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「いま賃貸派の人はラッキー」これからはマイホームを持たない人が勝ち組になる

プレジデントオンライン のロゴ プレジデントオンライン 2021/11/25 09:15 荻原 博子
※写真はイメージです © PRESIDENT Online ※写真はイメージです 持ち家か、賃貸か。住まい選びでは何度も議論されているテーマだ。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「持ち家の呪縛から自由になる日は近い。これからはマイホームは持たない人が人生の勝ち組になるだろう」という――。

※本稿は、荻原博子『買ったら一生バカを見る金融商品』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

人生をエンジョイするための家の選び方

もし、現在40〜50代で、家族がいるのに、未だに賃貸に住んでいることが恥ずかしいと思っている人がいたら、今日から大きく胸を張ってください。私は「持たないことは不幸ではない」と思います。

空き家の急増が広く知られるようになり、誰も住まずに朽ちていく家が問題となっています。

総務省統計局の「平成30年 住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家比率は昭和末期の1988年には9.4%でしたが、2018年には13.6%と約1.5倍に増えています。居住者のいない住宅が、約900万戸もあるのです(同調査は5年ごとに実施)。

考えてみれば、一人っ子と一人っ子が結婚し、マイホームを買ってしまったら、双方の親の家2軒が余ります。今の親は地方から都心に上京し、都心で結婚をして家族を築いているため、その子どもたちの実家は都心となり、その実家があと数十年後には空き家になってしまう可能性があります。

東京都でさえ空き家率10.6%ですから、これからの日本は、都心でさえ空き家が増えるのは間違いありません。

さらに、空き家の内訳を見ると、半分以上が賃貸用の住宅です。どうりでアパートの空室が目立つわけで、借り主から見れば“よりどりみどり”の状態になるかもしれません。

しかも、勤める会社にずっと通い続けられるかどうか、わからない時代になってきています。マイホームを持ってしまったらその場所から身動きができませんが、賃貸住宅なら子育て中は都心で家賃の安いところを渡り歩き、年齢を重ねるにつれ広々とした家に住める郊外や、空気がきれいな田舎暮らしなど好きな場所に引っ越せるので、人生をエンジョイできると思います。

家も「所有よりシェア」の時代に

今、人口の増加や暮らし方の変化により、地球環境への負担が大きくなっています。地球温暖化やごみの問題、生物多様性の危機など多くの環境問題が発生し、このまま何もしないでいると、生活に悪い影響をもたらし、取り返しのつかないことになるかもしれません。

私たちにできることは、これまで推し進めてきた過剰生産や過剰消費を見直すこと。人々の消費スタイルは徐々に単独所有から共同利用へと変化しており、シェアリング・エコノミーが確立してきました。

環境問題に対する危機感は若い人ほど敏感に感じているようです。エコやもったいない精神は小学校で学習することもあり、驚くほど身についています。

レンタルできるものはレンタル、購入はフリマアプリで中古品でも気にしない、自転車や車、洋服、バッグ、靴までも月額のサブスク(サービスを受ける期間に対して料金を支払うサービス)を利用し、「所有するよりシェアのほうがラク」といいます。彼らが「家を持つなんてナンセンス」と考えるのは時間の問題です。

今、賃貸派の人はラッキー。

一生賃貸というと、「高齢になると、家を貸してもらえない」と心配する人がいますが、高齢になると住みやすい老人ホームに移ったり、介護施設でお世話になる人が多いです。

もし、そうしたところに行かないにしても、賃貸経営は、空室が最大の恐怖。貸したいと思う若者は人口減少で少なくなるのですから、高齢者にも家を貸さなければ経営が成り立たなくなります。

高齢者向け施設も20年もたてば今のシステムではないはず。「おひとりさま」ならぬ、人生100年時代の遊び好きで体力のあり余った「おひとり老人」が街中を闊歩(かっぽ)するのですから、80〜100歳が共存共栄できる、超進化系のシェアハウスのような形態が登場するかもしれません。

ただ、「一生、家賃を払い続けていけるかどうか心配」という人もいます。確かに、年金暮らしで家賃を払うのは大変かもしれませんが、マンションを持っている人も、管理費や修繕積立金、固定資産税は一生払っていきます。一軒家もいつかどこかにガタがきて、リフォームが必要になるでしょう。

日本はセーフティーネットが充実しているので、資産がなければ公営アパートという手もあり、老人でも借りやすいUR賃貸住宅も、空室が増えていくのが目に見えているので、更新料なしで借り放題です。

持ち家の呪縛から自由になる日は近いです。今、賃貸派の人は、住宅に関しては心配するどころか、ラッキーな状況となりそうです。

マイホームは資産にならない

家の資産価値とは、将来、売りたいと思ったとき、「いくらになるか」と家を現金化するときの価値です。私は「これからのマイホームは資産になるのか、ならないのか」という質問をよく受けます。

