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選手権決勝5-0から62日目の再戦。青森山田と前橋育英の因縁は続く。

Number Web のロゴ Number Web 2017/03/19 安藤隆人
選手権では、2回目の決勝進出を果たした前橋育英を、同じく2回目の決勝進出だった青森山田が下して初優勝を飾っている。 © photograph by Takahito Ando 選手権では、2回目の決勝進出を果たした前橋育英を、同じく2回目の決勝進出だった青森山田が下して初優勝を飾っている。

 青森山田vs.前橋育英。

 今年度の高校選手権、決勝のカードである。

 1月9日、埼玉スタジアムで相まみえたこの両雄が、早くも再戦を果たすときがやって来た。

「プーマカップ群馬2017」は、前橋育英高校サッカー部が日頃練習を行っている前橋育英高崎グラウンドに、青森山田、長崎総合科学大学附属、ジェフユナイテッド千葉U-18、関東第一の4チームを招待し、前橋育英を加えた5チームで、2日間にわたって総当たりのリーグ戦を行う大会である。大会2次ラウンド2日目の3月12日に、先に述べた高校選手権決勝のカードが組み込まれた。

 高校選手権決勝で、青森山田に0-5で敗れて準優勝に終わった前橋育英。その前橋育英が自ら主催するこの大会に青森山田を初めて招待したことで、この因縁のカードが実現したのだった。

上を狙うなら、青森山田は必ずどこかで当たる相手。

「青森山田は、全国の上を狙うにはどこかで必ず当たる壁。だからこそ、どのような感じなのかをこの時期に知っておくことが重要になってくる。特に今年の選手達は意識する相手だからね」

 こう語るのは前橋育英高校サッカー部の山田耕介監督。今大会の最高責任者でもあり、青森山田招聘の張本人だ。

 その前橋育英から送りつけられた“挑戦状”を、青森山田側も真っ向から受け止めた。

「今年の前橋育英は全国的に見ても非常に良いチーム。今、僕らが全国に向けて戦っていく上で、実力の尺度を図る絶好の相手です。もちろんいろんな思いもあるだろうからね」(青森山田・正木昌宣ヘッドコーチ)

「決勝は思い返したくない」「悔しさは一生忘れない」

 再戦前日から、両者の想いは交錯していた。

 高校選手権決勝のピッチでスタメン出場し、53分までプレーした前橋育英MF田部井悠は、こう口にした。

「あの決勝は思い返したくない……。自分のサッカー観というか、何もかもを否定された気持ちになった。負けた時、涙が出なくて、悔しいを通り越して、むなしい想いがこみ上げてきた。もう一度ゼロから積み重ねないといけないと思った。だからこそ、青森山田には絶対に勝ちたいし、あの悔しさが活かされているかどうかが明日の試合で分かる。もう燃えています」

 田部井悠の双子の弟で、新チームのキャプテンを務めるMF田部井涼(高校選手権決勝では74分から出場)も、「あの悔しさは一生忘れない。決勝の映像は1回観ようとしたけど、悔し過ぎて、90分間最後まで観ることが出来なかった……。あの一戦は人生の転機というか、自分の意識がまるまる変わった試合。今までの甘さを痛感した。だからこそ、明日はその想いをぶつけたい」

青森山田10番・郷家「受け身に回ると負ける」

 前橋育英にとってこの一戦は、「どんな大会、試合であろうが、相手が青森山田とあれば、話は別」(田部井悠)だった。

 それは青森山田にとっても同じだ。

「前橋育英はあまり表に出さないけど、熱気があって、凄く怖いチーム。自分達は熱を前面に出して、声を張るタイプだけど、前育は全員で声を出すのではなく、個々が内に秘めた闘志を持って黙々とやっているので、逆にオーラを感じるんです。絶対に向こうは『青森山田には何が何でも勝つ』という気持ちでぶつかって来る。僕らが受け身に回ってしまったら負けだと思います」

 こう語るのは、昨年からの主軸で新チームの10番である青森山田のMF郷家友太。「間違いなく今年は前育の方が強い。だからこそ、余計に負けたくない」と続けたように、お互いがお互いを深く意識し合う中、決戦の時を迎えた。

両校ともにベストメンバーでは無かったが……。

 前橋育英は日本高校選抜に選出されたDF渡邊泰基、松田陸、FW飯島陸という、昨年からのレギュラー3人が不在だったが、後はベストメンバー。

 青森山田も黒田監督が不在で、決勝に出場した新2年生MF檀崎竜孔を怪我で欠く以外は、新チームのベストメンバーで臨んだ。

 高校選手権決勝のピッチに立っていた選手は前橋育英が4人(田部井兄弟、CB角田涼太朗、DF後藤田亘輝)、青森山田が3人(CB小山内慎一郎、郷家、MF堀脩大)。お互いの意地が、試合開始早々、激しくぶつかり合った。

前半押し負けていた青森山田が後半に逆襲!

