古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

どんなに隠しても金持ちの海外資産が国税にバレる新制度の中身とは?

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2018/02/18 15:42

 ’17年11月の「パラダイス文書」や’16年の「パナマ文書」など、富裕層の租税回避スキームを潰そうと各国の税務当局が躍起となるなか、画期的な制度が導入された。海外に口座を持つ中間層にも影響する制度の概要とは?

◆もはや資産フライトはできなくなった!

「パラダイス文書」で世界の富裕層たちの巨額な「税金逃れ」の実態が明るみになるなか、各国は連携して租税回避に対策を講じつつある。そして、その国際的な包囲網は、上位数%の資産家以外にも広がりつつあるのだ。

 OECD(経済協力開発機構)が策定したCRS(共通報告基準)の導入である。’19年9月までにタックスヘイブンを含む世界の大半の国・地域が協力し、非居住者が保有する預金や証券、投資ファンドなどの金融口座情報を自動的に交換できるようにする試み。日本も参加する予定で、資産規模にかかわらず、各国の税務当局によって情報が共有されることになる。

 国際税務に詳しい公認会計士で税理士の高鳥拓也氏は、CRSについてこう説明する。

「日本の国税庁はまず’18年9月末に、CRS適用国のうち当局間合意がある64の国・地域に日本居住者が保有する金融口座のうち、’16年末の残高が1億円超の個人口座と、’17年以降に新規開設された口座について、’17年分の情報を入手することになります。さらに、’19年9月末からは、’16年末の口座残高が1億円以下の個人口座に関しても、国税庁に提供されるようになる」

 情報共有の形態について、高鳥氏は「OECDのガイドラインで明らかになっており、データ交換で日本に入ってきた情報は国税庁のサーバー上に置かれ、税務署はそこにアクセスして情報を入手することが予想されます」と話す。

 OECDでは国際的な課税逃れを議論する専門の委員会もある。

 一方、『元国税調査官が暴く 税務署の裏側』などの著書がある元国税庁職員で税理士の松嶋洋氏は、このCRSが各国の税務当局にとって大きな武器になると指摘する。

「現状、ある人物の海外預金情報を入手するには原則、その国の税務当局を介して現地の金融機関に情報提供を依頼する方法しかなく、国税にとって迅速な税務調査は難しい。CRSにより自動的に情報が共有されるのであれば、これほど便利なことはない」

 そんなCRSの運用まであと1年足らずとなるなか、前出の高鳥氏によると“CRSパニック”ともいえる状況がすでに発生しているという。

◆もはや資産フライトはできなくなる!新制度(CRS)開始の恐怖

「最近、CRS適用国の各銀行から日本在住の口座保有者宛てに居住国の確認資料としてマイナンバーなどの提出を要請するレターが送付されているようです。現在、日本の銀行は、口座とマイナンバーの紐付けを行なっていませんが、海外の銀行が先行してマイナンバー提供を求めるため、このレターを受け取って、慌てて税理士に相談に来る人が増えています」

 ただ、『マネーロンダリング』などの著書のある作家の橘玲氏によると、一部の富裕層の間では’14年にCRSの骨子が公表された直後から、対策が講じられているようだ。

「数億円レベルの資産を租税回避目的で保有し、かつまとまった運用益がある富裕層に対しては、海外のプライベートバンクはすでに法人化による租税回避スキームを勧めているようです。EUとスイスでは今年からすでに非居住者の銀行口座情報の自動交換がはじまっていますが、巨額脱税などは今のところ発覚していない。CRSが導入されても同様でしょう。さらに言うと、台湾やタイ、カンボジアなどはCRSに参加しないので、それらの国々の金融機関については情報共有の対象外。資産を移せばバレないし、それらの国の居住者になってしまえば、CRSに情報を共有されることを回避できる」

 日本では5年ほど前に資産フライトがブームとなり、まとまった資産を持つ高齢者から、普通のOLなど中間層まで香港やシンガポールなどに“口座開設詣で”に出かけた。そんな、にわか資産フライヤーたちは、CRSにどう対処すべきなのか。

「残高が数千万円以下で、しかも額が増えていない口座に関しては、追及しても税金が取れないため、おそらく関心は持たれないのでは」(橘氏)

