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「ユニクロ超え」謎の中国アパレル・シーイン、その「世界制覇戦略」と「真の目的」

現代ビジネス のロゴ 現代ビジネス 2022/09/29 05:00 週刊現代

時価総額は規格外の「14兆円」

オーバーサイズのトップスに、シースルーのスカート。ゆるいキャラクターがプリントされたスウェット、ちょっと露出度の高いタイトなワンピース、さらにはウエディングドレスまでーー。

10代〜20代前半のZ世代女性の心をとらえるアイテムが、500円から高くても5000円程度の安値でずらりと並ぶ。「SHEIN(シーイン)」の通販サイトを訪れると、その無限とも思える品揃えに圧倒される。日本でもすでに「ユニクロよりも可愛いし安いから、全身SHEINで揃えている」という中高生が増えてきている。

いま、大人には耳慣れないこのファストファッション・ブランドが世界のアパレル業界に激震をもたらしている。年間の世界売上高は200億ドル(約2兆8000億円)に達し、ユニクロを運営するファーストリテイリングの2兆2500億円(2022年通期業績予想)をすでに超えているとも言われる。

Photo by gettyimages © 現代ビジネス Photo by gettyimages

さらに今年4月には、1000億ドル(約14兆円)もの資金調達を検討しているとも報じられ、市場の度肝を抜いた。時価総額1000億ドルを超える未上場スタートアップ企業は、まだ世界でもイーロン・マスク率いるスペースX、TikTokを運営するByteDanceの2社だけ。ファストリの時価総額が約8兆6000億円だから、その規格外ぶりがよくわかる。

その実態は謎だらけ

しかしながら、SHEINの実態は謎に包まれている。「アメリカ発のブランド」と銘打ってはいるが、創業の地は中国・南京市。数年以内にNY証券取引所へ上場するとも噂されるものの、現時点では非上場企業であり、売上など決算情報も中国メディアの報道を通じて明らかになっているだけだ。中国専門ジャーナリストの高口康太氏が言う。

「ファッション業界誌『WWD』が9月にSHEINに取材したところ、従業員は1万人以上、世界150の国と地域で事業を展開しており、アメリカ、シンガポール、イギリス、日本などに現地法人・拠点を置いているとのことでしたが、主要拠点は中国国内に置いているとみられます。

創業者の許仰天(シャー・ヤンティエン)氏はウェブマーケティング企業の出身で、2008年に前身となる南京希音電子商務を創業。当初はウェディングドレスに特化した通販サイトを手掛けていました」

SHEINの大きな強みは二つ。まず一つ目は、ネット・SNS上のファッショントレンドを超高速で取り入れる、リサーチと企画のスピード感だ。

「SHEINは世界中のファッションサイトやInstagram、TikTokといった若年層の多いSNSを巡回・分析し、常に最先端のトレンドを追いかけながら商品企画を立てているといわれます。

信じられないことに、企画から製造までは最短で1週間。SHEINの製造工場は中国にあるため、全世界の顧客の手元に届くまでは少しタイムラグがありますが、それでもトレンドを捉えられる驚異的なスピードです」(前出・高口氏)

ついに生まれた「中国発の本命」

そしてもう一つの強みは、こうした「爆速」で捉えたトレンドを実際の商品に落とし込んでゆく圧倒的な製造力である。

SHEINが製造拠点を置いているとみられる広州市は、中国でも最大の繊維工業の集積都市で、同地の業者や工場には世界中のアパレルブランドが製造を委託している。

「中国には製造委託先の工場を探すためのネットワークがあり、どんな商品の注文が増えているかすぐに分かる。例えば『いま緑のスカートが来ている』といった注文傾向を察知したら、すぐに空いている工場に連絡して、緑のスカートを徹夜の人海戦術で大増産するといった『力業』が可能なのです」(前出・高口氏)

SHEINは1日に6000点以上の新商品を発売しているともいわれる。他社にはマネできないスピードで企画・製造のサイクルを回すその手法は、ファストファッションを超える「ウルトラファストファッション」とも呼ばれている。

中国の産業は、日本や欧米の外資系企業からの製造委託を受けることで技術を学び、成長・拡大してきた。やがて自動車や半導体、スマホといった分野では中国独自の企業が育つようになり、世界の先行者たちに追いつき、追い越しつつある。

今まさに、アパレルでも同じことが起きようとしているのだ。ユニクロをはじめとする日本企業や欧米企業の製造を請け負い、成長してきた中国の工場。その生産力を存分に駆使する「中国発」の超巨大アパレル企業が、ついに誕生したのである。

「服を売りたい」わけではない?

だが、驚くのは早い。SHEINが見据えているのは、単なる巨大アパレル企業として天下を取る未来だけではないかもしれないのだ。経営コンサルタントの竹内謙礼氏は、「SHEINは『中国版Amazon』になるポテンシャルを秘めている」と指摘する。

「そもそもSHEINを『アパレル企業』としてとらえるべきか否か、という問題があります。アパレルのサプライチェーン構築でユニクロやZARAよりも優れているとは考えにくいですし、売上は高くても、利益率まで高いかどうかは分からない。

おそらく彼らはいま、コロナなどの環境変化をビジネスチャンスとみて、とにかく『面』を取りに行っているのではないでしょうか。かつてAmazonは、最初はあえて儲からない書籍通販で流通網を構築し、その後ありとあらゆるものを販売する巨大ECに成長しましたが、SHEINにとっての服とはAmazonにとっての本なのかもしれません。

今後SHEIN が、集積していく顧客データやマーケティングデータを利用して成長し、中国初の世界的ECプラットフォームに成長する可能性もあるでしょう。実店舗を持たずネット通販に徹しているのを見ても、一店舗ずつ利益を積み上げて成長してきたユニクロのモデルとは異なり、アメリカ型のプラットフォームビジネスに近いと見ています。

企業価値の評価額がすでにユニクロやZARAを超えているのも、まさに『SHEINはただのアパレル企業ではない』という期待感の反映ではないでしょうか」

「安かろう、悪かろうではないか」と侮るなかれ。SHEINは新時代の覇権を握る企業に成長するかもしれない。

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