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アメリカに続き日本もHuawei、ZTE排除の方針。その懸念の真偽と日本企業も被る影響

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2018/12/20 08:33

 アメリカが中国の華為技術(Huawei=ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)などの製品や役務を政府調達などから排除する強硬策に出たのを受けて、日本政府も事実上、2社を排除する方針を打ち出した。この決定にはどのような背景があるのか、妥当なのかどうか、どのような影響が生じるのだろうか。

◆米中に挟まれた日本

 貿易問題や通信分野の覇権争いで対立する米中。米国政府はファーウェイやZTEを名指しで政府調達から排除した。さらに、同盟国に中国通信大手の排除を要請した模様だ。そして、日本政府は「IT 調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ(以下、IT調達申合わせ)」を公表した。

 そもそも、日本政府はサイバーセキュリティにまったく無頓着なわけではなく、従来から中国製品を警戒していた。それでも敢えてIT調達申合せを公表したのは、米国政府の要請に呼応して同調姿勢を明確化する狙いなのだろう。

 ただ、日中関係が改善傾向にある中で、日本政府としては中国政府を過度に刺激したくないはずだ。日本政府はIT調達申合せについて「防護すべき情報システム、機器、役務などの調達に関する方針や手続きを定め、特定の企業や機器の排除が目的ではない」と説明し、名指しは避けて中国政府に配慮した格好だ。

 IT調達申合せの公表前には複数の報道機関が日本政府による中国通信大手の排除を報じ、それに中国政府は強い表現で反発した。しかし、IT調達申合せの内容を公表後は不快感こそ示したが、発言は抑制的な表現にとどめた。名指しで排除されない限り、中国政府としては強い表現での反発は難しく、この点は日本政府の狙い通りだ。

 IT調達申合せの内容は米国に同調姿勢を示し、また中国には配慮した結果と言える。これが日本政府の落としどころだが、米中に挟まれた複雑な立場が浮き彫りになった。

◆携帯電話大手も中国勢排除

 IT調達申合せは特定企業の名指しこそ避けたが、実際にはファーウェイやZTEの排除を念頭に置いているのは言うまでもない。事実、IT調達申合せの公表後に一部の公的機関では公私ともに中国通信大手を避けるよう指示があったようだ。日本政府機関では情報システム、機器、役務の調達先から中国通信大手は外れるが、従来から中国製品には警戒しているため、さほど大きな変化はないだろう。

 日本政府の方針を受けて、国内の大手携帯電話事業者も中国通信大手を排除すると報じられた。ただ、誤解されやすいのだが、政府機関内ではスマートフォンなどの端末も排除の対象となるが、大手携帯電話事業者では端末ではなく、主に基地局側の通信設備が排除の対象となるのだ。

 NTTドコモは従来から中国通信大手の通信設備を採用していない。ある関係者によると、通信設備で採用するとコアな部分を教えることになり、端末を採用するのとはわけが違うという。また、KDDIは主要な通信設備で中国通信大手の採用はなく、実態としてほぼ採用していないに等しい。各社とも調達方針を定めているが、NTTドコモやKDDIには従来の調達方針でも中国通信大手は入り込めていない。また、新規参入する楽天モバイルネットワークはIT調達申合せの公表前に主な通信設備の調達先を公開していたが、中国通信大手は含まれない。日本政府の決定を受けて大手携帯電話事業者の対応も大きく伝えられたが、元から不採用の各社は従来通りと考えてよいだろう。

 一方、ソフトバンクと同系列のWireless City PlanningはファーウェイやZTEの通信設備を広範に採用する。しかし、5Gでは採用しない方針を固め、4Gでも順次排除すると伝えられた。既存の通信設備もいずれは交換が必要となり、そのタイミングで他社製に交換するのではないかと推測している。ソフトバンクは方針転換となるが、重要なインフラを担う企業として、日本政府の方針には従うしかないだろう。また、ソフトバンクは親会社のソフトバンクグループが米国の携帯電話事業者のSprintを所有する。そのため、米国政府が中国通信大手の排除を要請した可能性は高い。米国で円滑に事業を運営するためにも、米国政府の意向に沿う必要があるはずだ。

 総務省は5G向け周波数の割当に関する指針を決定し、IT調達申合せに留意するよう文言を加えた。事実上、総務省としても5Gの通信機器からファーウェイやZTEの排除を求めたと解釈できる。

 ただ、ZTEはともかくファーウェイは技術力が高い。5Gの導入初期の周波数は3.5GHz帯が世界的な主流と見込まれるが、3.5GHz帯の5Gに対応した商用機器の開発ではファーウェイが最も進んでいると聞いたこともある。そして、中国通信大手であれば北欧などの競合他社よりコストを抑えられる。NTTドコモとKDDIは5Gでも従来通り中国通信大手を採用する計画はなかったと思われるが、ソフトバンク系列は5Gに向けた計画の見直しを強いられそうだ。また、一連の動きを踏まえて、ほかの民間企業でも中国通信大手を遠ざける動きが広がる可能性がある。

◆懸念は本当なのか?

ハーバービジネスオンライン: 中国にあるファーウェイの小売店(遼寧省瀋陽市) © HARBOR BUSINESS Online 提供 中国にあるファーウェイの小売店(遼寧省瀋陽市)

 米国政府は中国通信大手には情報漏洩など安全上の問題が存在すると懸念している。

 しかし、中国通信大手の通信設備は多くの先進国の大手携帯電話事業者で採用実績があり、安全上の問題が存在すれば、すぐに追放されて国際市場から姿を消しているのではないだろうか。

 新興国の技術力が低い携帯電話事業者であれば、設計や運用はファーウェイやZTEなどのベンダに丸投げの場合も多いが、日本の大手携帯電話事業者はそうではない。先進国の高い技術力を持つ大手携帯電話事業者の高度なセキュリティを容易に潜り抜けられるとも考えにくい。

また、一部報道で「余計なものが見つかった」などと報じられたが、端末に関しては第三者が何度も分解するなど調査しており、こちらも安全上の問題を示す明確な根拠は出ていない。

 一方で、中国の反間諜法や国家情報法などでは企業や個人を含む中国人に情報収集などで必要な協力を義務付けており、これを根拠に中国企業を忌避する判断もある。これはひとつの考え方として尊重されるべきではある。また、予防策として不安があれば避けるという選択肢もあるだろう。

 中国通信大手を排除する動きは日米のみならず、ほかの米国の同盟国でも見られる。5Gの本格化を控えて米中の通信分野の覇権争いが激化する中で、この動きは中国を封じ込める政治的な色合いが濃い。

 その背景には、米国は中国の覇権奪取に相当な危機感があることが考えられる。外交上の観点から同盟国との連携強化は重要で、国家安全保障は決して無視できない。政府調達で外国製品に注意するのは多くの国でそうであり、また重要インフラに対峙する陣営を入れたくないのも当然だ。対米従属な印象も否めないが、日本政府の決定には一定の理解は示したい。

◆日本企業への影響も必至

 中国通信大手は国際的に事業を手掛ける企業で、ZTEが受けたような米国政府の制裁を受けない限り、日米やその同盟国で排除が拡大してもすぐに経営が厳しくなることはないだろう。しかし、通信設備や端末の製造規模が縮小する可能性は否定できない。

 そして、その結果、日本企業に影響も波及するのは必至だ。というのも、通信設備や端末には多くの日本企業の部品が使われているからだ。中国通信大手を締め出した結果、日本企業を含めた中国通信大手の取引先にも影響が生じる可能性は認識しておきたい。

<取材・文・撮影/田村和輝>

たむらかずてる●国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報に精通。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ

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