古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

西島秀俊、「決して順調じゃない」キャリアで見つけた役へのアプローチ

クランクイン のロゴ クランクイン 2018/11/11 07:00 ハリウッドチャンネル株式会社
『人魚の眠る家』に出演する西島秀俊 クランクイン! © Hollywood Channel 提供 『人魚の眠る家』に出演する西島秀俊 クランクイン!

 東野圭吾のベストセラー小説を映画化した『人魚の眠る家』。本作で、突然の事故により意識不明のまま眠り続ける娘の父親・播磨和昌を演じているのが俳優・西島秀俊だ。これまで映画を中心に数多くの映像作品に出演してきた西島が「役に自分の人生経験が生きてくるかもしれない」と語った言葉の裏には、どんな思いが込められているのだろうか。

 「それぞれの作品の性質もあるので、あまり決まったスタンスはないんですよね」と役柄へのアプローチ方法について語った西島。確かに『MOZU』シリーズや『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』のような、銃撃戦を交えたハードな作品と、本作のように日常を描いた題材ではスタンスは違うように思われるが、そんななかでも俳優として大切にしているのが「徹底的に役を理解すること」だという。

 西島が演じた和昌は、父親から引き継いだIT機器メーカーの二代目社長。篠原涼子扮する妻との間に2児をもうけるが、長女がプールで溺れ、意識不明のまま病院に搬送。医師から「回復の見込みがない」と宣告されてしまう。自身の会社の技術を駆使し、なんとか妻や家族を支えようと奔走するが、徐々に歯車はかみ合わなくなり、妻の常軌を逸した姿に深く苦悩していくという役柄だ。

 そんな「役を理解する」ために西島は、カリスマ経営者の父を持つ二代目社長にヒアリングを行い、疑問に思うことを徹底的に詰めていった。二代目社長が抱えているプライドや葛藤など、感じられる感情を吸収し、役柄に落とし込む。

 一方で、子を持つ父親という部分では、自身の経験を染み込ませていく。「実際に子供を持ってみて分かることがたくさんありました。今回の役柄は、親が子を思う気持ちが核になっている物語なので、僕自身が経験した子供に対する気持ちを役とシンクロさせる部分も多かったです」。

 過去の作品でも、西島の役に対する丁寧なアプローチ方法は非常に特徴的で、印象に残る。『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』では、「麒麟の舌」を持つ天才料理人を演じたが、現役シェフに料理の手さばき以外にも、料理の出し方や食べ方など、さまざまな角度から取材を重ね、役柄を膨らませていった。

 「単純に不器用なんですよ」と、こうした取り組みについて西島は理由を述べる。「役者の皆さんは苦労されている人が多いと思いますが、僕も決して順調なキャリアではなかった。瞬時に演じられる人はすごいと思いますが、僕はそういうタイプじゃない。『うまくいかないな』と悩みながら、いろいろな人に話を聞いたり、役を理解しようともがいたりしながらひとつひとつ演じていくしかないんです」と苦笑いを浮かべる。

 やや自虐的に語っていた西島だが、不器用だからこそ演じる仕事が楽しいのだという。その楽しさを感じたのが初めての出演映画(『居酒屋ゆうれい』)の撮影現場だった。「すごく小さな役だったのですが、衣装さんに『あなたの衣装を探しに行こうよ』と声を掛けていただいて、この役はああでもないこうでもないと言いながら一緒に街で探して。さらにメイクさんも髪の色についていろいろなアイデアを出してくださって…みんながみんな、細かなところから作品を良くしようと取り組んでいたんです。こうやって作品って出来上がっていくんだなと実感したら、“ものづくり”がすごく楽しくなりました。そこからどんな小さな役でも、しっかり向き合わなければ『もったいない』と思うようになりました」。

 「役を理解する」という意味では、『人魚の眠る家』で和昌の妻・薫子を演じた篠原涼子の演技も圧倒的。特にクライマックスシーンは、西島が気持ちを作り上げる必要がないほど、向き合っただけで感情が触発され、沸き出てきたという。「集中力を含め、素晴らしい現場でした」と満足そうに撮影を振り返った西島。「いまの年齢でこの作品に出会えたことは、とても大きな意味がありました」としみじみ語っていた。(取材・文:磯部正和、撮影:高野広美)

 映画『人魚の眠る家』は11月16日より全国公開。

クランクインの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon