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会話が続かないと悩む人へとっておきの処方箋 コミュニケーションには「聞く力」が必要だ

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/04/02 17:00 國武 大紀
「聞く力」こそ、話し上手になるための重要なスキルです(写真:kikuo/PIXTA) © 東洋経済オンライン 「聞く力」こそ、話し上手になるための重要なスキルです(写真:kikuo/PIXTA)

 ある日の夕方、妻は普段とは明らかに異なる様子で私に話しかけてきました。

 「ちょっと相談したいことがあるの」

 私は妻の不安な表情に困惑しながらも、妻の話を聞きながら、その都度真剣にアドバイスをしました。

 「……それは違うと思う。こういう方法もあるんじゃないか?」

 ところが、妻はどんどん不機嫌になり、最後には黙りこんでしまいました。はっと気がつくと、妻の頬からホロホロと涙がこぼれ落ちていました。

 「私の話をちっとも聞いてくれていないわね」

 私は、訳がわからなくなり、とても困惑しました。

 「ちゃんと聞いてるよ!!」と私は思わず声を荒げてしまいました。

 「私はあなたからのアドバイスなんていらない。ただただ私の話を聞いてほしかっただけ」

 言葉を失いました。自分ではちゃんと妻の話を聞いているつもりでした。でも妻はまったく聞いてもらっている感じがしていなかったのです。そして、妻は最後にこう言い放ちました。

 「あなたは人の話を聞いているようで、まったく聞けていない」

ビジネスシーンでもよく見られる光景

 このときの体験は、今でも記憶に鮮明に残っています。あなたはどうでしょうか? このような場面はプライベートに限らず、ビジネスシーンにおいても多く見受けられます。

 例えば、部下が上司に対し真剣に説明しているにもかかわらず、上司はパソコンの画面を向いたまま「それで……なるほど……もういいよ、わかった……」と生返事で一度も部下の顔を見ずに話を済ましてしまうようなケースです。

 上司としては話を聞いているつもりでも、部下としては自分の存在を軽く見られているのではないか? と不安あるいは不信を感じてしまいます。どう対処したらいいのでしょうか。

 多くの人が誤解しているのは、「コミュニケーション力のある人=話すのがうまい人」ということです。コミュニケーション力(=話し上手)であれば、仕事も人間関係もうまくいく、という勘違いがまかり通っていますが、実はそうではありません。

 拙著『「聞く力」こそが最強の武器である』でも解説していますが、そもそも人間には「他者から理解されたい、受け入れられたい」という「承認欲求」があります(マズローの欲求階層説)。

 この承認欲求は、人間の数ある欲求の中でも最も強い欲求の1つです。なぜなら、人間は外敵から身を守るために古来より集団生活をして生き延びて来たので、自分のことが受け容れられないと、生存を脅かされたように感じるからです。

 では、「人を理解する」とは、どのような行為によってなされるのでしょうか? 人を理解するということは、まさに「聞く」という行為を通じて行われます。「話す」という行為では、人を理解することはできません。つまり、どんなに話し上手になったとしても、相手を理解することには繋がらないのです。

 人間関係のほとんどの問題は、「理解し合えない」ことから起こります。夫婦や親子、先生と生徒、上司と部下の問題など、お互いが理解し合えないところから争いが発生するのです。つまり、「相手を理解する力=聞く力」が不足している、ということです。「相手と向き合い、相手のことを聞くことができる」そのスキルがあるだけで、人間関係だけでなく、仕事も人生もうまくいくのです。

多くの人が知らない「本当の聞く」とは?

 相手を理解するために、2つのポイントがあります。

 1つは、「相手の話の内容を理解すること」です。これは、ほとんどの人がやっている「聞き方」です。この聞き方は、相手の口から発せられる言葉がどのような意味をもっているのか? を理解しようする行為で、「言語」に意識を向ける聞き方です。

 さらに加えると、相手が話している際に「その考えは違うな……」というようにジャッジ(評価判断)する聞き方は、自分に意識が向いている聞き方なので、相手は聞いてもらっている気がしません。「ジャッジしないで、ありのまま相手のことを聞いてあげる」と、相手はより深く理解されたと認識します。

 そして、もう1つは「相手の気持ち(感情)を理解すること」です。この感情を理解するという聞き方は、ほとんどの人が知りません。この方法は、相手がどのような気持ちなのかを意識的に理解しようとする行為で、「非言語」に意識を向ける聞き方です。

 具体的には、

・相手の表情はどうか?

・声のトーンは明るいか、暗いのか?

・姿勢はどうか?

・緊張してそうか、リラックスしてそうか?

