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24歳男性が42歳女性に強烈に惹かれた理由 「18歳の年の差婚」夫婦の"補完し合う"関係

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/06/08 08:00 大宮 冬洋
お互いに求め合い、補完し合う(イラスト:堀江篤史) © 東洋経済オンライン お互いに求め合い、補完し合う(イラスト:堀江篤史)

 18歳年下の男性と結婚したばかりのアラフォー女性がいる。相手の海外赴任が決まってからの結婚で、少なくとも来年までは別居婚だ。いったいどんな女性なのか。彼とはどこで出会い、どのような流れで結婚するに至ったのか。いま、どんな心境で別居生活をしているのか。年の差婚の将来に不安はないのだろうか。

 インタビュー場所に選んだのは、渋谷の道玄坂上にあるポルトガル料理店。海を隔てて暮らしている旦那さんに思いを馳せながら、いろいろ話を聞いてみたい。

毒親に長く苦しんだ経験

 ヨガ教室帰りに来てくれた会社員の宮崎綾乃さん(仮名、42歳)は、ロングヘアに眼鏡姿。一見するとおとなしい印象を受けるが、話し始めると多くのこだわりがある人物だとわかる。中学校時代の美術教師のことをなぜか思い出した。

 「高校生のときから途切れることなく彼氏がいました。私の母はいわゆる毒親だったので、心の支えになってくれる人がいつもいてほしかったのです。友達には限界がありますから」

 いきなり赤裸々な告白をしてくれる綾乃さん。母親の母親、つまり綾乃さんの祖母も癖のある人で、母親はずっと彼女(祖母)を憎んでいた。そして、つねに誰か「仮想敵」を必要としていたという。長女である綾乃さんに対しては、支配下に置きたがった。

 「私が弱々しいときは優しいのですが、自分の意見を持って行動することは許しません。社会人になってからは何百万円レベルで母親に貢ぎました。でも、最終的にはうその親不孝話を親戚に広められてしまい……」

 父親は悪い人ではないが、完全に母親の言いなりだ。頼ることはできない。綾乃さんは結婚願望を高めつつ、「子どもは要らない。私には子育ては無理」という気持ちを固めていた。

 「親ですら助けてくれないのに、周りの人が助けてくれるはずはないと思ってしまいます。子どもがいると自分の手足がもがれる想像しかできません」

 不思議な色気がある男女には、綾乃さんのように毒親に長く苦しんだ経験がある人が少なくないと思う。干渉を拒絶して自立と自由を追求する一方で、親密な人間関係への欠乏感のようなものがにじみ出る。その矛盾とアンバランスが魅力を形成するのだろう。

 だからこそ、綾乃さんには恋人が途切れなかった。しかし、相手は「結婚する気がない」もしくは「結婚したら子どもが欲しい」人ばかり。結婚に至る縁には恵まれなかった。

「会社つながり」の婚活パーティー

 結婚のきっかけとなった婚活パーティーに出席したのは2015年のことだった。グループ各社の労働組合が共同で主催した大規模なパーティーで、参加者は300人以上。綾乃さんは40歳になっており、出会いの場には前のめりで参加していた。

 「でも、男性は20代30代ばかり。管理職になると労働組合からは外れてしまうからです。女性の年齢にはバラつきがあり、私のようなアラフォーもいました」

 余談になるが、労働組合などが主催してくれる「会社つながり」の婚活パーティーは、会社や仕事が好きな独身者にはお勧めだ。出会う人は他人でありながらも身元がお互いに知れており、職歴や価値観が比較的似ているため、恋愛から結婚へと話を進めやすい。

 筆者は以前、大手自動車部品メーカーの労働組合が主催する婚活パーティー参加者に取材をしたことがある。単独で数万人も従業員がいる会社なので、工場などの拠点が異なると社員同士が知り合う機会は少ない。地域では超優良企業として知られるため、「社内結婚」へのニーズは特に女性社員に高く、社内婚活パーティーは抽選をしなければならないほどの大人気だった。

 労働組合は仲間意識を前提としているためか、普通の婚活パーティーではやりにくい「遊び」も平気で実施する。綾乃さんが参加した大規模なパーティーでは、男性参加者がカギを持ち、好みの女性が持っている南京錠を開けさせてもらって喜ぶ、というユニークな遊びがあった。

 「私のところにやって来たのが今の夫です。顔が小さくて背が高く、王子様みたいな外見だと思いました。私の南京錠は彼のカギでは開かなかったんです。そうしたら、彼はすぐに友達の参加者からカギを10個も借りて来て、なんとしても私の南京錠を開けようとして……」

