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アルゼンチンが経済破綻寸前!? 危機に瀕するマクリ政権

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2019/03/19 15:30 ハーバービジネスオンライン
ブエノスアイレスの町並み。Image by julian zapata from Pixabay © FUSOSHA Publishing Inc. 提供 ブエノスアイレスの町並み。Image by julian zapata from Pixabay

 3月に入って米誌「フォーブス(Forbes)」はアルゼンチンが経済破綻する寸前にあることを明らかにした。その内容は3月6日、アルゼンチンの主要各紙(電子版)が報じた。(参照:「iProfesional」、「Ambito」、「Perfil」)

◆負債はGDPの77.4%、3年で3198社が閉鎖

 同誌によると、アルゼンチンは昨年国際通貨基金(IMF)から500億ドル(5兆5000億円)の融資枠を確保し、その3か月後には更に70億ドル(7700億ドル)が追加された。にも拘わらず、アルゼンチン通貨ペソは対ドル50%の下落、数百億ドルにのぼる資金の流出と、40.5%のインフレで昨年は終幕したことを取り上げた。更に、負債はGDPの77.4%を占め、2015年から2017年までに3198社が閉鎖したことも指摘している。

 更に同誌はコカ・コーラ、アビアンカ航空、スーパーカルフールなどが危機予防処置法(PPC)の適用を決めたことも報じている。この処置法というのは、企業の規模によってPPCの適用できる条件は異なっているが、不況による過剰従業員を企業の資金負担を軽減させるべく通常の50%の賠償金で解雇できるというものだ。この申請から適用が昨年は108件で、一昨年を25件上回ったという。

 元経済相リカルド・イポリト・ロペス・ムルフィーは早急に財政支出の改善が必要だと指摘している。財政赤字を早急に改善しないことには投資が期待できないとしている。更に同相は「北欧レベルの税金を徴収するにもかかわらず、公共サービスはカリブ海の国ハイチのレベルだ」と述べて、それが輸出競争力を失う要因にもなっていると同誌の中で指摘した。(参照:「フォーブス(Forbes)」)

◆止まらぬ経済悪化。インフレは以前進行中

 フォーブスが取り上げたアルゼンチン経済指標のどれを見ても経済が短期・中期に改善されることは不可能である。寧ろ、経済は悪化の方向に向かっているというのが現状だ。今年の目標インフレを政府は23%としているが、昨年40.5%であったのが、1年で20%もインフレ率を減少させることなど不可能である。実際、2月の時点で今年のインフレは28.5%を予測しているのである。これは当初の目標から既に5%上回っている。(参照:「La Nacion」)

 しかも、ペソの対ドルレートは依然下落傾向にあり、今年は1ペソ48ドルを見込んでいるが、2020年は55.5ドルを予測している。これもインフレを高める要因である。だから、昨年を下回るインフレに持ってくることは至難である。通貨ペソが弱いままだと投資家にとってアルゼンチンへの投資の魅力も半減する。

◆停滞する経済活動。自動車業界は7000人が一時帰休

 不況の影響から生産市場では大半の企業が通常の生産能力の半分しか稼働させていないという状態が続いているのである。

 例えば、昨年12月に企業の生産設備は56.6%しか稼働していなかったというのが判明している。それは2002年以来、最悪の生産稼働率だという。(参照:「Political Argentina」)

 それを反映しているのが自動車業界だ。この業界では7000人の従業員が一時帰休しているというのである。

 例えば、プジョーは3月は1000人が一時帰休し、500人は勤務に就いているが自動車の生産ラインにいるのではなく、2020年から新車を生産する新しい生産ラインの建設に従事しているという。ホンダも3月は900人が一時帰休。ルノーは水曜から金曜を生産ストップ、その影響を受けている1500人に対して70%の給与を支給しているという。フィアットは2000人を一時帰休。GMは他社に先駆けて1月に一時帰休させていた。フォードも同様の対応をするそうであるが、その詳細が明らかにされていない。フォルクスワーゲンは昨年発表した6億5000万ドル(715億円)の投資は実施することを表明し、生産の90%は輸出に向けるとしている。トヨタも輸出の進展を図ることにしているという。昨年は毎月3000台のハイラックスを販売していたが、今年は2000台にペースが落ちているそうだ。市場の不況を配慮すると、この販売台数は悪くないトヨタでは見ているそうだ。(参照:「iProfesional」)

◆町中のキオスクも減少

 また市場の景気を見るのに、例えば市街に存在しているキオスクの数を参考にすることもできる。クリスチーナ・フェルナンデス前大統領が政権を去った2015年には全国にキオスクは12万軒存在していた。マクリ大統領になってから現在まで2万8000軒が閉店。これから先半年でさらに1万軒が閉店すると予測されている。不況で、市民は新聞や雑貨類も買わなくなっているのである。(参照:「Political Argentina」)

◆マクリ大統領には試練の時期

 今年は大統領選挙の年である。再選を目指すマクリ大統領にとって事態は容易ではない。それ故に、経済政策において回復に必要な本来取るべき厳しい対処を票の欲しさから控える可能性もある。

 特に、インフレを下降させることと、財政支出の削減が早急に必要である。しかし、アルゼンチンはラテンアメリカで労働組合の力が最も強い国である。インフレが上昇すれば、それにスライドして昇給を要求して来るのが組合側である。それを政府は無視するようになると彼らは容易にストを敢行する傾向にある。しかも彼らを無視すれば大統領になるための票が集まらない。全てが悪循環になっているのである。

 だから、フォーブスが指摘しているようにアルゼンチンが経済破綻する可能性がないとは言えないのである。

<文/白石和幸>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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