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キープか断捨離か 予測不能のコロナ相場、どう臨む?

NIKKEI STYLE のロゴ NIKKEI STYLE 2020/06/08 11:00
写真はイメージ=PIXTA © NIKKEI STYLE 写真はイメージ=PIXTA

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で世界経済は大きな打撃を受けています。足元では日経平均株価は回復基調にありますが、それでも含み損を抱えたままの個人投資家は少なくないでしょう。資産運用に詳しいファイナンシャルプランナーの中里邦宏さんは「持っておくと決めたものは目の前の値動きに一喜一憂せず持ち続け、断捨離すべきものはする」という投資に臨む心構えを提案します。

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コロナの影響を受けて株式市場が下落して以降、筆者が手掛ける個人相談で「これまでプラスだった資産が一気にマイナスになり不安だ。売却すべきか?」といった声を聞くようになりました。

2017年の個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)の加入対象拡大、18年の積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)のスタートに背中を押され、ここ2~3年のうちに資産運用を始めた人も少なくありません。そういった人は特に、これまで資産の大きなマイナス額を目にしたことがないため、先の見えない不安が募るようです。

では、そういった人は、今後どう運用を考えていけばよいのでしょうか?

■積み立て型の投信、平均購入価格は低下

まず、iDeCoやつみたてNISAなどで投資信託を一定金額で定期的に購入する積み立て投資で運用をしている人には、この時期にあらためて思い出してほしいことがあります。それは、相場が下落しているときほど安くたくさん購入できているということです。つまり、自分の運用資産の「平均購入価格が下げられている」といえます。安く購入したものを高く売却するほど利益が出るため、平均購入価格が下がることは有利になるわけです。

例として、積み立て投資を始めた後、大きく相場が下落したケースを見てみましょう。

© NIKKEI STYLE

図は07年6月から運用対象を日経平均株価として、毎月1万円ずつ積み立て投資を始めた場合です。積み立て投資を始めた後、世界金融危機の影響で日経平均株価(赤線)が大きく下落し、資産残高が積立総額(元本)を下回り続けます。つまりこの時期は「安く購入できた時期」で、平均購入価格(青線)の引き下げに貢献できています。このことは、どういった効果をもたらすでしょうか?

■低い株価水準でも資産をプラスにできる

よく、購入した価格以上に株価が上がらないと利益が出ないと考える人に出会います。しかし、積み立て開始時の株価水準に回復したにすぎない時期(B)であっても、積立総額93万円に対して資産残高は156万円。67%のプラスです。

また、(B)の時期ほど株価が回復せずとも、平均購入価格を株価が上回り始める図の(A)の時期では、資産はマイナスを脱してプラスになり始めます。つまり、平均購入価格を低く抑えられていれば、低い株価水準でも資産をプラスにすることができるのです。

このため、どれだけ平均購入価格を下げられるかが運用の肝です。資産残高がマイナスの時期は、まさに平均購入価格を下げることができている最中なのです。そうであれば、資産のマイナスに悲観的になる必要はなく、せっかくのこの時期に相場から去らないことこそが重要といえます。

■リスクへの耐性を判断材料に

では次に、積み立てではなく、まとまった資金を運用していた場合はどうでしょうか?投資信託の一括購入や株式の個別銘柄などで運用している人です。こうした一括購入では購入価格を軸とし、そこから上がったか下がったかの判断となってしまいます。

そこで、売却すべきかどうかの判断を下すには、改めてそもそも自分はどのような目的でどれくらいの期間の運用を予定していたのか、自分はどの程度の資産残高の上げ下げ(リスク)に耐えられるのかを判断材料にする必要があります。

■注目業種の銘柄はすでに値上がり

一方、「今は買ったほうがいいのか?」「今こそ資産運用の始めどきか?」といった質問も少なくありません。これに対しても基本的な答えは、前述までと同じです。

また、今後のいわゆる「アフター・コロナ」の世界で買っておくべき業種の質問を受けることもあります。例えば「テレワークの急激な広まりで関連業種は値上がりする?」などです。しかし、誰でもが思いつくような注目業種は往々にしてすでに値上がりしていることもあります。例えば、自粛期間中のリモートツールなどを提供していたマイクロソフト社など米国のIT関連企業が多く上場する「ナスダック総合指数」は、すでにそうした期待を織り込んで、年始の価格を優に超えてきています。

■運用資産の「棚卸し」をする時期

将来を予測するのもまた資産運用の醍醐味ですが、未来の相場がどうなるのかは誰であっても完璧に予測できません。そうであれば、どう相場が動いても対応できるような準備を整えておくことこそが大切です。

それには、あらかじめどうなったときに運用の出口(売却)とするのかを想定しておくのです。しかも、上がった場合だけを想定せず、どれくらい下がったら損切りして売却するか、あるいは回復まで待てる期間があるのかを想定しておくべきです。

積み立て投資の場合は下がったときにも運用を続けることが大切ですが、一括購入の運用ではよりシビアに考える必要があります。

全世界的なコロナの影響を受けて、今後、誰も見たことがない景色を見ていくことになります。そういった時期だからこそ、あらためて自分の運用資産の棚卸しを行ない、持っておくと決めたものは目の前の値動きに一喜一憂せず持ち続け、断捨離すべきものはしておく時期といえるでしょう。

中里邦宏

© NIKKEI STYLE ファイナンシャルプランナー(CFP)、マネーディアセオリー株式会社取締役副社長。上場メーカーで設計担当後2004年にFP事務所を開業、16年に法人設立。顧客が納得するまでシミュレーションを繰り返すライフプラン相談を中心に、資産運用教育、ライフプランツールのプランニング、ロジック提供なども手がける。日本証券アナリスト協会検定会員、1級FP技能士、DCプランナー1級。

緊急事態宣言が解除され、「ニューノーマル」「新常態」とも呼ばれる新しい生活様式が広がりつつあります。コロナで一変した家計の収入や支出、それに伴うお金のやりくりをどうすればよいかも喫緊の課題です。連載「コロナの先の家計シナリオ」は専門家がコロナ後のお金にまつわる動向を先読みし、ヒントを与えます。

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