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ハプニング続きの移住計画! 極寒の地で古家への引っ越しはどうする?

コロカル のロゴ コロカル 2018/01/11 18:45 コロカル編集部
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いつまでも引っ越しできなかった理由とは?

2018年1月5日、ついに美流渡(みると)へ引っ越した。美流渡は、わたしたちが住んでいた岩見沢の市街地から車で30分ほどのところにある山間の地域だ。2年前、この地域に暮らす人々と出会って1軒の古家を紹介してもらい、転居しようと心に決めたわけだが、それからずいぶんと長い時間が経ってしまった。

当初の予定では、大工である夫が1年ほどかけて改修をし、息子が小学校へ上がるタイミングで引っ越そうと考えていたのだが、作業は思うようには進まず、転居の目処はまったく立たないまま時が過ぎていた。

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2年前に出会った空き家。内壁や床をはがしてみたところ、基礎の部分が腐っていたりなど、修繕が必要な部分が多数見つかった。

転居を見越して、すでに息子は美流渡にある小学校に通わせていたこともあって、このままズルズルと引っ越しを延ばすわけにもいかなくなっていた。そこでわたしと夫は苦肉の策として、大がかりな改修をしなくても住める家を、さらにもう1軒見つけることにした。そこにとりあえず住んで、ゆっくりと古家を直していこうと考えたのだった。

幸いなことに、昨年10月、状態のよい空き家を見つけることができたのだが、それ以降も数々のハプニングに見舞われた。

設備の点検をしてみると、ボイラーを入れ替える必要があることがわかったり、水道管の一部が破裂していたことがわかったりと、業者さんに直してもらわなければならない部分がいくつも見つかった。そのうえ夫は家事や育児の合間を縫いながら、転居先の家の掃除や部分的な改修をするのに手間取っており、目標としていた11月中の引っ越しは難しくなっていった。

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さらにもう1軒見つけた空き家。室内は荷物がキレイに片づけられており、すぐに住めると思ったが……。

このままでは、またもや引っ越しできない状況が続くのではないか?わたしは、不安に襲われていた。何か、これまでとは違ったアクションを起こす必要性を感じ、ある約束事を自分に課すことにした。

それは仕事の時間をギリギリまで減らして、家事と育児にあてる時間を増やすことだ。わたしの仕事は編集者。これまで原稿の締め切りや単行本の制作などが重なったときは、家事や育児の大半を夫に肩代わりしてもらっていたのだが、このことが転居の作業に集中できない大きな原因になっていたのだ。

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冬休みになった子どもたちも、空き家の掃除を手伝ってくれた。

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1年以上空き家だったようで、たまったホコリを隅々まで掃除。

この約束事を守ることは容易ではなかった。朝5時半に起床して弁当づくりなどをし、夕方16時半には仕事を切り上げ夕飯の支度を始める。仕事にあてることのできる時間は、日中たったの6時間。第三子が5か月ということもあり、背中におんぶしつつ、オムツを変えつつなので、実際に働ける時間はもっと少ない。

これまでは毎日10時間ほど仕事に費やしてきたので、子どもたちを寝かしつけてからも、仕事をせざるを得ない状況が連日続いた。しかも夜に数回、授乳もしつつ、明け方にはまた起きて……。

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今日も雪が降る。岩見沢は北海道有数の豪雪地帯。冬になると快晴の日は少ない。

体力の限界……、イライラが募り大爆発!

1か月ほど、こんな生活を続けて体力も限界にさしかかっていた、ある日のこと。夫が友人の家の改修の手伝いを頼まれたので、何日かそこに通うと言い出したのだった!!

「……、えっ?」

「引っ越しも終わっていないのに?? なんで(怒)」と、つい声を荒げてしまった。いつもお世話になっている友人なので、普通なら責めたりしないのだが、このときばかりは大爆発!また、転居先の家に夫は足しげく通っているわりには作業が進んでおらず、その理由がわたしにはよくわからなかったことも、イライラを募らせることにつながっていた。

さすがに、このときばかりは夫も「まずい」と思ったらしく、なぜ準備が整わないのかを、わたしに話してくれた。

問題となっていたのは、極寒の北海道で、引っ越しをどうやってスムーズに行うかだった。外気温は日中でも氷点下のため、家の掃除や部分的な修繕をしようと思っても、芯まで凍える寒さの中では、なかなか作業ははかどらない(ポータブルの石油ストーブでは、太刀打ちできない寒さ)。

また、配管のどこかが凍っていてトイレの水が流れない状態だったらしく、一度、部屋全体を暖めて、管の氷を解かす作業が必要になっていた。そのほか諸々のことがあり、要するに引っ越し前にストーブを設置して、設備のすべてが動くことを確認するのがベストと夫は考えていたようだ。