 雄介さん(仮名、24歳)はかわいげのある男性なのだ。明らかに年上の綾乃さんにすっかり懐いてしまい、その場から離れようとはしなかった。

 「パーティーが終わるまで、ずっと口説かれていました。『私は40歳だよ。中年だよ』と5回ぐらい言ったのですが、彼には関係ないみたいです。マッチングシートのいちばん上に自分の番号を書いてくれ、と頼まれました。カップルになると、全員の前で発表されて記念品をもらえます。記念品目当てで一時的にカップルになる人たちもいるのですが、彼は私の手をつなぎ『一目惚れです!』と公言しました」

 雄介さん、なんとも積極的な男性である。綾乃さんは戸惑いながらも彼を受け入れた。

どちらも親に恵まれていない

 「この青年の気が済むまで付き合おう。でも、2年ぐらいしたらリリースしてあげよう」

 そんな気持ちだったと綾乃さんは明かす。だが、雄介さんは本気だった。なんと2度目のデートでプロポーズ。綾乃さんはとりあえず承諾をしたものの「ないでしょ」と思った。雄介さんはその気かもしれないが、両親やきょうだいが許すはずがない。自分が親だったら大反対するだろう。

 ここで2人には奇妙な共通点があることがわかる。どちらも親に恵まれていないのだ。雄介さんの母親は2年前に50代前半にして亡くなっており、昨年に他界した父親と雄介さんはずっと不仲。一人っ子の雄介さんは天涯孤独に近い身の上だったのだ。

 親問題は生じないとわかっても、2人の間には別の課題があった。どこに住むのか、おカネはどうするのか、だ。

 独身のまま長く暮らすことも想定していた綾乃さんは、首都圏に独り暮らし用のマンションを買ったばかりだった。とても気に入っているが、こだわりの洋服なども多く、2人で暮らす広さはない。

 会社の独身寮で暮らす雄介さんは、学生時代の奨学金と自家用車のローンを返済中。資金繰りにはまったく余裕がない。2人で暮らすためには、綾乃さんがマンションを売り、貯金を崩さなければならない。

 「せめて車のローンを終えるか、それとも海外赴任にでもならなければ結婚はしないよ、と伝えました」

 すると、不思議なことに状況が結婚に向けて動き始めた。すでに疎遠になっていた綾乃さんの母親が他界し、雄介さんは本当に海外赴任が決まった。なお、雄介さんが勤める企業では若いうちに海外経験をさせることが多いのでレアケースではない。赴任手当も出るため、帰国する頃には奨学金と車のローンは終わり、綾乃さんとの2人暮らしを始める程度の貯金はできているはずだ。

 結婚が決まり、北海道に新婚旅行へと出掛けた。2人だけの「フォトウェディング」をして、結婚の実感が少し高まった。すぐに別居生活に突入したが、ネットを使って朝・昼・夕・晩に連絡を取り合っている。

 「結婚をして、すごくホッとしました。今までとは安心感が違います。いま、仕事がすごく忙しくて苦しいこともあります。先日は、泣きながら彼に電話をして話を聞いてもらいました。聞いてもらったらスッキリしてすぐ眠っちゃいましたけど」

10年後、20年後に不安は?

 年齢差については今では心配していないと綾乃さんは言い切る。結婚当初の雄介さんは「子どもが欲しい」と言っていたが、綾乃さんは「私は無理だよ」と伝えて、マイペースで睡眠時間がやたらに長い雄介さんも育児は難しいことを指摘。雄介さんは納得し、時間とおカネは自分たちの生活と趣味に使ったほうがいいと言い始めた。若者は柔軟である。

 しかし、雄介さんはまだ24歳。10年後、20年後を考えると綾乃さんは不安になることはないのだろうか。

 「彼はゆとり世代のど真ん中。大谷翔平くんや羽生結弦くんと同世代です。自分が好きなものを知っているし、それを突き詰めるタイプ。やりたくないことはいっさいやりません。女の人と話すのは実は苦手らしく、私のそばにいるときは安心してずっと寝ています」

 雄介さんは綾乃さんの「うそやキレイごとを言わずに裏表がない」ところに惚れ、信頼し切っているという。やや屈折して暗めな魅力を発する綾乃さんは、「裏表がない、というよりも裏しかない人だ」と41歳の筆者は感じた。しかし、ゆとり世代で天涯孤独の雄介さんにとってはまた別の面が見えるのだろう。綾乃さんも雄介さんを求めている。彼の若さでなく率直で一本気なところが安らぎになっているのだ。

 社会人になると、相手との年齢差を忘れてしまうことが増える。特に、気心が知れて付き合いが長くなる人は、先輩後輩としてではなく人間同士で対等に向き合えることが多い。夫婦の絆を結べるような間柄はなおさらだと思う。綾乃さんと雄介さんはいま、年齢の差も地理的な距離も関係なく、求め合い、補完し合っている。

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