 開始6分で早くもイエローカードが出されるなど、公式戦さながらの闘志むき出しの戦いが繰り広げられる。

 先制したのは前橋育英だった。

 22分にカウンターからMF塩澤隼人が強烈なシュートを突き刺すと、27分にはゴール前の混戦から、再び塩澤が豪快に蹴り込んで、一気にリードを2点に広げた。

 これで勢いに乗った前橋育英がさらに猛攻を仕掛け、34分には決定的なシュートを角田が放つも、これは青森山田の新守護神・飯田雅浩のファインセーブに阻まれた。

「相手に向かって行くパワー、打ち勝つパワーが必要だ。お前達はまず自分に打ち勝てていない。自分に勝てない奴が前橋育英に勝てる訳が無いっ!」

 ハーフタイムに正木ヘッドコーチから激しい発破をかけられた青森山田が、後半になってその底力を見せつける。

 郷家と堀のツーシャドーを軸に、中盤でリズムを掴むようになると、65分(試合は35分ハーフ)にCB小山内の縦パスを、堀がDFを背負いながら受けて、反転からスルーパス。これに反応した2年生FW三國ケネディエブスが、長い足を伸ばして、GKとの1対1を制し、反撃の狼煙を上げるゴールを決めた。

「最後の最後でのタフさ。そこを教えてもらった」

 すると前半のお返しとばかりに、青森山田が猛攻を仕掛け、後半アディショナルタイムに右サイドでFKを獲得する。GK飯田もゴール前に飛び出して行き、全員でゴールを奪いに来た。そして、キックがファーサイドに届くと、DF鍵山慶司がヘッドで折り返し、そのボールに飛び込んだのは郷家だった。郷家が倒れ込みながらも、右足で執念のゴールを押し込んだ――土壇場での同点ゴール。

 試合を振り出しに戻すと、そのまま試合はタイムアップの時を迎え、再戦は2-2のドロー決着となった。

「最後の最後でのタフさ。そこを教えてもらった。試合後に、『後半はもうあっぷあっぷだったよな。そこで頼りになる選手がGKを含めて、DFラインから出てこないといけないのが明確になったな』と話をした。勝った負けたではなくて、今の前橋育英に足りない部分が明確になった。それが大きな収穫。青森山田は本当に良いチーム。やって良かった」

 望んだ決戦に、山田監督は満足げな表情を浮かべていた。

「引き分けは凄く悔しい」「こんなんじゃ終わらない」

 当然、この試合で何かが決する訳ではないし、前述したようにお互いがベストの状態で戦ったわけでもない。ただ、両者の間に横たわる因縁は、この一戦でさらに深まったことは間違いない。

「主力3人がいないのに引き分けは凄く悔しいし、自分達の力の無さを感じる。あの3人が入って来たら、前橋育英はもっと強固なものになると思うので、本当に怖い相手」(小山内)

「青森山田はこんなんじゃ終わらない。彼らは(高円宮杯U-18)プレミアリーグでかなり磨かれていくはず。相当強くなって、ハードルの高さもこの試合とは比べ物にならないくらい高くなっていると思うので、自分達もそれに負けないように頑張って、次は必ず勝ちたい」(田部井涼)

 前橋育英がライバルに突きつけた“挑戦状”は、今季における激戦のプロローグとなった。

 最後に郷家はこの試合を振り返って、こう一言つぶやいた――。

「僕らも火が点いたけど、多分、僕らが彼らにより火を点けたと思う……」

 黄色と黒が織りなす縦縞の炎と、緑色の炎。次に相まみえるときまで、燃え盛る両者の炎が収まることはないだろう。因縁という燃料がある限り。

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