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新型コロナ蔓延、広告業界の苦悩に見る日本経済へのダメージ

マネーポストWEB のロゴ マネーポストWEB 2020/03/07 16:00
広告会社の苦境はマスコミ一業種だけの問題ではない(イメージ) © マネーポストWEB 提供 広告会社の苦境はマスコミ一業種だけの問題ではない(イメージ)

 百貨店業界、旅行業界、飲食業界など、新型コロナウイルス感染拡大の被害が大きい業界は少なくない。マスコミの中では特に広告業界への影響が大きいようだ。

 有事の際の広告といえば、2011年の東日本大震災の時は4月下旬までAC(公共広告機構)のCMが民放各局で流れていたこと思い出す人も多いだろう。あの時は死者・行方不明者が多数出たほか、避難生活を余儀なくされた人も多く、出稿側が配慮してACのCMに差し替えられた。ただし、ACに差し替えた場合でも金銭が発生しているため、テレビ局や広告会社の収益に直接的なダメージがあったわけではない。

 むしろその後の自粛ムードの方が、広告業界への影響は大きかった。しかしながら、東日本大震災では関東以西では大きな被害が出なかったこともあり、被災地以外の経済は比較的しっかり回っていた。そのため業界全体の業績低下も限定されたものになり、比較的早い段階で回復を見せた。

 だが、今回は政府によるイベント自粛要請や学校の一斉休校などもあり、「震災時よりも全国的な影響は大きい」(広告会社営業)との声も出ている。そもそも3月は引っ越しや進学、就職など、人生のイベントシーズンでもあり、広告業界にとってもっとも“かき入れ時”の季節である。

広告会社が取り扱う企業はありとあらゆる業種に及んでおり、CMや広告だけでなく、イベント、記者会見、展示会など、一般的な企業活動のほぼすべてに関与しているといっても過言ではない。

 2月中旬以降、企業は記者会見を「無観客」にしてネットで生中継するなどの対応をしている。もしもその記者会見会場が感染元となってしまった場合、安全対策の杜撰さが批判され、イメージダウンは避けられないからだ。

 だからこそ広告会社は担当するクライアントの記者会見をどのような形で行うか腐心し、事前にメディアに対して競合他社の会見がどんな形で行われるかを問い合わせたりしている。前出の営業担当はこう語る。

「私のクライアントの記者会見前日に同業他社が記者会見をやることになっていました。彼らが無観客でやるという情報をその前日に得られたため、我々もそれにならうことに決めました。それが決まったら急いで『ライブ配信を行う』という方針をメディア各社に伝えました」

 こうなるとせっかく借りていた広い会場費用の面でロスが発生する。とにかく3月は発表会やイベントが盛りだくさんのため、広告会社のみならずともそのクライアント企業も大打撃をくらうこととなる。

 広告業界のドル箱は「新生活キャンペーン」で、3~4月の消費をいかに活性化させるかを考えたうえで年間のマーケティングプランを考えている。それが今回のコロナ騒動により完全に目論見が狂った形となり、新年度のスタートダッシュを切れなくなってしまったのである。となれば当然、年内計画も見直しせざるを得ず、すべての計画の変更を余儀なくされる。

 また、「春需要」を扱うものも大打撃を受けている。例えば、花粉症関連のアイテムにまつわる広告だ。通常、花粉症対策の企画は前年の12月には開始するもの。花粉の量が多くなる2~4月に合わせて販売強化を目論むわけだが、今はコロナ対策が最重要視されているだけに花粉症の危険性を訴えても軽視されがちだ。花粉症関連グッズのプランニングを昨年12月に開始したプランナーはこう嘆く。

「『これは話題になるはず!』という企画を年内は社内で揉み、年明け早々にクライアントに提出したのですが、その直後にコロナの件が取り沙汰されました。クライアントは『こんな時期に花粉症対策を訴えてもしょうがないですよね……』と諦めムードで、元々考えていた企画はおじゃんです。本当はコロナが蔓延しているからこそ、くしゃみによる飛沫感染や、目や鼻をこすった時の接触感染の防止のために、重点的な花粉症対策が必要なのですが……」

 たとえコロナ騒動が起きなくても、花粉症の人にとって今の時期は辛いもの。とはいえ、世間の関心がコロナに向きすぎているため、「マスクを厳重にする」というコロナ対策で花粉症対策も兼ねるケースが増えているようだ。

 ここで紹介したものはあくまで一例にすぎない。広告会社がかかわる領域は「娯楽」的な解釈をされることもあるものの、本質的には企業のマーケティング手段の強力な一手であるため、生産体制や販売計画にも大きな影響を与える。広告業界からの悲鳴は、単にマスコミの一業種の苦境を表しているものではなく、日本経済全体の悲鳴の代弁でもあるのだ。

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