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ラーメン店も回る「ミシュラン調査員」の真実 その評価基準や調査方法を知っていますか

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/12/17 07:15 井手隊長
今年も『ミシュランガイド東京』が発売された(撮影:今井 康一) © 東洋経済オンライン 今年も『ミシュランガイド東京』が発売された(撮影:今井 康一)

 おいしい飲食店・レストランなどを紹介する赤い表紙のガイドブック。フランスに本社を置くタイヤメーカーのミシュランの日本法人である日本ミシュランタイヤが発行する、日本のミシュランガイドの最新版『ミシュランガイド東京2018』が12月1日に発売された。

 もともとは長旅に不安のあるドライバーに向けて、ドライブに欠かせないさまざまな情報をまとめた小さな冊子として、ミシュランが1900年に配り始めたのが始まりとされている。アジア初の『ミシュランガイド東京』は今年で11年目だ。ここで「一つ星」「二つ星」「三つ星」、あるいは星こそつかないがお薦めのお店の称号である「ビブグルマン」がつけば、日本のみならず世界からも名店と認識される。

ミシュランからの「お墨付き」を得ているラーメン店

 そんなミシュランガイド日本版にラーメン店が掲載されているのをご存じだろうか。2012年発売の『ミシュランガイド北海道』版に初登場。東京版では2014年発売の『ミシュランガイド東京2015』からラーメン部門が設けられている。最新の『ミシュランガイド東京2018』では計26軒のラーメン店が載っている。客単価700~800円前後の料理店がミシュランからの「お墨付き」を得ているのだ。

 ミシュランガイドの調査や掲載基準についてはなかなか外に明かされないが、筆者は今回、日本ミシュランタイヤ広報部から詳しく話を聞くことができた。ラーメン店を主な切り口として、その知られざる裏側をリポートしたい。

 まず、ミシュランガイドにおける星の位置づけは下記のとおりだ。

 一つ星:そのカテゴリで特においしい料理
二つ星:遠回りしても訪れる価値のあるすばらしい料理
三つ星:そのために旅行する価値のある卓越した料理
ビブグルマン:星はつかないが、5000円以下(東京・京都・大阪版。他は3500円以下)で特におすすめの食事を提供しているお店

ミシュランガイドで、ラーメン店が一つ星を獲得しているエリアは全世界中で東京のみとなっている。「Japanese Soba Noodles 蔦」(巣鴨)、「創作麺工房 鳴龍(NAKIRYU)」(大塚)の2店舗だ。

 ただ、ラーメン店の掲載数となると北海道版が最も多い。東京版は2番目だ。北海道版には星、ビブグルマンに加えて、「星なし」(今後ビブグルマンになる可能性を秘めたお店)という区分けがあるのが要因だ。

 初めて『ミシュランガイド東京』にラーメン店が掲載されたのは2014年からだが、ラーメン店への調査自体は2008年から進められていた。東京版は世界でいちばん、星を獲得している店が多い関係で、ビブグルマンを掲載するのが他エリアに比べて遅かったそうだ。2013年にビブグルマンを解禁し、翌年からラーメン店の掲載に至った。

 ミシュランガイドの調査員はどんな人たちなのか。調査員はすべてミシュラングループの社員だという。それも日本人だけでなく、海外のミシュランの社員も日本のラーメン店を調査している。

 そしてミシュラン社員なら誰でも調査員になれるわけではなく、レストランやホテルで働いた経験があり、かつフランスでの世界基準のトレーニングを受ける必要がある。ラーメン専門の調査員がいるのではなく、それぞれの調査員がさまざまなジャンルの料理店を回っている。

 お店の情報は社内でも調べているし、外部からも情報を得ているそうだ。ミシュランガイド読者からやお店自身からの推薦も随時届き、逐一目を通している。

ミシュランガイドの評価基準

 評価基準は料理のカテゴリに関係なく、下記5項目のみ。これは世界共通だ。

 1. 素材の質
2. 調理技術の高さと味付けの完成度
3. 独創性
4. コストパフォーマンス
5. つねに安定した料理全体の一貫性

 星・ビブグルマンはあくまで料理に対する評価で、お店の快適度や定期清掃によって衛生状態が保たれ、整理整頓もできているかという「クリンリネス」などは、大きく考慮はされない。今回、『ミシュランガイド東京2018』でビブグルマンに初めてラインナップされた「麺屋 坂本01」(王子)はお好み焼き店の居抜きで、前のお店の看板がついたまま。ラーメン自体がおいしければミシュランに選ばれるのだ。