 しかし、前出の高鳥氏によれば、およそコスパに見合わないような税務調査が入った例もあるという。

「近年、オーストラリアに金融資産を持つ日本人のもとに税務署から『お尋ね』が来たり税務調査が入ったりする例が増えています。これは、数千万円程度の資産に対しても同様です」

 別の税理士によると、オーストラリア人富裕層の間で、スキーのできるニセコに別荘を持つのが流行したことで、同国の税務当局が日本の国税に彼らの資産についての情報提供を求め、その見返りとして同国内の日本人の金融資産情報を国税に提供したためだという。

◆CRSで海外だけでなく、国内の所得隠しもバレる

 さらに「CRSは国内資産の徴税強化にも利用されるだろう」と指摘するのは、前出の松嶋氏。

「’14年から、5000万円を超える海外資産がある人は、国外財産調書の申告が義務付けられました。CRSを利用すれば、申告すべきなのに申告していない者を効率的にリストアップすることもできます。また現在、100万円以上の現金を国外に持ち出す際には申告義務がありますが、未申告で持ち出して海外で運用している人も露見するでしょう。その他、多額の海外預金がある者に、お金の出処についての『お尋ね』を送れば、国内での所得隠しを発見することにも繋がります。このため、相続などで未申告の海外資産がある人や、海外預金の原資となった所得などについて申告していない人は、速やかに期限後申告をするべきです。そうすれば、加算税は原則、追加で納付税額の約5%で済みます」

 これからは正直が一番ということ!?

ハーバービジネスオンライン: 写真/Shutterstock.com © HARBOR BUSINESS Online 提供 写真/Shutterstock.com

《CRS(共通報告基準)の概要》

国税庁はデータベースをいつでも閲覧可能

●交換される海外の銀行に口座を持つ個人・法人の情報

○氏名(名称)

○住所(所在地)

○居住地国

○納税者番号(マイナンバーではない)

○口座残高

○利子・配当等の年間受取総額等

《CRS加盟国一覧(全101の国と地域)》

○2017年までに交換(2016年分から報告)1回目の情報交換(’18年9月)

 ’16年12月末の口座残高が1億円以上ある個人口座

アングィラ、アルゼンチン、バルバドス、バミューダ諸島、ベルギー、英領ヴァージン諸島、ブルガリア、ケイマン諸島、コロンビア、クロアチア、キュラソー島、キプロス、チェコ、デンマーク、ドミニカ、エストニア、フェロー諸島、フィンランド、フランス、ドイツ、ジブラルタル、ギリシャ、グリーンランド、ガーンジー、ハンガリー、アイスランド、インド、アイルランド、マン島、イタリア、ジャージー島、韓国、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、メキシコ、モンセラト島、オランダ、ニウエ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、サンマリノ、セイシェル、スロバキア共和国、スロヴェニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、トリニダード・トバゴ、タークス・カイコス諸島、イギリス(55の国と地域)

○2018年までに交換(2017年分から報告)2回目の情報交換(’19年9月)

 ’16年12月末の口座残高が1億円以下のすべての個人口座

アルバニア、アンドラ、アンチグアバーブーダ、アルーバ、オーストラリア、オーストリア、バハマ、バーレーン、ベリーズ、ブラジル、ブルネイ・ダルサラーム、カナダ、チリ、中国、クック諸島、コスタリカ、ガーナ、グレナダ、香港、インドネシア、イスラエル、日本、クウェート、レバノン、マーシャル諸島、マカオ、マレーシア、モーリシャス、モナコ、ナウル、ニュージーランド、パナマ、カタール、ロシア、セントキッツ・ネイビス連邦、サモア、セントルシア、セントヴィンセント・グレナディーン、サウジアラビア、シンガポール、シント・マールテン、スイス、トルコ、アラブ首長国連邦、ウルグアイ、バヌアツ(46の国と地域)

 ちなみにアメリカは入ってない!!

<取材・文/奥窪優木>

HARBOR BUSINESS Onlineの関連リンク

HARBOR BUSINESS Online
HARBOR BUSINESS Online
image beaconimage beaconimage beacon