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優等生ファナック、「営業益半減」の衝撃度 26年ぶり利益率20%割れ、何が起きたのか

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/04/25 19:00 森田 宗一郎
4月上旬に行われたファナックの新製品発表会。会場は名だたるメーカーの関係者でごった返していたが、それとは裏腹に事業は苦境を迎えている(記者撮影) © 東洋経済オンライン 4月上旬に行われたファナックの新製品発表会。会場は名だたるメーカーの関係者でごった返していたが、それとは裏腹に事業は苦境を迎えている(記者撮影)

 「当面厳しい状況が続くだろう」

 実質創業者の息子・稲葉善治会長からCEO(最高経営責任者)の座を4月に譲り受けたばかりのファナック・山口賢治社長は4月24日、山梨県忍野村の本社で開かれた決算説明会でそう語った。

2020年3月期の営業利益は「半減」

 工作機械の動作を制御するNC(数値制御)装置で世界シェアトップ、産業用ロボットメーカー世界4強の一角でもあるファナックが2019年3月期決算を発表した。

 売上高は6356億円(前期比12.5%減)、営業利益は1633億円(同28.9%減)と、おおむね直近の会社予想どおりに着地。前期に”バカ売れ”したiPhone製造向け小型工作機械の特需が消滅し、米中貿易摩擦の影響による中国経済の停滞も重なった。

 それ以上に注目を集めたのが今2020年3月期の業績予想である。売上高は5369億円(前期比15.5%減)、営業利益は757億円(前期比53.6%減)と2年連続の減収減益予想で、営業利益は半減するという衝撃的な数字だ。この予想による営業利益率は14%。ファナックの営業利益率が20%を割り込むのは、1994年3月期以来、実に26年ぶりのことだ。

 FA(工場自動化)業界では、2月期決算の産業用ロボット・モーター大手の安川電機と、11月期決算の中堅機械メーカー・不二越が、同業他社より半月程度早く決算を発表する。すでに発表された安川電機の2020年2月期の業績予想は、通期こそ減収減益だが、下期は前年同期比で38%の営業増益を見込んでいる。不二越も2019年11月期に前年比11%増の営業増益を見込んでおり、FA業界の底打ち観測が広がっていた。

 市場関係者にとってファナックの業績予想は、FA業界底打ちの「最終確認」となるはずだったが、その期待はもろくも崩れ去った。ファナックに何が起きたのか。

のしかかる設備投資の償却負担

 業績予想で目を引くのが、費用負担の重さだ。今期の利益が圧迫される要因として、山口社長は「減価償却費」「人件費」「研究開発費」の増加を挙げた。

 ファナックはここ数年間、毎年1000億円規模の設備投資を続けてきた。「受注、売上高に関しては残念ながら厳しい状況が続く。ただ、将来に向けた設備投資は継続する」(稲葉会長)。足元の苦境が終わって好況が訪れたときに需要を最大限刈り取る戦略だ。

 人件費負担も大きい。富士山麓に大工場群を構え、世俗から遮断された印象のファナックにも「働き方改革」の波は押し寄せている。「働き方改革を踏まえた労働時間の短縮で、人員は多めに採用した」(山口社長)。

 近年注力している工場のIoTデータプラットフォーム「フィールドシステム」の強化に向けて、中途を含めたソフトウェア人材も増強している。当然、研究開発費も膨らんでいる。

 また、アナリストからは、下半期の売り上げ予想の弱さも指摘された。FA業界では2019年下半期に中国市場や半導体関連市場が一斉に動き出すという見方が多い。にもかかわらず、ファナックの下半期の売上高は上半期に比べ1%しか伸びない。山口社長は「(下半期に)伸びる可能性はあるけれど、見通しに反映できるほどの確証は持ち合わせていない」と、政治リスクに左右される中国市場へ楽観的な業界と対照的に慎重な姿勢を見せた。

 カギを握るのが欧州市場の開拓だ。欧州のFA市場は、ドイツを中心とする地場メーカーが席巻している。稲葉会長は年始の賀詞交換会で「幸か不幸か、(欧州は)われわれは弱い地域なので切り開いていく。私も今年は(欧州に)何回も行かなければならないと思う」と市場開拓に積極的な姿勢を見せていた。

 というのも、ドイツの自動車工場向けFA市場で、おひざ元・ドイツの産業用ロボットメーカー、KUKA(クカ)がシェアを落としているという。理由は、中国の家電メーカー・美的集団にクカが買収されたからだ。あるFA企業大手の幹部は「ドイツの自動車メーカーたちは中国の企業に技術が流出することをいやがってクカから離れつつある。そこに食い込もうと、ファナックや安川電機が躍起になっている」と語る。

 競争環境が変わった欧州ロボット市場でのシェア拡大がファナック復調のカギとなりそうだ。

為替は1ドル100円を想定、保守的な業績予想

 実はファナックは従前から期初の業績予想が保守的なことで有名だ。米中貿易摩擦の影響で各社が下方修正を余儀なくされた前2019年3月期も、ファナックは期初予想を若干上回る数字で終えた。

 今期も、想定為替レートを1ドル=100円(期中平均)とし、1ドル=110円前後で推移する足元の為替レートより円高の前提を置いている。山口社長自身、「一般的に堅い見通しの会社と言われている」と決算説明会で語ってアナリストらの笑いを誘った。

 はたして本当にファナックは屈辱の営業利益率10%台に沈むのか。まずは劣勢の欧州開拓を進め、中国市場の回復を座して待つ厳しい1年となりそうだ。

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