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ひとつの作品にバラエティあふれる物語の展開が詰め込まれている―「夢現Re:Master」レビュー

Gamer のロゴ Gamer 2019/07/12 00:03 株式会社イクセル

工画堂スタジオよりPS4/PS Vita/Nintendo Switch/PC向けに発売中の「夢現Re:Master」のレビューをライターのカワチがお届けします。

どうも! Gamerで展開していた百合ゲーム特集でライターを務めさせていただいたカワチです。さまざまなクリエイターさんにインタビューさせていただいたことで、キャラクターの内面を深く描くことができる百合というジャンルの素晴らしさを再認識させていただきました。

ここでは、そんな自分が工画堂スタジオ、しまりすさんちーむの手掛ける「夢現Re:Master」のレビューをお届けさせていただきます! なお、本レビューはクリア後の評価となっており各ヒロインルートの内容も踏み込むものになっています。もちろん、ストーリーが重要なアドベンチャーゲームなのでこれから遊ぶユーザーさんの楽しみを奪うようなネタバレは避けていますが、新鮮な気持ちで驚きたいという人はクリア後にチェックして自分の意見と照らし合わせて、記事を楽しんでいただければと思います。

© 株式会社イクセル

さて、改めて本作の内容を紹介すると、小さなゲーム開発会社「ユリイカソフト」を舞台に、その会社に務める制作陣や声優たちの努力と葛藤を描かれるストーリーになっています。ただ、ゲームをクリアしたあとに改めて内容を振り返ると、個別ルートに入ってからはゲーム会社に絡んだ話よりもキャラクターの過去や内面に迫る内容のものが多い感じがしました。

それでも最終的にはゲーム作りというテーマが重要な位置付けとなっていることがわかるような構成になっており、綺麗にまとめている印象。そういった各キャラクターのストーリーの感想はネタバレになるので記事の後半で語っていきたいと思います。

前半はゲーム制作の話が中心ですが、後半からはキャラクターを深掘りする内容に。 © 株式会社イクセル 前半はゲーム制作の話が中心ですが、後半からはキャラクターを深掘りする内容に。

まず、全体の印象から語っていきたいのですが、本作のジャンルが「キラ☆ふわガールズラブゲーム制作会社アドベンチャー」名付けられていることからもわかる通り、かなりポップな作風になっています。百合作品というと、繊細で詩的な表現なイメージがあるのではないかと思いますが(自分だけかな?)、本作は基本的にテンポのいい会話劇で物語が進んでいくのでコミックを読んでいるような雰囲気で作品を楽しむことが出来ます。

また、〆切り前のドタバタ劇をはじめ、家に帰らずにシンクで体を洗うというような「ゲーム会社あるある」が盛り込まれており、お仕事モノの作品としての楽しみもあります。リアリティもありつつ、「本当にこんなことあるの!?」と思える絶妙なバランスのものが満載で読み進めるのが楽しいです。(ゲーム会社あるあるについてはクリエイターインタビューで語られているので、詳しくはそちらをチェックしていただければと!)

家に帰らずにシンクで体を洗う無限堂さき。完全にお風呂代わりにしています(笑)。 © 株式会社イクセル 家に帰らずにシンクで体を洗う無限堂さき。完全にお風呂代わりにしています(笑)。

また、ゲーム会社を舞台にしているなかで、ゲーム制作の素人である人物を主人公にしているのも上手だなと思いました。ゲーム会社の専門用語が自然に解説されたりしますし、新人が頑張る姿をプレイヤーは応援したくなると思います。これは新米看護師が主人公だった「白衣性恋愛症候群」にも似ていて、あの作品の雰囲気が好きだった人なら本作もハマれると思います。

ちなみに、本作は男性が存在せず女性しかいない世界であることが特徴です。攻略対象となっているヒロインたちはもちろん、舞台となるゲーム会社・ユリイカソフトの社員たちも全員が女性で、混じりっ気なしの百合の世界を楽しむことができるようになっています。お仕事モノとしての魅力もありつつ、女の子同士のイチャイチャも存分に楽しめますので百合好きな人も安心してプレイしてもらえればと思います。

女性しか存在しないため、安心して物語を読み進めることができます。 © 株式会社イクセル 女性しか存在しないため、安心して物語を読み進めることができます。

さて、ここからはネタバレに踏み込んで感想を書いていきましょう。前半はドタバタ劇が描かれる本作ですが、共通ルートの4章が終わり、個別ルートに突入するとそれぞれシリアスな展開に突入。前半と後半のギャップもあって物語に引き込まれていきます。

それぞれのストーリーですが、まずシナリオライターの無限堂さきについて。プライドが高くクオリティにもこだわるものの、〆切りが守れなかったり私生活が守れなかったりと典型的なクリエイター気質の女の子です。彼女のシナリオはディレクターである柳谷こころとの衝突が中心。仕事との向き合い方について真っ正面から描く内容になっています。お仕事モノの熱いストーリーを求めている人は彼女のシナリオも気に入ると思います。

