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“長谷部ロス”は大きく悲観すべき問題ではない 懸念は指揮官の精神状態

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2017/03/20 dot.

 現地時間3月23日(以下現地時間)に行われるW杯アジア最終予選UAE戦を目前に控え、日本代表にショッキングなニュースが飛び込んできた。

 キャプテンの長谷部誠がヒザの手術を行うというのである。

 長谷部が所属するフランクフルト(ドイツ)のクラブ公式サイトによると、3月11日に行われたブンデスリーガでのバイエルン・ミュンヘン戦で負傷交代していた長谷部は、その後MRI検査を行い、ヒザの手術を実施することが決定したという。復帰時期は未定としているが、もし手術が行われれば、長期離脱は避けられまい。

 長谷部は当初の予定通り日本代表に合流したが、所属クラブがこうした判断を下している以上、UAE戦の出場は難しいだろう。つまり、日本代表は長谷部の穴を埋めなければならないということだ。

 この問題を考えるとき、「ボランチ長谷部」と「キャプテン長谷部」とを分けて考える必要があるだろう。

日本代表のキャプテンを務めるMF長谷部(写真:Getty Images) © dot. 日本代表のキャプテンを務めるMF長谷部(写真:Getty Images)

 まずは、ボランチ長谷部の穴だが、これについては大きな問題はないはずだ。すでに山口蛍(セレッソ大阪)が多くの舞台を経験し、ボランチの主力として成長しているうえ、同ポジションには今野泰幸(ガンバ大阪)、高萩洋次郎(FC東京)らも加えている。長く日本代表戦に出続けている長谷部に、連係面では劣るかもしれないが、アジアレベルの試合であれば、それほど心配する必要はない。

 問題は、キャプテン長谷部の穴である。

 2010年W杯直前にキャプテンとなって以来、長谷部は常に日本代表でリーダーシップを発揮してきた。それは、単にチームをまとめるというだけでない。試合中にはレフェリーとコミュニケーションを取って、不利な判定がないようにけん制しておくなど、常にチームの先頭に立って戦いに臨んできた。

 幸か不幸か、現在の日本代表には30代の選手が多く、経験という意味では低くはないが、チームの先頭に立つタイプの選手は少ない。川島永嗣(メス/フランス)、本田圭佑(ミラン/イタリア)あたりが代わりを務めたいところだが、彼らは所属クラブでほとんど出場機会が得られていないため、まず試合に出られるかどうかという問題が先立ち、長谷部の穴埋め役に適任とは言い難い。

 特にこの3月の2試合は、日本代表にとって約4カ月ぶりの活動とあって、まずはお互いの意識のすり合わせから始めなければいけない。そんなときに、周りの選手に声をかけ、チーム全体を同じ方向に導いてくれる存在がいないことは、決して小さくない痛手である。

 今回はひとまずチームには合流するとのことなので、試合には出られなくともミーティングなどの場では長谷部の力を借りることもできる。だが、今後長期離脱となれば、そうはいかない。長年、長谷部に頼ってきたツケとも言えるが、キャプテン長谷部の穴を埋めるのは簡単なことではないだろう。

 ケガが治れば、恐らく長谷部は日本代表に戻ってくる。それでもキャプテンは、そろそろ吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)や山口といった下の年代の選手に任せてもいいのではないだろうか。実際、長谷部がキャプテンになったときも、中村俊輔(現ジュビロ磐田)、中澤佑二(横浜F・マリノス)、遠藤保仁(G大阪)ら、経験豊富な先輩選手がいるなかでの就任だった。そうした力強いサポート役がいてくれるなかでこそ、次のキャプテンは育つとも言えるはずだ。

 とはいえ、長谷部もすでに33歳。遅かれ早かれ、日本代表にとって「長谷部ロス」は乗り越えなければならない問題だった。そう考えれば、キャプテンの任命も含め、これが世代交代を図るいい機会というくらいに、ポジティブに受け止めたいところ。あまり悲観的に考えるべきではない。

 むしろ、実際の穴埋め作業以上に不安なのは、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の精神状態である。

 この指揮官は、試合中の失点の場面などでもそうだが、精神的ショックが表に出やすいタイプの監督である。昨年9月のUAE戦で敗れたときも、浅野拓磨(シュトゥットガルト/ドイツ2部)の同点ゴールが幻となったことの恨み節ばかりを口にし、なかなか前向きな姿勢になれなかった。

 ただでさえ、自身が絶大な信頼を置く本田がミランで出場機会を失い、日本代表でも低調なパフォーマンスに終始するという頭の痛い問題の真っただ中。さらに悩みの種が増えれば、選手起用の判断などにも影響を及ぼしかねない。

 ハリルホジッチ監督には、自らが率いるチームの力を信頼し、自信を持って、この試練を乗り終えてもらいたいものである。(文・浅田真樹)

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