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マッチングアプリの「マッチ・グループ」、コロナがもたらす隠れた商機

The Motley Fool Japan のロゴ The Motley Fool Japan 2020/04/07 10:30 大竹典
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マッチ・グループ(NASDAQ:MTCH)は、Tinderなどのマッチングアプリを世界で展開するIT企業です。

日本で最も会員数の多いマッチングアプリPairsもマッチ・グループの傘下。

世界各国でマッチングアプリのデファクトスタンダード(事実上の標準)を握りつつあり、新規上場(IPO)以降の売上高のCAGR(平均成長率)は20%、営業利益のそれは28%と高成長を続けます。

新型コロナウイルスのパンデミックの悪影響を短期的に受けそうですが、中期的には業績の追い風になる兆しも出ています。

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2015年のIPO以来の売上高の年間平均成長率(CAGR)は20%です。

参考:Investor Presentation 4Q2019

出会いの場はオンラインがトップ

マッチングアプリというと、40歳以上の方は「怪しい出会い系アプリ」と感じる人が多いかもしれません。

しかし、若い人の間ではマッチングアプリで知り合うことはすでに普通になっています。

特に米国では顕著で、米スタンフォード大学の研究”How Couples Meet and Stay Together 2017″によれば、すでに米国では男女の出会いの場のトップはオンラインです。

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参考:How Couples Meet and Stay Together 2017

生物誕生以来続いてきた男女の出会いは、まさに過去最大の変化の渦中にあり、その変化の中心にいる企業には大きなビジネスチャンスがあるように思えます。

マッチ・グループのマッチングアプリの利用者は世界で約1000万人。そのうち、およそ600万人をTinderが占めています。

一般にマッチングアプリは利用者数が多い方がマッチングしやすくなるため、大手に利用者が集約される傾向にあります。

2019年10月~12月にはTinder利用者が北米で前年同期比9%増え、北米以外では30%、世界全体では19%伸びています。

日本では、Pairsの2019年のダウンロードが200万弱と前年比44%増。

Tinderも150万弱と、53%増でした。

同業買収で時価総額2兆円の巨大企業に

マッチ・グループは、同業の買収により一気にその国の市場の主導権を握る戦略で、190か国40言語以上に展開する巨大マッチングアプリ企業になっています。

時価総額はおよそ2兆円。

2019年5月には「日本・台湾」「インド」「韓国・東南アジア」の3エリアに統括責任者を置き「アジアの4億人のシングル市場」で成長を目指すと表明しています。

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マッチ・グループが展開するアプリ。

参考:マッチ・グループ公式ページより

男性から女性にメッセージを送る、「いいね」する、自分が「いいね」した相手以外からは自分が見られないシークレットモードにする、海外の利用者とやり取りできるようにする、などさまざまな課金オプションから収益を得ています。

2019年10~12月期の売上高は5.47億ドル。

その半分を北米、残り半分を他の地域から稼ぎ、収益源は地域的に分散されています。

営業利益は安定成長期に入っていて、前年同期比19%増の1.8億ドルでした。

フリーキャッシュフローは2019年の年間ベースで6.2億ドルの黒字と、現金のインフローも潤沢です。

S&P500採用の可能性

ただし買収を繰り返しているため、負債の額が資本の4倍もあり、バランスシートは少し見た目が悪いです。

PLは綺麗でBSは不格好という、典型的なM&A成長型企業の財務状況です。

返済原資はPLでしっかり稼いでいるので、問題は生じていません。

利用者数が最も重要な参入障壁であるというマッチングアプリの性質上、М&Aで「利用者を買う」というのは正統な戦略と言えます。

マッチ・グループは現在インターネット企業IAC (NASDAQ:IAC)傘下です。

2020年の4月~5月には独立する予定と親子両社が発表しています(2019年12月19日)。

81%の株式を握るIACが、IAC株主にマッチ株を割り当てるとのことです。

これにより期待されるのはマッチ・グループのS&P500への採用。

採用基準は「時価総額53億ドル以上」「浮動株比率が50%以上」「4半期連続で黒字」の3つですので、いずれもクリアしています。

もし採用されれば、インデックス買いの対象になるなど、需給面の改善に期待が持てます。

コロナは追い風か

2015年に13.5ドルの初値で新規上場(IPO)したマッチ・グループは、一時90ドル台まで上昇し、コロナショックで足元では60ドル台まで下落しています。

しかし、このパンデミックが同社にとって悪影響ばかりかというと、そうではありません。 

「パンデミックは、出会いやつながりの重要性を人々に深く再認識させた」

マッチ・グループのシャー・デュベイ最高経営責任者(CEO)は、3月31日に発表した新型コロナウイルスの影響に関する声明でこう強調しました。

この声明では、いくつか興味深いことが明かされています。

新規の入会者数の変化と、既存会員のやり取りの頻度の変化、そして新たなサービスについてです。

パンデミックの負の影響を受けているのは新規入会者数で、感染拡大が深刻なエリア、そして30歳以上の人の入会が顕著に減っています。

欧州ではパンデミック以前に比べ、入会者が5%程度減。

イタリアやスペインに絞ると「もっと大きな減少」とのことです。

米国でも、感染が広がっているニューヨークでは「2ケタ%減」としています。

同じ米国でもカリフォルニアやワシントンでは回復しているようで、エリアにおける感染度合いが入会者に深く影響しているようです。

入会者の減少により、マッチ・グループの2020年1月~3月(第1四半期)の業績は、同社が示した予測レンジの「下限付近になりそう」と述べています。

売上高で5億4500万ドル(前年同期比17%増)、調整EBITDAで1億7000万ドル(同10%増)です。

また、2020年4月~6月期(第2四半期)については、第1四半期比での増収は難しく、ただ一方で前年同期比では「今のところ増収を確保できるものと信じている」としています。

興味深いのは、もう一つのファクトです。

Tinderの既存会員のやり取りは、どの地域でも10~30%と大幅に伸びているとのことです。

またHingeにおいても、メッセージが30%も増加しています。

まさに「人とのつながりに対する深い欲求」(デュベイCEO)が浮き彫りになったのです。

余談ですが、Tinder利用者の中では、世界中の利用者と話せる「パスポート機能」を使っている人が多いようで「中には感染拡大が深刻な地域の人に耳を傾け、感情的なサポートをしている人もいることが分かった」といいます。

マッチ・グループはこの事実を目の当たりにし、パスポート機能を無料開放しました。

ビジネスの領域では、在宅ワークが増えてテレビ会議サービスのZoom Video Communications株が一時急騰しましたが、プライベートの領域でもテクノロジーによるつながりの需要が高まっているのです。

マッチ・グループは、パンデミックを機会と考え、様々な動画コミュニケーションサービスを矢継ぎ早に導入しています。

Hingeにはビデオデートやその予定設定ができる機能を追加。

その他のアプリにもビデオチャットなどの動画サービスを投入し、4月には海外の人とも動画コミュニケーションできるようにする予定です。

同社は「ライブビデオの利用状況は想定を大きく上回っている」としています。

デュベイCEOは、3月31日の声明の最後を、やや感傷的な言葉で締めくくっています。

「世界が正常に戻るとき――その日は必ず来る――私たちは、出会いとつながり、そして愛をはぐくむことを助けるために、存在しつづけているに違いない」

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免責事項と開示事項 記事の作者、大竹典は記事内で言及されている銘柄を保有してはいません。記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスではありません。

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