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UUUMの株価はなぜ急落したのか?

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2020/02/03 06:00 川口宏之
Photo: Adobe Stock © ダイヤモンド・オンライン 提供 Photo: Adobe Stock

ユーチューバーといえば、今や「将来なりたい職業ランキング」で上位になるほど人気の職業。そのマネジメント会社としては、はじめしゃちょーやヒカキンなど、人気ユーチューバーを多数抱える「UUUM(ウーム)」が有名だ。UUUMの経営実態を有価証券報告書を使って分析し、現在の状況と将来性について検証する。書き手は、「監査法人」「証券会社」「ベンチャー企業」「会計コンサル」、4つの立場で「会計」に携わった経験を持つ川口宏之氏。発売4日で重版が決まった『経営や会計のことはよくわかりませんが、儲かっている会社を教えてください!』の著者でもある。

株価急落に迫る!

 ユーチューバーのマネジメント会社「UUUM(ウーム)」の株価が急落しています。国内ではほぼ敵なしのUUUMなので、YouTubeの人気に乗って、まだまだ成長すると思われていました。しかし、今年度に入って急に業績に陰りが見え始めたのです。一体、UUUMに何が起きたのでしょう。UUUMの決算資料から、その要因を紐解いていきます。

 まず、UUUMの収益モデルについて説明します。UUUMの売上高はYouTubeからの広告収入が大部分を占めます。そして売上原価のほとんどは、ユーチューバーへの支払いです。したがって、その差額がUUUMの粗利益となります。下記のイメージ画像を見てください。

 UUUMの収益源は複数ありますが、動画の再生回数などに応じてYouTubeから受領するアドセンス収益が一番の稼ぎ頭です。売上高の半分以上を占めています。やはり、いかに動画をたくさん見てもらえるかが、UUUMのビジネスの生命線といえるでしょう。下記の円グラフを見てください。

 UUUMのアドセンス収益は、創業以来、右肩上がりで順調に伸びてきました。しかし、2020年5月期の第1四半期から潮目が変わりました。

アドセンス収益の減少。なぜ?

 四半期ごとの推移を見てみると、第1四半期と第2四半期で連続して減少しているのです。下記のグラフを見てください。

 UUUMとしては、アドセンス収益以外の売上でカバーしたいところですが、企業とのタイアップ案件もそこまで大きく育っているわけではなく、しかも、2020年5月期の第2四半期から減少に転じてしまっています。そのため、アドセンス収益の減少がダイレクトに売上減少に結びついてしまったのです。

 ではなぜアドセンス収益が減ってしまったのか?

 アドセンス収益を「動画再生回数」と「1再生あたりの広告収入」の2つの要素に分解して、その要因を分析してみます。

 まず、「動画再生回数」については、2020年5月期の第1四半期は116億回再生だったのが、第2四半期では109億回再生と、減少に転じています。下記のグラフを見てください。

 そして、「1再生あたりの広告収入」は、2019年5月期の第4四半期では0.310円だったのが、2020年5月期の第1四半期では0.265円に急落しました。下記のグラフを見てください。

 したがって、第1四半期の減少要因は「1再生あたりの広告収入」、第2四半期の減少要因は「動画再生回数」にあることが読み取れます。さらに掘り下げてみましょう。

「UUUM」と「芸能事務所」の大きな違い

「動画再生回数」の減少は、人気ユーチューバーのUUUM脱退という内的要因と、多くの芸能人のYouTube参入という外的要因の両方が考えられます。

「1再生あたりの広告収入」の下落は、YouTube側の規約の変更など、プラットフォーム側の要因が考えられます。いずれにしても売上減少はUUUMにとっては厳しい状況です。

 なぜなら、UUUMの「コスト構造」と「事業のライフサイクル」からいって、売上拡大は絶対に必要だからです。

 まず「コスト構造」から説明します。YouTubeから受領するアドセンス収益のうち、ユーチューバーへの配分は80%という契約となっています。そのため、UUUMの粗利益率はわずか20%しかないのです。

