃も左の新井(2軍打撃)コーチ、右の大道(同)コーチがそれぞれ、どう教えているのか。できれば何でも吸収して帰りたい。野球の全部、ホークスの全部を」

ソフトバンクは16年からファーム本拠地を移転し、福岡県筑後市に約50億円かけて施設を造った。2、3軍それぞれの球場に、屋内練習場、選手寮などを備える。12球団でも最大規模のファーム環境も、学習の対象だ。

「韓国の2軍の球場も結構、立派になってきていますが、例えば練習場はドーム一つという感じ。筑後には投手のパートもあるし、同時に野手もちゃんと練習できる。チーム全体としてできるように建てたと思うんですが、韓国はそういう部分でちょっと足りない。筑後には選手が自分一人でも練習できる場所(ボールが側溝から自動回収されるマシン打撃練習場など)もあります。小さいところから差があると思いますね」

夫人と9歳の娘、7歳の息子を韓国に残し、研修期間中は福岡市内のホテルで暮らす。

「ホテルがあるのが、ホークス時代に住んでいた街で、よく知っているんですよ。最初の数日間、一緒に来ていた妻は『懐かしいなあ』って涙を流していました。ここにはこれがあったなあ、あれがあったなあ…と。電車も、バスの乗り方も全部、分かっていますよ」

来日当初はレンタカーでファーム施設に通ったが、今後は公共交通機関を乗り継いで「通学」するという。背番号は、起亜で背負った「25」の頭にゼロがついた「025」。他のコーチと同様に打撃投手も務め、若い選手と一緒に汗を流している。

「ホークスの選手を見ていると、野球への情熱、気持ちというものを感じます。そういうものも見に、勉強しに来ました」

みやざきフェニックス・リーグ、秋季キャンプも通じて学び続け、来春は米国でもコーチ研修を受けることを視野に入れているという。

◆引退試合でソフトバンク時代の同僚からメッセージ

起亜での引退試合には、ソフトバンク時代のチームメート川崎(現・台湾プロ野球味全の内野手兼コーチ)から全文韓国語のビデオメッセージが寄せられていた。

同学年でもあり「ムネ」と呼ぶ間柄。韓国出身で元ソフトバンク投手の金無英氏も交え、無料通信アプリ「カカオトーク」で連絡を取り続けているという。「私が韓国語でメッセージを送ったら、無英が日本語に翻訳して、ムネが日本語で入れたら、無英が韓国語に」と笑いながら説明した。

◆韓国最多17満塁弾 チャンスに強かった理由は

通算満塁本塁打17本の韓国プロ野球記録を樹立。チャンスに強かった理由を聞かれると「う~ん」と考えてから「私は実績も良くもないし、そのチャンスで打てなきゃダメだという気持ちもあったんですよね。実績がないので『ここで俺はヒットでもホームランでも打たなきゃダメだ』という必死さがありました」と話した。

◆イ・ボムホ氏、来日して「一番食べたかったもの」

2010年のプレー経験もあって日本食には抵抗がなく、むしろ好物が多いようだ。中でも「一番食べたかったのは、もつ鍋」と即答。「妻も、もつ鍋が食べたかった。日本に着いて、一番最初に食べたのがもつ鍋です」と力を込めた一方で「でも食べ過ぎると太っちゃうからなあ」と、おなかをさすって自戒もしていた。

キーマンに聞く プライド捨てバット短く イ・ボムホの本音

【2010年02月06日の紙面から】

チーム7年ぶりの日本一奪回に向けて動きだした2年目の秋山ホークス。今年もロングインタビュー「Shキーマンに聞く」で活躍が期待される主力の本音に迫る。第1回は李〓浩(イ・ボムホ)内野手(28)。来日前にパ・リーグの一線級投手を徹底研究したことを打ち明け、速球に対しプライドを捨てバットを短く持つ考えを示した。当初掲げた130試合以上出場から「全試合出場」に上方修正した目標を達成する意気込みだ。 (構成=大窪正一)

バッティング練習に励むイ・ボムホ

-第1クールはフリー打撃で計164スイング中、柵越えは5本。迫力不足にも感じたが。

「現段階で柵越えは気にしていない。今はバランスを意識している。センター方向に回転のいい打球を飛ばすこと。それが調子の良さを示すバロメーターになる。その打撃ができればホームランなど長打は打てる」

-昨春の第2回WBCでは2次ラウンドで田中(楽天)から本塁打を放ち、決勝戦は1点差の9回2死一、二塁でダルビッシュ(日本ハム)から左前に同点適時打。そんな勝負強い打撃が期待されている。

「研究は済ませている。韓国にいる間に球団から送ってもらった日本の投手陣のDVDをすべてチェックした。球の切れはあるし速い。日本のいい投手はメジャーにいっても成功している。それだけレベルが高い。実際に数多く対戦して打って見ることで感じる部分を重視したい」

-気になる投手は。

「ダルビッシュや田中、岩隈(楽天)、涌井(西武)ですね。ただ各球団のナンバーワンだけでなく、2、3番手の投手もすべていい。韓国ならエースと2番手に差があるが日本はあまり変わらない印象だ」

-そんな日本の投手をどう攻略するか。

「速球に対してバットをこれまで以上に短く持つことも考えている。初めての投手ばかり。最初からホームランとか大きい当たりばかり狙わず、短く持って結果を出していけば長打も打てるようになる。もし日本の投手に対応できなければ、打撃コーチに相談して柔軟に考えていきたい。集中力を高めてやる」

-ホークス内で参考になる打者は。

「韓国にいたときから小久保さん、多村さんや川崎さんに注目していた。いいところをお手本にしたいと思っている」

-前所属の韓国プロ野球・ハンファ時代は615試合連続出場も記録した。日本でも出場へのこだわりがある。

「ずっと出続けることが好きなんです。韓国時代も連続出場は1000試合を超えたいと思っていた。来日時に130試合以上の出場を目標に掲げたが結果を残し、出してもらえるならフル出場したい」

-松田やオーティズと争う三塁争いに加え、一塁の守備練習も始めた。三塁へのこだわりは。

「マスコミが騒いでいるが、三塁以外は絶対ダメというわけではない。これまで守ったのは三塁ばかりだが、選手というのは球団からどこを守れ、と言われればそこにいくもの。三塁以外のポジションでも構わない」

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