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畳の部屋はフローリングに変えたいと夫は材料を購入。できれば、床板を張ってから、引っ越しをしたかったようだが……。

そうか、ストーブか。それなら「買っちゃえば、いいんじゃない?」とわたし。寒冷地仕様のストーブはエアコンなみの価格(それよりも高い?)で、いま家で使っているものを持っていくのが一番だけど、それでは引っ越しの日でないと動かせないわけだし、もったいないけどしかたない。余計な出費なので変な汗が出る想いがしつつも、思い切って購入したのだった。

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大人買いした寒冷地仕様のストーブ! 吸排気の管がつけられているので換気は不要。床暖房の設備もついていて本当に暖かい。

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ストーブをつけると室内は春のよう。越冬中のてんとう虫が飛び回る。

そして、なんと! ストーブを設置した日から、いままでつまっていたものがスッと流れるかのように物事が進むようになっていった。

「もう、いつでも引っ越せる」

クリスマスイブの日に夫が、そう宣言したのだった!おおーーーーー、ついにこのときがきたかと、胸が震える想いがした。

それでも終わらない、ハプニングの数々が……

が、しかし……、ここで、またもやハプニングが(苦笑)。掃除中に夫が転倒。薬指のじん帯が切れるというケガに見舞われた。幸い軽度だったが、これまで引っ越しをしようとすると襲ってきた数々の事件を振り返り、またもや延期になるんじゃないかと心がざわついた。

そのうえ、岩見沢は大雪に見舞われ……、夫は2軒分の除雪で、てんてこ舞いに。こんなことが重なり、荷づくりはほとんどできていなかったが、わたしの独断(!)で無理矢理1月5日を引っ越しデーと決定し、正月返上で荷づくりに明け暮れた。

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一部屋は床板が腐っていたため、はがして張り替えることになった。住みながら修繕。

そして、引っ越しの前日。ここまでくると、もう笑うしかないのだが、夫のぎっくり腰が再発!普段なら心配をする場面だが、余裕を失っていたわたしは、黙々と荷づくりを続けた。その姿に殺気(?)立つ雰囲気を感じたのか、痛い腰を押さえながら、夫もずっと荷物を運んでいた。

そして迎えた1月5日。3名の友人が車を出してくれ、ついに引っ越しが完了した。また何かハプニングが起こるんじゃないかとヒヤヒヤしたが、すべてを無事に終えることができた。

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ワゴン車など3台に分けて荷物を運ぶ。2往復した。

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第三子をおんぶしながら引っ越し。さすがに筋肉痛に……。

引っ越しを手伝ってくれた地域おこし推進員(協力隊)の吉崎祐季さんは、「來嶋さんが美流渡に来るなんて、なんだかうそみたいですね〜」としみじみ語っていた。2年間の紆余曲折を見守ってくれていた彼女の言葉に、わたしも大きく頷いた。ここまで転居するぞと言っておきながら、物事が進まなかった年月を振り返ると、本当に夢みたいな気がした。

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棚も設置。荷物はまだまだ片づかないが、ここでの暮らしがなんとか始まった。

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夫は台所には特にこだわりがある。ガス台の棚やシンクを変えたいようで、設置はまだ。カセットコンロで煮炊きする。

この原稿を書いているのは、引っ越して2日目のこと。わたしは、いま飽きることなく窓の外に広がる白い世界を眺めている。雪がしんしんと降って日中も薄暗いが、ときおり雲間から光が差し込み、木々に積もった雪がキラキラと輝いている。さっそく外に出て雪にまみれてはしゃぐ息子は、笑顔でわたしに語りかけてくる。

「かあちゃん! キツツキ見た? コツコツって木をつついているよ〜」

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窓からの眺め。家で原稿を書くことが多いため、窓越しの風景はとても重要。

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山も見える。光の加減で、いつも違った表情が見られる。

2018年、美流渡での生活がついに始まったのだ。まだ、荷物の整理もついていないし、ネット環境も整っていないけれど、こうしてここで連載の原稿を書いていることが無性にうれしい。この美流渡で自分に何ができるのかを、これから模索しつつ暮らしていきたいと思う。

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引っ越しを終え、ひと息ついてようやく初詣。美流渡神社に参拝!

writer profile

Michiko Kurushima

來嶋路子

くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、2001年『みづゑ』の新装刊立ち上げに携わり、編集長となる。2008年『美術手帖』副編集長。2011年に暮らしの拠点を北海道に移す。以後、書籍の編集長として美術出版社に籍をおきつつ在宅勤務というかたちで仕事を続ける。2015年にフリーランスとなり、アートやデザインの本づくりを行う〈ミチクル編集工房〉をつくる。現在、東京と北海道を行き来しながら編集の仕事をしつつ、エコビレッジをつくるという目標に向かって奔走中。ときどき畑仕事も。http://michikuru.com/

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