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『麒麟がくる』前代未聞の1回~3回一挙再放送で、おさえておきたい「名場面」と「問題シーン」【麒麟がくる 満喫リポート】

サライ.jp のロゴ サライ.jp 2020/02/08 04:00

ライターI(以下I): 2月9日(15:05~)に『麒麟がくる』の第1回から3回を一挙再放送するらしいです。Aさんは去年の今ごろから、「期待できる、待ち遠しい」って大騒ぎしていましたけど、改めて『麒麟がくる』のどこに期待していたのですか?

編集者A(以下A): いろんなところで力説していて繰り返しになるのですが、名作大河として名高い『太平記』(91年)を手がけた池端俊策さんが脚本担当というところが大きいです。そして、80年代に〈近代化大河〉が3年続いた後に登場した『独眼竜政宗』(87年)が大河史上最高の平均視聴率を叩き出した故事がありますが、それが再現されるのではないかという期待もあります。

I: 今作は近代大河『いだてん』の翌年ですもんね。

A: 加えて大河史上初めて明智光秀が主人公になるということに尽きます。三重大教授で20数年来、本能寺の変を研究している藤田達生教授がこんなことをいっています。〈本能寺の変を起こした光秀は、信長側からみれば謀反人ですが、室町幕府将軍・足利義昭側からみれば忠臣でした。これまでは信長側の視点からのドラマ作りが多かったのですが、光秀側の視点からドラマがどう描かれるか興味深いです〉(月刊『サライ』2月号)。

I:確かに私たちは何も考えずに光秀のことを「謀反人」と言っていますが、それは信長側の史観に過ぎないということですね。

A: 歴史は勝者が作り出す、といいますが、最終的に信長と同盟していた家康が天下をとって、光秀は謀反人の汚名を着せられたままです。そんな中で〈光秀目線〉の物語がどう紡(つむ)がれていくのか。池端さんも「『太平記』で室町幕府初代将軍(尊氏)を描いたので、室町幕府の最後も描きたかった」という趣旨の話をしていますし、今まで見たことのない展開になると期待しています。

I: では、『麒麟がくる』一話から三話までをおさらいしてみたいと思います。Aさんは、実は、第一話冒頭に、〈裏設定〉が隠されていると主張していますが・・・・・・。

A: はい。第一話冒頭で野盗が明智荘を襲います。頭領は頬当てをしていますが、本宮泰風さんが演じています。本宮さんといえば、やくざ世界の統一過程を描く『日本統一』の主演俳優。天下統一の物語でもある『麒麟がくる』冒頭に『日本統一』の主演俳優、しかも演じるのが野盗で鉄砲をぶっぱなす。これをどう解釈したらよいのかと・・・・・。

I: 解釈って・・・・。しかも本宮さんは任侠もの以外でも活躍していますよ。

A: 最初はそう思っていたんです。でも制作陣への取材の際に「(物語冒頭は)関ケ原合戦から50年程前なので(合戦も)やくざの出入りのようなもの」という発言がありました。それを聞いて繋がったのです。〈裏設定〉はやくざの出入りで、それこそが「リアルな戦国」の表現なのではないかと。任侠もので活躍する本宮さんが冒頭に登場したので、つい深読みしちゃいました。もちろんNHK非公認ですけど(きっぱり)。

●首をふたつ背負って戦う光秀

I: 確かに、戦国時代は、「日本史上もっとも不幸な時代」ともいわれていますが、「リアルな戦国」の描写が第一話には多く描かれていました。荒れる都に汚れた孤児、これから売買されると思われる縄をうたれた人々。叡山の関所では関銭を徴収してました。そうした「リアルな戦国」が表現されればされるほど、門脇麦さん演じる駒の存在が引き立ってくるのだと思います。駒は、不幸な時代を生きた庶民の声を代弁する重要なキャラクターですから。

A: では、第二話の注目ポイントにうつります。第二話では斎藤道三と織田信秀との間で交わされた「加納口の戦い」が時間を割いて描かれました。西村まさ彦さん演じる明智光安が「性懲りもなく」と吐き捨てていますが、実際に信秀は、美濃や三河と合戦を繰り返していました

三河や美濃など合戦に明け暮れた織田信秀(演・高橋克典) © SHOGAKUKAN Inc. 三河や美濃など合戦に明け暮れた織田信秀(演・高橋克典)

三河や美濃など合戦に明け暮れた織田信秀(演・高橋克典)

I: ああいうセリフでさりげなく当時の状況を説明しているのが『麒麟がくる』のにくいところですよね。

A:そういう個所がもうひとつあります。戦に敗れた織田信秀が「城に帰って寝るか」といっていました。 実際に信秀はオンとオフの切り替えがはっきりしていたといいます。負けを引きずらない。美濃に大敗した直後に連歌の会を開いたともいわれていますし。

I: いろいろな史資料を駆使して練りに練って脚本がつくられてるんだなあって思いますよね。さて、二話では、面白い場面があったそうですが、どのシーンですか?