 もちろん、それ以外の収益(企業とのタイアップ案件やグッズ販売など)があるので、会社全体の粗利益率は20%以上ですが、実入りはあまり良くないビジネスといえるでしょう。

 UUUMのビジネスモデルは、芸能事務所によく例えられますが、芸能事務所とUUUMには、決定的な違いがあります。

 第一に、芸能事務所はテレビ局と芸能人の間に入っててギャラ交渉ができますが、YouTubeのアドセンス収益はほぼ自動的に決められてしまい、交渉の余地はないという点です。

 第二に、ユーチューバーのメインの収入であるアドセンス収益は、別にUUUMに所属していなくても受けとることができるという点です。これに対して芸能人の仕事は、ある程度業界内にコネクションがないと、直接仕事をもらうことは困難なので、芸能事務所の存在価値は大きいのです。こう考えると、UUUMは芸能事務所と性質がやや異なります。

 高い付加価値が出せないビジネスは、少ない粗利益しか取れません。だから、卸売業や代理店ビジネスと同様、UUUMも売上規模の拡大が、経営上の最重要事項なのです。

 しかもUUUMはまだベンチャー企業です。すなわち、「事業のライフサイクル」でいうところの、導入期~成長期というステージです。

 多くの投資家が、将来の成長見込みで株を買っていたにもにもかかわらず、その売上高が下落してしまったのだから、株価が下がるのも無理はありません。

 しかしながら、第2四半期までの業績だけで結論づけることはできません。しかも、第2四半期は、動画再生回数が落ちやすいという傾向もありますので、第3四半期~第4四半期にかけて盛り返せる可能性は残っています。

UUUMはどうなる? 突破口は「これ」だ!

 YouTubeという動画メディア自体は依然として強力な存在です。UUUMの経営環境としては、決して悪いわけではありません。

「人が集まる所にお金が集まる」という経済メカニズム通り、人々がテレビの代わりにYouTubeを観るようになったことで、スポンサー企業はこれまでテレビに投じていた広告費を、徐々にYouTubeへシフトしています。

 YouTubeに多くの広告収入が集まることで、UUUMやユーチューバーが潤う、というトレンドは今後も続いていくでしょう。

 ただ、キングコングの梶原雄太氏、オリエンタルラジオの中田敦彦氏らを筆頭に、テレビを舞台に活躍していた芸能人が、徐々にYouTubeに参入してきています。視聴者が集まり、お金も集まっていますので、芸能人のYouTube参入は、当然といえば当然の流れです。

 UUUMに所属しない芸能人ユーチューバーの台頭は、UUUMの業績に少なからず影響を与えるでしょう。UUUMにとっては、ここが正念場です。

 人気ユーチューバーを多数抱えているという強みを活かす上では、少なくとも、ユーチューバーの離反は最小限に食い止めなければいけません。

 そのためには、個人のユーチューバーにはできない、付加価値の高い業務(大型の企業案件の獲得など)で成果を出し、アドセンス収益の20%を上回るベネフィットを、ユーチューバー側に与え続けることが求められます。まさに、芸能事務所のような機能が、強く求められる状況にあるのではないでしょうか。

川口宏之(かわぐち・ひろゆき)

公認会計士

1975年栃木県生まれ。2000年より監査法人トーマツにて、主に上場企業の会計監査業務に従事。2006年、みずほ証券にて、主に新規上場における引受審査業務に従事する。2008年、これまでの経験を活かし、ITベンチャー企業の取締役兼CFOに就任。ベンチャーキャピタルからの資金調達、株式交換による企業買収などで成果を上げた。現在は会計コンサルとしてIFRS導入コンサルティング業務や決算支援業務、各種研修・セミナーの講師等を担当する。「監査法人・証券会社・ベンチャー企業・会計コンサル」。4つの視点で会計に携わった数少ない公認会計士。研修・セミナーでは「生きた数字」を感じてほしいという思いから、「実在企業の財務諸表を分析する」コーナーを設け、大きな支持を得ている。指導実績は1万人を超え、受講満足度は5段階評価で平均4.8を誇る。

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