 ミシュランは調査員の指導を徹底し、誰が行っても同じ評価基準を保てるようにしている。昨年掲載したお店も、ほかと同じように今年もちゃんと改めて調査し直している。その場合、昨年とは別の調査員が行く可能性もある。再掲載になったお店はクオリティが保たれていると判断された半面、一度掲載されたのに翌年以降に掲載から漏れるようなお店は何らかの項目に満たなかったと考えられる。

 星を決めるときは合議制となっている。調査員だけではなく、編集長、ガイドブックの総責任者も含め、ミシュランの総意として掲載がされている。ビブグルマンの決め方については知らされていないとのことだった。

 掲載軒数の上限は基本的に決まっておらず、全体的な食のレベルが上がれば上がるほど掲載店は増える仕組みだ。一つ星とビブグルマンを合わせて『ミシュランガイド東京2018』に掲載されたラーメン店数は26軒と、昨年の『ミシュランガイド東京2017』の29軒から3軒減ったが、「東京はお店のトレンドの移り変わりも早い。掲載店が変わるのはその動きの一環であり、減ったという意識はない」(日本ミシュランタイヤ広報部)という。

 『ミシュランガイド東京2018』には6軒のラーメン店が新たに掲載された一方、『ミシュランガイド東京2017』に掲載されていたうちの9軒が姿を消した。

 『ミシュランガイド東京2018』に掲載されているラーメン店は醤油ラーメンの清湯系(あっさりとした透明なスープ)が多くを占め、個性的なラーメンは軒並み外れてしまったという印象がある。ミシュラン側は、「こだわりも偏りもつけるつもりはありません。東京だと一般的に醤油ラーメンが多い印象はあります。「鳴龍」の担担麺、「一福」の味噌ラーメンなど、醤油以外の掲載もあります。そういったお店が前を走っている状況ではないでしょうか」(日本ミシュランタイヤ広報)と回答している。

 ラーメンファンとしては、白濁系の豚骨ラーメンを得意とするラーメン店が、『ミシュランガイド東京2018』にはいっさい掲載されていないのも気になるところだが、全国的に見ると豚骨ラーメンは2軒掲載されている(福岡「麺匠 明石家」、広島「ラーメン臥龍」)。ラーメン専門の調査員がいない時点で「清湯好き」「豚骨嫌い」という偏りはないようだ。

 『ミシュランガイド東京』には多店舗経営をしているラーメン店も1つも載っていないが、チェーン店を掲載しないという方針はない。ラーメン店ではないが、「すきやばし次郎」や「ジョエル・ロブション」「たこ焼きやまちゃん」など他のジャンルでは多店舗経営のお店も載っている。

 あくまでミシュランの基準を満たしていれば、チェーン店であるか否かは関係なく載る。現在、掲載されている単一店舗の料理店が多店舗経営になったら掲載されないというわけでもない。

ラーメン部門の設立で起きた変化

 ラーメン部門を設立したことでミシュランガイドはどう変わったのか。「ミシュランガイドというとどうしても『三つ星』みたいなイメージがあったと思いますが、一般の方が普段行けるお店が載ったことで認知度は一気にアップしましたね」(日本ミシュランタイヤ広報部)。

 ミシュランを通じて、掲載されたお店に注目が集まり、新たなお客さんが増えて、そこから出た新鮮なフィードバックでまたお店が進化していく、その媒介になれるのがミシュランの価値だ。ミシュランガイドで世界中にラーメンが注目されることによって、日本のラーメンは日本食から世界食になりつつある。

 ミシュランガイドが、いわゆるラーメン評論家が選ぶ賞や雑誌と違う新たな風をラーメン界に吹かせていることは間違いない。

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