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「ヤマダ傘下入り」の大塚家具を待つ本当の苦難

プレジデントオンライン のロゴ プレジデントオンライン 2020/01/09 15:15 鈴木 貴博
記者会見するヤマダ電機の山田昇会長(右)と大塚家具の大塚久美子社長=2019年12月12日、東京都中央区 © PRESIDENT Online 記者会見するヤマダ電機の山田昇会長(右)と大塚家具の大塚久美子社長=2019年12月12日、東京都中央区

大塚家具を買収したものの難しいチャレンジ

昨年12月、ヤマダ電機は経営再建中の大塚家具の第三者割当増資を引き受け、子会社化したと発表しました。出資額は約43億円です。大塚家具はヤマダ電機グループ入りするとともに、社長は創業家出身の大塚久美子氏が続投するということです。

2015年にお家騒動で揺れた大塚家具は、このところ年間40億円を超える営業赤字を出し、資産の切り売りで苦境をしのいできました。売れる資産が枯渇する目前で、ヤマダ電機が親会社になり資本が注入されたことで、企業存続の道がひらけたわけです。

一方で、親会社のヤマダ電機は直近の半期決算で業績回復を見せたものの、2019年3月期に家電業界の中で「ひとり負け」と揶揄(やゆ)される純利益50%減の決算を発表しています。「アマゾンエフェクト」と呼ばれるインターネット通販からの悪影響を一番受けやすい店舗型の家電販売に依存しているビジネスモデルのもとで、この買収が吉と出るかが心配されています。

大塚家具についてなんら業績の改善が見込めない状況での身売りであるため、前向きな分析は見かけません。実際、大塚家具を買収して業績を伸ばせるかはヤマダ電機にとって難しいチャレンジとなることでしょう。

ヤマダ電機と大塚家具の2020年を展望します

とはいえ私の本業はコンサルタントとして新しいチャレンジを支援することです。今回の記事では、今年2020年にヤマダ電機と大塚家具がどのようなチャレンジに直面し、それがもしうまくいくとすればどのような戦略を目指すことになるのかを展望したいと思います。

まずヤマダ電機は、直近の半期決算でなぜ業績回復を見せられたのでしょうか。2020年3月期の半期の連結経営成績では売上高は前年同期比で6.3%増、純利益は(前年同期が悪かったからではありますが)実に9倍の150億円と、半期決算の段階で昨年度の通年の純利益を上回っています。このヤマダ電機の業績回復には2つの理由があるようです。

1つは昨年の業績悪化はヤマダ電機が構造改革を進める途中の「計画された悪化」だったということです。ヤマダ電機の考えとしては「家電に依存する事業構造では未来が危ない」ので、家電分野の在庫を圧縮しながら、住宅関連事業の企業を買収するなど構造改革を進めていました。そのために特別損失を出しながらの決算数字の悪化だったのですが、昨年の段階ではこれが純粋に構造改革だけのものだったのかは不透明でした。

ヤマダ電機はなぜ減益だったか

なぜかというと特別損失以外に営業利益も対前年度比で75%減益で、昨夏のエアコン商戦ではヤマダ電機は明らかに競合他社に売り上げで後れをとっていたからです。構造改革に加えて本業での失敗も重なっていたことが去年の減益決算でした。

しかし2019年11月に発表された9月までの半期決算を見ると、消費増税前の駆け込み需要でヤマダ電機は競合他社よりもいい成績を上げていることがわかります。中立的に見て、昨年はやはり構造改革での苦労が多く、今年は成果が出せる状況へと変わってきたとみていいのではないかと思われます。

そう私が好意的に業績を分析する理由の1つは、ヤマダ電機の事業部門別の業績において住宅設備機器事業部の売上高が堅調に伸びていることにあります。構造改革期だった昨年度で7.7%増、この上期も前期比5.1%増を記録して通年では売上高が1860億円近くまで見込めます。言い換えると住宅設備部門はすでにヤマダ電機全体の売り上げの1割を超えるところまできているということです。

そこに今年は大塚家具が戦力として加わることがどうプラスになるのかがポイントになります。大塚家具という業態は、ヤマダ電機の山田昇会長が記者会見で説明したとおり粗利益率が高いという特徴があって、確かに売り上げがある程度増えることで赤字から黒字に転換することができます。

中級家具の強み

山田会長は「10%も増えれば」黒字だといいましたが、実際はもう少し積み増しが必要でしょう。それでもこれまで大塚久美子社長がどうしても達成できなかった売上増が、ヤマダ電機の販売力で100億円積み増しされれば大塚家具とヤマダ電機の戦略シナリオはいい方向に変わってきます。そしてヤマダ電機の住宅事業部が1860億円の事業規模、言い換えれば販売力をもっていることを考えると、このシナリオは戦略的に達成しうる範囲内の数字に見えます。

このシナリオにはもうひとつプラスの面があります。大塚家具の扱う“中級家具”という商品はヤマダ電機グループの中では明らかにアマゾンエフェクトの影響を受けにくいタイプの商品に分類されます。中級家具は婚礼の際や家の新築・増改築の際に求められるものなので、それなりの価格の商品が選ばれるうえに、ネットではなく実際に店舗で見て購入するタイプの商品になるからです。

この点ではホームセンターで販売される家具と比べて、売り上げをアマゾンに持っていかれるリスクは相対的に小さいのです。

このように戦略的な見通しとして考えれば、ヤマダ電機による大塚家具買収はプラスに働く可能性が見込めるシナリオとして検討されたものだと思われます。では2020年の展望は順風満帆かというとそうではありません。

子会社の大塚家具は洗礼を浴びる嵐の一年に

ヤマダ電機の社風は経営目標を絶対に達成しなければならない厳しい社風です。結果が出せなければ山田家出身の役員であれその地位にとどまることができません。ましてや雇われの役員の退出や降格は当然のように行われます。大塚家具はそのような社風の企業グループの一員に迎え入れられたわけです。

そう考えると、これまで黒字化する経営計画を出しながら赤字の結果を出してきたにもかかわらず銀行団がクレジットラインを設定して支援してくれていたような状況のほうがずっと生ぬるかった。そのように思えるほどの変化が、2020年の大塚家具を襲うことになるのです。

大塚久美子社長をはじめ、大塚家具の経営陣、管理職は、ヤマダ流の経営手法に大いに戸惑いながらヤマダ色に染められていくことになるはずです。そしてヤマダ電機が本当にほしいものは大塚家具というブランドだと仮定すれば、結果が出せない社員はその地位に残ることが難しい。大塚家具の幹部社員はそのような一年を過ごすことになるでしょう。

つまり大塚家具を買収したヤマダ電機にとって2020年はチャレンジの一年になる一方で、大塚家具にとってはヤマダ電機化の洗礼を受ける嵐の一年になるということだと私は思います。

---------- 鈴木 貴博(すずき・たかひろ) 経営コンサルタント 1962年生まれ、愛知県出身。東京大卒。ボストン コンサルティング グループなどを経て、2003年に百年コンサルティングを創業。著書に『仕事消滅AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』など。 ----------

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