など、さりげなく自然に観察することです。この2つのポイントをふまえて聞くことができると、相手は深いレベルで「自分のことが理解された」と感じます。大切なポイントは、耳と心の両方を傾けながら、相手に意識を向けて聞く。これが「本当の聞く」なのです。

 この「聞く」ができるようになると、雑談力も高まります。雑談力は、友達関係のみならず、とくにビジネスにおいて求められる必須のスキルです。雑談のレベルが上がると、自分に対する評価や印象もガラッと変わります。実際、雑談の上手な人は、仕事でも高いパフォーマンスを発揮しています。

 そして、多くの人が雑談で悩んでいるのは、「何を話したらいいかわからない」とか「話が続かない」といった話し方の部分です。

 しかし、雑談がうまくなる秘訣は、話し方よりも「聞き方」にあります。雑談がうまくいく方法はいくつかありますが、ここではすぐに使える2つの秘訣をお伝えします。

 1つ目の秘訣は、「相手が心地よくなるような聞き方」をする、ということ。

 もう少し具体的に言うと、「相手の感情に呼応して、同じ感情レベルで聞く」のです。例えば、相手が「この日本酒は本当に最高だなあ!」と話しかけてきたとします。そこで「え、そうですか?」と自分の本心をそのまま伝えたら、自分に悪気はなくても、相手は否定されたと感じてしまいます。

相手の感情表現を同じ感情で繰り返す

 ではどうしたらいいかと言うと、「本当に最高なんですね! よかったですね!」と、シンプルに相手の感情表現を同じ感情レベルで繰り返してあげる。これだけでOKです。相手の感情表現に対して、同じように呼応してあげると、相手はとても心地よくなるのです。これを「共感」と言います。

 このとき、その日本酒が自分の口に合わないのに本心に逆らって「最高においしいですね!」と無理に合わせようとする必要はありません。無理に同感すれば、ストレスをためることになります。

 「共感」と「同感」は同一視されがちですが、実は根本から異なります。「共感」は、自分が同意していなくても、相手がどう感じているかを理解することです。「同感」は、文字どおり同じ気持ちになる、賛成するということ。

 つまり、「自分は違うけど、あなたはそう感じるのね」と共感するだけでいいのです。人は共感されると「自分が受け入れられた」と感じ、承認欲求が満たされた状態になります。この承認欲求を満たしてあげるというのが雑談上手になる大切なポイントです。「共感」は自分にストレスをためず、相手も心地よくする聞き方なのです。

 もう1つの秘訣は、「縦横の質問」を使って聞く、です。

 実は、自分が話し下手であったとしても、あるいは教養がなかったとしても、話を盛り上げることはできます。それは、「聞く側」の視点に立って、会話を盛り上げていく「縦横の質問」という方法です。

 まず「横の質問」とは、「ほかには?」「例外は?」「別の見方は?」というように、話の幅を広げる質問です。横の質問は、相手の視野を広げたり、視点を転換させたり、感情の状態を調べたりするときに効果的です。

 対して「縦の質問」は、ある特定の話題について深掘りする質問のこと。例えば、「具体的には?」「そしたらどうなりますか?」といった質問のほかに、「5W1H」つまり、誰(who)、何(what)、いつ(when)、場所(where)、理由(why)、方法(how)を聞いていくことによって、話の内容をさらに深掘りしていく聞き方です。縦横の質問を使った事例は次のような感じです。

《縦横の質問の会話例》

A「最近のマイブームって何?」

B「そうねえ、いろいろあるけど、ホットヨガとか……」

A「ほかには?」(横の質問)

B「あ、そうそう思い出した! アイシングクッキー! すごく楽しいのよ!」

A「へえ! 聞いたことはあるけど、どんなものなの?」(縦の質問)

B「クッキーにお砂糖でかわいい絵やデザインしたりするのよ!」

A「楽しそう! 何がきっかけなの?」(縦の質問)

この事例では、最初に相手が「ホットヨガ」と答えたときに相手の感情があまり動いていないので、「ほかには?」と横の質問をしました。するとBさんは、「アイシングクッキー!」とすごくうれしそうに答えました。明らかにBさんの感情が強く動いたので、Aさんはこの話題について「縦の質問」で深掘りしていきました。

「横の質問」と「縦の質問」を併用する

 このように相手の感情が動いていない場合は「横の質問」で相手の関心を探り、感情が動いたところで「縦の質問」で深掘りすると、話がとてもスムーズに展開していきます。気の利いた話題を提供したり、深イイ話をしたりしなくても、聞く側の視点で「縦横の質問」を使えば、十分に会話を盛り上げることができるのです。

 以上のように、「相手が心地よくなる聞き方」や「縦横の質問を使った聞き方」を使うことによって、会話が苦手であっても、雑談上手になることは十分に可能です。

 「聞く」という行為は、目立たず、受け身の姿勢のように思われますが、実際にはとても能動的な行為でパワフルなものです。

 世間一般的には「話し方」や「見せ方」といった目立ちやすいものにスポットライトが当りがちです。ですが、コミュニケーションにおいて、本当に大切なのは、「お互いが理解し合うこと」。お伝えしたように、理解は「聞く」から始まりますから、「聞く力」が身につくと、「人を理解する力」が高まる、のです。

 人に対する理解力が高まれば、雑談のみならず、信頼関係が作りやすくなったり、リーダーシップがより発揮できたり、仕事のパフォーマンスが上がったりするなど、すばらしい成果をもたらしてくれます。

 「聞く力」を身につければ、仕事や人生のあらゆる局面において「最強の武器」を手にすることになるのです。

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