私の答えは、「マイホームの多くは資産にならない」です。

家が余る時代がやってくるのはデータにも表れていますが、さらに怖いのがマンション。現在マンションは、全国に約700万戸ありますが、このうち約200万戸が築30年を超えています。

マンションは築30年を超えるとそろそろ建て替えを考えなくてはいけなくなると言われていますが、民間で建て替えできるマンションはほとんどないでしょう。

なぜなら、建て替えには新築と同じくらいお金がかかり、すでに入居している人たちは高齢化しているのでその負担に耐えられない人が多いからです。

ですから、築年数が古いマンションの資産価値は、どんどん落ちていく可能性があります。

では、お金の面で、家を買うのがいいのか賃貸がいいのかを比べてみましょう。

「家購入VS一生賃貸」は引き分け

よく住宅情報誌では「家購入VS一生賃貸」の特集をやっています。住宅を売りたい情報誌なのだから、家を買うほうが勝ちになるのは当たり前です。

本当にそうなのか、私もシミュレーションをしてみました。

計算の前提は、購入派は、35歳で3000万円の中古マンションを買うべく30年の住宅ローンを組み、65歳でローンを完済させ、そのマンションに80歳まで住むと仮定。一方、賃貸派は、家賃が月11万円の賃貸に80歳まで住むと仮定しました。

購入派は、月10万3536円の住宅ローンを30年間払い続けます。加えて家を維持していくために、固定資産税、管理費、修繕積立金、火災保険がかかり、合わせて月4万円は最低でもかかるでしょう。

ちなみに一戸建てなら管理費と修繕積立金は必要ないというのは間違いです。一戸建ては外壁や屋根が途中で持たなくなるので、むしろ修繕費はマンションより多めにとっておかなければなりません。計算をしてみたら、購入派の住居費は6187万円になりました。

ただし、このマンションが購入時に築20年の中古マンションだと仮定した場合、65歳のローン完済時は築50年、80歳では築65年になっています。

将来、老人施設に入る資金にするためにマンションを売ろうとしても、築65年、自身が45年も住んだマンションの資産価値は、よほど立地のよいところでない限りゼロと考えたほうがよいでしょう。

賃貸派は、シンプルに月11万円の家賃を80歳まで払い続ける計算をしてみると、住居費は6160万円になりました。賃貸ならより安価な家賃の物件に引っ越すということもできるので、選択肢が広がるでしょう。

一般的な例として、金銭的な面からいえば、家購入と一生賃貸の対決はほぼ変わりなく「引き分け」です。経済面だけで見ると、どちらが勝ちということはありませんでした。

マンションは老朽化が大問題になる

ここで、「金銭的に同じならば、何も残らない賃貸派より、最終的に家が残る購入派のほうが勝ちなのでは? 子どもに土地を残せるし」という声が聞こえてきそうですが、前述した通り、今後は空き家が増えていくので、マイホームを買うなら売れないことを覚悟して買いましょう。

売りたい人は増える一方ですが、買いたい人は減っていくのです。

それでも欲しい人は、住宅ローンを30〜35年借りている間に、夫の収入に変化はあるのか、妻は働けるのか、子どもの教育費はいくらかなど、住まい選びは「今」ではなく、将来を考えながら住まい選びをしてください。

特に、前述したようにマンションは、今後、老朽化が大きな問題になります。これから20年経って、約200万戸ある築30年のマンションが築50年になると、メンテナンスが十分できずに外壁が剥がれ落ちたり、ガス管が腐食してガス漏れがしたり、地震のときには崩れるかもしれません。

住むだけで命にかかわるようなマンションが日本にはこれから乱立していきます。子どもにしても古い家は必要とせず、「ここには住みたくない」といわれるのがオチです。「マイホームは資産にならない」と書いたのはそのような理由からです。

持ち家の呪縛から解き放たれよう

コロナ禍が長引き、働くスタイルも変化しています。都心で働く、都心に住むことにこだわらなくても、生活していける選択肢がたくさん出てきました。

現に若い世代は「ネットがあればどこにでも住める」と、不便な場所に苦痛を感じることなく、新たな生活スタイルを楽しんでいる人が増えています。

車を持たずカーシェアリングを使い、格安スマホにフットワークよく乗り換えるなど効率的に暮らし、自分の好きなものには惜しみなくお金をかけています。

そろそろ日本人はマイホームを持って一人前という呪縛から解き放たれてもよいと思います。

都心に暮らすことだけが便利で、使い勝手がよいわけではありません。

医療の発達や生活スタイルから人生が長くなったので、一所に留まるのはもったいない。もっと自由に移動して、人生を謳歌したほうがよいと思います。

働く世代でも、リモートで家賃の安い地方に住み続けることが可能になる時代です。

定年まで働くというスタイルもなくなりつつあります。だとすれば、収入やライフスタイルに合わせて気軽に引っ越しできる賃貸というのは、ますます注目されるのではないでしょうか。

---------- 荻原 博子(おぎわら・ひろこ) 経済ジャーナリスト 大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。 ----------

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