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AIめぐる人材争奪戦、自閉症者に熱い視線

The Wall Street Journal. のロゴ The Wall Street Journal. 2019/08/08 08:53 John Murawski
© Ernst & Young

 人工知能(AI)の開発をめぐって人材獲得競争を繰り広げている企業が、これまでとは違う層の採用に乗り出している。自閉症の人々だ。

 アーンスト・アンド・ヤング(EY)、クレディ・スイス、デル・テクノロジーズ、マイクロソフト、DXCテクノロジーなどの企業は、神経多様性(自閉症や発達障害などの状態を神経学的な差異としてとらえるアプローチ)プログラムを通じてAI開発職に応募してくる人を採用している。

 自閉症の労働者は、極めて高い集中力と分析的思考能力、並外れたIT能力を備えていることが多いと採用企業の複数の幹部が話している。彼らはAI開発に伴う反復作業(コンピュータービジョン用の写真・動画のラベリングなど)に長時間取り組んだり、論理的推論やパターン認識の高い能力を生かしてAIモデルの体系的な開発やテストに取り組んだりしているという。

 AIやデータサイエンスの技能を備えた労働者の需要は急増している。IT業界団体のCompTIAによると、IT業界の5月の失業率は1.3%と20年ぶりの低水準となった。貴重な人材を巡る争奪戦は一段と激しさを増している。

 一方で、多くの自閉症者が仕事を探している。ドレクセル大学の研究者が行った2015年の研究によると、高校で特別支援教育を受けた自閉症者の約42%は卒業から半年にわたって有償労働をしていなかった。

 自閉症者の雇用プログラムについて企業に助言する非営利団体の幹部は「特定の職務に適した分析力の高い人を探している企業にとって、自閉症者は解決策だ」と話す。推定40~50社の米企業がそうしたプログラムを設けているという。

 EYもITサービス会社のDXCも採用面接は行っていない。自閉症の人々は、機転が必要とされる状況が苦手な傾向にあるためだ。代わりに両社は、数週間に及ぶこともある能力評価を行っている。DXCはその時間に対して報酬を払っているが、EYは払っていない。

 EYで働く自閉症者は約80人と、1年前から2倍超に増えた。最近採用した従業員の前職は、清掃員、ピザ配達員、ウーバーのドライバーなど。学歴は高卒から大卒までさまざまだ。

 EYでの就業場所は、神経多様性を重視する米5都市の研究拠点だ。

 ダラスの14人のチームでは、8人が自閉症スペクトラムを持つ。同チームは昨年、EYのコンサルティング契約を自動で組成するアルゴリズムを開発した。それは月間2000件の契約を組成し、同社は年間労働時間を約50万時間節約していると、神経多様性イノベーションを主導するハイレン・シュクラ氏は述べた。

 シュクラ氏によれば、このチームは顧客の税控除の可能性を特定するニューラルネットワークも構築。5年分のメモや電子メールなどの書類をわずか12分で処理できるという。

 自閉症の一種であるアスペルガー症候群を抱えるイワン・ナンカロー氏(31)は、1月からEYのシカゴ事務所で働いている。インタラクティブメディアの准学士号を持ち、以前はミシガン州で親元に住みながら3つの仕事を掛け持ちしていた。荷物の配達、ファストフード店の店員、電子製品の遠隔ベータテストだ。

 現在はEYの会計サポートアソシエートを務める。6つのプログラミング言語を習得し、社内の規制順守状況を監視するアルゴリズムのコードを記述している。

 ナンカロー氏は電話取材で、「自分は非常によく学ぶ能力がある」と話した。「基本的に、習ったことを分析・反復できるため、表から裏までそれを参照し、思い出すことができる」

 シュクラ氏は、自閉症者の採用は「EYに欠かせないビジネスだ。慈善事業ないし企業の社会的責任だとは考えていない」と述べた。

 クレディ・スイスは、ノースカロライナ州の施設で9カ月前に神経多様性採用プログラムを開始した。自閉症者2人が働いており、近く3人目を採用するほか、7人が12週間の研修プログラムを受けているという。採用された2人は投資銀行事業向けに顧客サービスを改善するための機械学習アルゴリズムを開発している。

 そのうちの1人、ケネス・クラーク・ジョンソン氏は、世界市場のITプロセスオートメーションと品質管理を扱うエンジニアだ。職務には、体系化されていない電子メールや添付資料からデータを抽出・分類し、トレーダーが使うデータベースに投入するための機械学習モデルの構築がある。ジョンソン氏は、自身が「チームに新たな見方」をもたらしていると述べた。

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