A: 道三軍に本陣を攻められた信秀が逃げようとする場面です。その背景で、熱田神宮大宮司の千秋(せんしゅう)季光が討たれていました。よくよく見ないとわからない程度の描写です。2回目の視聴で気がついて笑っちゃいました。制作陣に試されているのかと思いましたよ(笑)。この時期の大宮司は織田家の戦によく参陣していたようで、桶狭間では季光の息子の季忠も討ち死にしています。

I: ちなみに熱田神宮の現在の宮司も千秋さん。熱田神宮には信長が寄進した築地塀(通称・信長塀)が残されていますね。

A:そして、もうひとつが、乱戦の中で光秀が首をふたつ背負って戦う場面。道三に「侍大将の首をふたつ獲れ」といわれて律儀に実行しているわけです。ただでさえ重い甲冑を身にまとっているのにひとつ5㎏ほどの首をふたつもぶら下げて戦う光秀ってまじめだなあと思いました。

首を背負って戦った光秀(演・長谷川博己) © SHOGAKUKAN Inc. 首を背負って戦った光秀(演・長谷川博己)

首を背負って戦った光秀(演・長谷川博己)

I: ああ、そこ私は気が付きませんでした。首を二つもですか?

A: 2月9日に確認してみてください(笑)。迫力ある市街戦の中にさりげなく挿入されています。そのほか合戦の際のかかり太鼓など、これまであまり描かれていない場面が多いのが特徴ですから、そうしたシーンは目に焼き付けておきたいですね。

●「信長以後」にはありえない光秀田おこしシーン

I: 第三話では、おさらいすべきシーンはありましたか? 私は道三の「操り人形には毒は盛りませぬ」というセリフにしびれました。大河がブレイクするには、話題になるセリフの存在が不可欠ともいわれます。「梵天丸もかくありたい」(『独眼竜政宗』)や「上げ潮じゃあ~」(『秀吉』)や、最近では「黙れ! 小童(こわっぱ)」(『真田丸』)というのもありました。「操り人形~~」じゃだめですかね?

A: 平成初頭に「担ぐ神輿は軽くてパーがいい」というオフレコ発言を抜かれた政治家がいたことを思い出しました(笑)。土岐頼芸もおとなしくしていたら権威だけは与えられるのですがね。我慢できないんでしょうね。しかし、「本木道三」は、単純にかっこいい。第二話の土岐頼純と対峙するシーンもそうですし。やがてくる道三ロスが心配です。道三スピンオフドラマを別途制作いただきたいとまで思いますね。

I: でも、尾美としのりさん演じる土岐頼芸が鷹を描くシーンって時代を象徴する場面ですよね。武力とそれを維持するための経済力がものをいう時代に、文芸にうつつをぬかしている。武士が勃興した時代から時をつないで来た名門土岐家の盛衰に思いを馳せたい場面でした。結果的に土岐家は頼芸の代に没落しますが、彼らが描いた「土岐の鷹」図は現代に伝わっている。その「鷹図」を描く場面を挿入してくる脚本・演出には敬意を表したいと思います。

鷹図を描く土岐頼芸(演・尾美としのり) © SHOGAKUKAN Inc. 鷹図を描く土岐頼芸(演・尾美としのり)

鷹図を描く土岐頼芸(演・尾美としのり)

A: 確かに、名場面といっていいシーンでしたね。この時代は新旧交代の時代でした。第三話で光秀が田おこしをするシーンが何気なく描かれていますが、この場面は「信長以前」の象徴的な場面。信長は、兵農分離を推進して、農繁期も合戦できるようにした。だから「信長以後」にはありえないシーン。「信長以前」と「信長以後」では、光秀の年齢も上がり立場も変化しますけど、時代が変化していく様も見逃せないですね。

I: 第四話以降の見どころはどんな感じでしょうか。

A: 岡村隆史さん演じる菊丸の存在が気になります。なんだかただの農民ではないような気がしています・・・・。今後は三好長慶や細川晴元など、大河であまり見ない面々も登場します。鉄砲の調達=経済力の描き方も気になりますが、さしあたっては、斎藤道三と息子・義龍の確執がどう展開するのかでしょうね。ほぼ同時期に奥州では、伊達稙宗と晴宗親子が争っています(伊達政宗の曾祖父と祖父)。甲斐では、武田信虎と晴信(信玄)が争いますから、親子といえども容赦ないのが戦国時代。

I: 親子の諍いから目が離せないのですね。

A: 取材を重ねた範囲で結論づけると、長良川の戦いの回は、大河に新たな伝説が刻まれる回になるかと思います。脚本はもちろん、意欲的な演出、野外セットに象徴される美術の方々の活躍、さらに道三役の本木雅弘さんの真摯な取り組み、義龍役の伊藤英明さんもムードメーカーとして現場を盛り上げているそうです。光秀役の長谷川博己さんも座長としての役割をしっかり果たしているとか。

I: 現場の雰囲気がいいってことですね。それはいいドラマになりますよね。

●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。

●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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