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好調な米経済が揺らぐ?リーマン時よりも悪化している指標とは

ZUU Online のロゴ ZUU Online 2018/05/12 15:40

予見不能なトランプ政治や世界各地での地政学的リスクにも関わらず、米国経済はいまだ健在に見える。米国の株価は今年に入り伸び悩んでいるものの、まだ昨年末の水準近辺だ。今月4日に発表された雇用統計では失業率が3.9%となり、17年4か月ぶりに3%台に低下した。しかしそんな好調さの裏で、悪化を続ける数字もある。

■ 中小の銀行でクレジットカードの貸し倒れが急増

3月4日付のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙によると、中小の銀行でのクレジットカードの貸し倒れ率が、リーマンショック以降では最高水準にまで上昇してきているという。資産残高で100位以内に入らない下位の銀行では、貸し倒れ率が2017年第3四半期には7.9%となった。同第4四半期には多少は低下したものの、それでも7.17%と非常に高水準だ。大手銀行も含めた全体のクレジットカードの貸し倒れ率もここ2年は緩やかに上昇しているが、その比率は昨年第4四半期で3.48%と過去30年の平均以下にとどまっており、その差は鮮明だ。

ここから見て取れるのは、大手の銀行が取引相手としない低所得者層で貸し倒れが広がっているということだ。甘い審査や緩い融資条件の住宅ローンなどで金融危機を招いたことの教訓から、大手銀行はその後クレジットカードなどでも審査を厳格化した。大手銀行でカードを作れない低所得者層は高金利であっても中小の銀行に頼ることになり、大手と中小の銀行の間での顧客層の違いが以前以上に際立っている可能性が高い。

■ サブプライム自動車ローンの延滞率がリーマンショック時をも上回る

リーマンショック時に有名となった「サブプライムローン」という言葉だが、経済的な信用度が高くない人向けのローンのことをいう。当時は住宅購入に充てたサブプライムローンが危機の起因とされたが、今は自動車購入用のサブプライムローンで延滞率が大きく上昇してきている。格付け会社フィッチが集計している、60日以上延滞しているサブプライム自動車ローンの比率は今年2月に5.75%となった。3月は多少低下して5.16%となったが、金融危機時の最高は2009年1月の5.04%であり、今の水準は96‐97年以来の高さだ。

こうしたサブプライム自動車ローンを積極的に貸し出していた金融会社の多くは規模の小さい専門業者だが、延滞率の上昇を受けて経営にはやはり大きな支障が出てきているようだ。4月9日付のビジネスインサイダーの記事によると、既に3つの金融会社が倒産などによって事業を停止した。業界全体で見ても、延滞率の上昇が目立ち始めた2016年後半からは新規のサブプライム自動車ローンの貸し出しを絞る会社が増えており、これが2017年の米国での自動車販売が8年ぶりに前年比減となった大きな理由の一つと見られている。

(画像=Norman Chan / Shutterstock.com) © リーマン, 低所得者, サブプライムローン (画像=Norman Chan / Shutterstock.com)

■ 移動住宅である「モービル・ホーム」向けローンの延滞率も上昇傾向

スイス金融大手UBSの調査によると、モービル・ホーム・ローンの延滞率が昨年2%上昇したと言う。30日以上支払いが遅れているローンの比率は現在約5%と、2005年以来の高水準となっている。通常の住宅ローンの延滞率が景気回復の波に乗って引き続き低下傾向にあるのとは対照的だ。モービル・ホームはアパートや一戸建てよりも住居費が安いため、低所得者や移民などが多く住んでいるとされる。ここでも低所得者層の家計が、米国経済の表層的な活況と違って強いストレス下にあることが伺える。

■ 米国経済に与える影響

サブプライム層という言葉に絶対的な定義はない。ただ一般的に、米国特有の「FICO」という信用スコアが一定のレベル(660や620など、利用目的によって基準が異なる)を下回った層がサブプライムとされる。ただ、約5人に1人の米国人がそうした低スコア層なのだ。昨年まで8年続いた株高も資産を持たない層には直接的な恩恵は少なく、トランプ政権が昨年成立させた大型減税もメリットは富裕層に偏っているとされる。

より一層の賃金上昇が低所得者層にまで行き渡らなければ、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げするごとに、サブプライムローンや、延滞率が11%と非常に高い学生ローンで貸し倒れがさらに増えていくことが懸念される。金融危機時のサブプライム住宅ローンに比べて残高が小さいため、それほど大きな経済問題にはつながらないとする意見も聞かれるが、少なくとも大きな社会問題だ。

また、サブプライム層に貸し出しを行っている銀行以外の専門の金融会社は、その原資を銀行から借り入れている。銀行は金融危機以降、直接的にサブプライムローンのリスクを取ることを避けつつ、金融会社に担保付で融資を行って収益を上げる方針に転換してきた。4月10日付のWSJ記事によれば、2017年末時点での銀行のノンバンク向け融資はほぼ3450億ドルとなり、2010年から6倍に増えた。銀行の融資分類の中では、今では最大の融資先だ。

しかし間接的とは言え、銀行が貸し出した資金は貸出先でサブプライムローンに形を変え、そうしたローンがデフォルトして貸出先の経営が悪化すれば、その結果は銀行に戻ってくる。今後はそうした影響がどの程度出てくるのかにも注意が必要だろう。

ある局面においては金融危機時より厳しい状況に低所得者層を置き去りにしている今回の米国の好景気。そして、所得に関係なく一律に影響が及ぶFRBの利上げは今後も続く見通しだ。米国経済の見た目は今のところ盤石だが、水面下では綻びが広がっているようにも感じられる。(ZUU online 編集部)

北垣愛国内外の金融機関で、グローバルマーケットに関わる仕事に長らく従事。証券アナリストとしてマーケットの動向を追う一方、ファイナンシャルプランニング1級技能士として身近なお金の話も発信中。ブログでも情報発信中。

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