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アメリカ人の朝食の定番だったドーナツが、夜も食べられるようになった理由

Forbes JAPAN のロゴ Forbes JAPAN 2020/02/05 08:30 長野 慶太

© Forbes JAPAN 提供 全米に1万3000件の店があり、年間約8500億円も消費されているアメリカのドーナツだが、いま、この文化に異変が起こり始めている。

昭和生まれの筆者は、ドーナツとはおやつに食べるものと信じて疑わなかったが、20年以上前にアメリカに来て、アメリカ人がドーナツを朝食に食べ、昼の時間を超えると、ほぼ食べることはないということに気がついたときには、とても驚いた。

アメリカに住むようになった初めての年、お世話になった方々への年末の挨拶のつもりで、午後3時のおやつ時間に、ラスベガスの街を東西南北走ってドーナツを配って回った経験がある。しかし、今から振り返れば、相手には「ははあ、オフィスでの残りを持ってきたな」と思われていたに違いない。こちらに来てから数え切れないくらいやらかしてきた筆者の失敗の1つだ。

今回、試しに日本のクリスピークリームとミスタードーナツのウェブサイトを見てみたが、アメリカのように朝6時から開いているような店は見当たらなかった。一方で、夜の11時まで営業している店があるなど、やはり日本人にとっては、昼以降のおやつやデザートとしての扱いが主流なのだと思った。

「ドーナツの首都」はロサンゼルス

アメリカでのドーナツは、移民の人たちにより、17世紀にオランダ領ニューアムステルダム(いまのニューヨーク)に伝わり、そこから広まったと言われている。いまのようにリング状になったのは19世紀の中頃からで、それからずっと「国民食」として、アメリカの人たちに愛されてきた。

つまり発祥の地はニューヨークらしいが、CNNやその他のサイトの情報を総合すると、今日、アメリカでの「ドーナツの首都」は、ロサンゼルスということで定着しているようだ。

確かに、最先端の流行りのドーナツ店は、LAで数多く生まれている。筆者がアメリカに住み始めた20年以上前は、ドーナツ店は早朝に店を開けて、夕方までには店を閉めるという営業スタイルだったのが、最近では夜になっても営業している店が多くなった。

その原因には、おそらく店で出すコーヒーの質の向上があると見ている。いわゆる日本の喫茶店のような店がなかった国に、スターバックスが良質のコーヒーを供してカフェ文化をつくり、あっという間に全米に広まった。コーヒーが美味しくなれば、それに最高に合う食べもの、つまりドーナツが必然的に市民権を拡大してきたという構図に違いない。

それまでアメリカの人たちの朝は、アメリカンコーヒーとドーナツから始まっていたが、カフェ文化の浸透とともに夜遅くまでコーヒーが飲まれるようになり、自然とドーナツ店の営業時間も伸び、種類も増えてきたという感じだろうか。

「ドーナツの首都」でもとくに有名な店が、UCLAのお膝元、ウェストウッド地区にある「スタンズドーナツ」で、通常の倍もある大きさのドーナツに、腹をすかせた学生たちがいつも長い列をつくっている(若き日のエリザベス・テーラーやスティーブ・マックイーンなどの俳優にも愛好者が多い)。

創業1963年のこのスタンズドーナツからライセンスを受け、店舗を拡大しているのがシカゴのスタンズドーナツで、こちらは夜の営業が繁盛している。シカゴのオーナーは、LAの本家からトレードマークとレシピ使用の許諾を受けると、シカゴに特化してあっという間に12店舗をつくり、ほとんどが朝6時から夜10時まで開いている。

筆者もシカゴで実際にいくつかの店舗へ出かけてみたが、夜遅くまでたくさんのお客さんで賑わっていた。シカゴの目抜き通りに、おしゃれできれいな店舗を建て、質の高いコーヒーだけでなく、美味しいドーナツで客寄せする店の態様は、学生街で営業する本家とは180度異なり、高級志向で単価も高く、シカゴではすでに飽和状態であるスタバへの強力な対抗馬となっていると感得した。

ダンキンドーナツに新たな動き

一方、この新たなドーナツのブームに後押しもあり、急速にかつての勢いを取り戻してきている全米屈指のチェーンでもあるダンキンドーナツだが、このたび使い捨てのコーヒーカップ(フォームカップ)の改良を発表して話題となった。

不思議な話なのだが、ダンキンドーナツはアメリカの北東部では、アイスコーヒーはぬるくならないように、ホットコーヒーなら冷めないようにと、コーヒーカップを2つ重ねて出す習慣がある。お客は「ダブルカップリングでお願い」と頼むのだが、これは他の地域ではなかなか見られない現象だった。

しかし、ダブルカップリングにはコアなファンはいるが、見栄えもよろしくなく、また環境保全への配慮不足だとクレームもあったようで、ダンキンドーナツはこれを廃止し、新しい保温保冷に向いたカップを使用することにしたというプレスリリースを出したのだ。

このニュースを聞いて、北東部のコアなファンは、いまのうちに旧スタイルのコーヒーカップを集めて回っているというから、その愛着の強さは伺い知れる。

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ダンキンドーナツ

全米に数多あるドーナツ店では、お客もそれぞれにこだわりや愛着も変わってくる。パンのようにイーストで膨らませる製法が好きな人もいれば、ケーキのようにベーキングパウダー派もいる。

あるいは、南カリフォルニアやネバダでは、ピンク色の箱に入ったドーナツはいつのまにか「出来立て」を意味するようになり、あちこちの店がそれを真似始め、「ピンクボックス」でなければ美味しく感じられないという文化も生まれつつある。

いずれにせよ、長いことアメリカの朝食の1つのシンボルだったドーナツは、コーヒーの進化とともに、新しい国民食としての道を踏み出している。20年前の筆者の失敗は、今ならもう不首尾とは受け取られないのかと思うと、複雑な気持ちではある。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

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