本作のシナリオのなかでも、とくに「仕事論」が語られるストーリーです。 © 株式会社イクセル 本作のシナリオのなかでも、とくに「仕事論」が語られるストーリーです。

続いては新人声優でユリイカソフトの事務バイトをしている太刀花なな。共通ルートでは明るいムードメーカーの彼女ですが、固有ルートでは彼女の出生の秘密が明らかに。か~な~り重い展開が描かれていくことになります。自分は「昔のPCゲームにはこういう重いストーリーが多かったなぁ」と懐かしくなりましたが、若いユーザーさんはこの重さにビックリするかもしれません(苦笑)。

また、インタビュー記事でも語られている通り、このルートは「FLOWERS」を手掛けた志水はつみさんが担当しており、ななの繊細な心が彼女の視点で描かれていきます。主人公であるあいの視点で描かれるほかのルートとは異なる雰囲気を持っており、新鮮な気持ちでシナリオを楽しむことが出来ます。少しずつ心の氷を溶かしていく様子は「FLOWERS」に似ている部分もあり、同作のファンであればより一層楽しめる内容になってると思います。

複雑な家庭環境で育った、ななの内面が描かれていきます。 © 株式会社イクセル 複雑な家庭環境で育った、ななの内面が描かれていきます。

ギシリア出身のイラストレーターであるマリー・マーラーのルートは、彼女の存在自体がネタバレであり語ることが難しいです(笑)。ただ、いちばん予想できないような展開に発展するルートなのでプレイすると驚くことは間違いないでしょう。キーワードで語るなら「政府」や「陰謀」でしょうか……。マリーの葛藤が見どころとなっているので、ぜひプレイしてみてください。

© 株式会社イクセル © 株式会社イクセル

そして、主人公の妹で新米ディレクターである柳谷こころ。彼女のシナリオはほかのキャラクターたちのエンディングを見ることでプレイ可能に。「なぜか姉のことを嫌っている」というストーリー序盤からの謎がついに明かされる構成になっています。

マリーのシナリオ同様にネタバレになってしまうので語るのは難しいですが、ここではゲーム制作という題材ならではの物語が展開。かなりファンタジー寄りの物語になりますが「そもそもクリエイターが情熱を持って作ったキャラクターはファンタジーの存在なのか?」「本当に存在しないと言えるのか?」といったことを投げかける内容に。ちゃんとシナリオを読み解くと、このシナリオが変化球ではなく王道なのだなと思わせてくれます。

なぜ、こころは姉のあいを憎んでいるのか。はたしてふたりは仲直りできるのか。ぜひ、その目で確かめてみてください。 © 株式会社イクセル なぜ、こころは姉のあいを憎んでいるのか。はたしてふたりは仲直りできるのか。ぜひ、その目で確かめてみてください。

以上のようにヒロインのルートによって異なる雰囲気のストーリーが楽しめるため、本作はバラエティのある作りになっています。ただ、個人的にはもう少し個別シナリオでもゲームの制作論が見たかったのでファンディスクのようなものが作られることを強く望みます! 社長の醍醐ほのかもすごくいいキャラクターなので、彼女も攻略させてほしい……。

社長のほのかと合わせて、副社長のばな子のルートもぜひ!(笑) © 株式会社イクセル 社長のほのかと合わせて、副社長のばな子のルートもぜひ!(笑)

また、発売後のレビューなので語ってしまいますが、しまりすさんちーむ得意の鬱なバッドエンドは本作にも存在します。インタビューでは「今までの作品と違って穏やかでキラ☆ふわなストーリーが展開します」とディレクターのみやざーさんが語っていましたが、完全にお笑いで言うところの“フリ”でしたね。これまでのバッドエンドも衝撃的でしたが、今回もかなり心に突き刺さるエンディングになっています。

ひとつだけ例をあげるなら、ヒロインが幼児退行して赤ちゃんみたいになってしまい、主人公が世話をする……そんな重い結末になっています。しかも、そのエンディングを見たあとにタイトルに戻ると、その赤ちゃんボイスでタイトルコールが流れるという悪ふざけつきです。悪趣味だ(笑)。ただ、そういったバッドエンドの展開も含め、ゲームというメディアだからこそできる多様性なのかなと思います。

今回も衝撃の鬱展開があるので、そちらもお楽しみに! © 株式会社イクセル 今回も衝撃の鬱展開があるので、そちらもお楽しみに!

本作は体験版も配信されていますが、あくまでそれは世界観の一部となっています。個別ルートに進んでいくことでいろいろな顔を見せてくれるゲームになっていますので、百合ゲーが好きな人もそうでない人もぜひプレイしてみてほしいですね。

(C)KOGADO STUDIO,INC.

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