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ロシアと急接近するイタリアのポピュリズム新政権。EUの行方はどうなる?

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2018/06/13 08:51

 イタリアで今月誕生したポピュリズム2政党「五つ星運動」と「同盟」。この連立政権が首相に選んだ法学者ジュゼッペ・コンテによる所信表明演説の内容は、ロシアへの接近を強調し、2014年に米国が背後から支援した欧州連合(EU)が科した対ロシア経済制裁の解除を示唆したものであった。

 さらに同演説は、イタリアが北大西洋条約機構(NATO)の一員であるとしながらも、同時に新政府は親ロシア派であることを認め、「ジオポリティクス危機において、近年外交上の役目を確固たるものにしたロシアに対し、我が政府は門戸を開ける役目を担う」と述べた。そして、「ロシアに科せられている制裁を見直す推進者になる意向である」と表明したのである。(参照:「ABC」)

 EU加盟諸国のリーダー国の一つであるイタリアの首相が、EU委員会やドイツ、フランスと事前の調整もなく、ロシアに科している制裁を解除することを率先して実行することを表明したのはEU加盟国間の均衡を砕くことに繋がるかもしれない。

◆所信表明演説の「黒幕」と統一ロシアの間で結ばれていた「合意」

 コンセンサスで選ばれたコンテ首相の地位はこの2政党の中で指揮権のない報道官でしかない。首相にこのような発言をさせた人物が背後にいたのである。その人物とは同盟のリーダーで副首相兼内務相であるマテオ・サルビニである。

 サルビニがこのような挙に出たのには、これまでメディアでは目立って注目されていなかった一つの出来事あった。それは昨年3月6日にモスクワでサルビニの同盟とプーチンの統一ロシアの間で合意が交わされていたのである。(参照:「El Pais」)

 その合意内容とは、両国の安全と防衛における協力、将来の経済協力、不法移民の取り締まり、リビアの和平回復、テロリズムとの戦い、というまではどこでも見当たりそうな合意内容である。ところが、それに加えてロシアへの制裁の解除という内容が盛り込まれているのである。特に、制裁に関してはその影響でイタリアは50億ユーロ(6500億円)の損失、数千人の雇用の喪失に繋がったという苦い経験をしている。

 サルビニはその合意の署名の後、ラブロフ外相と35分会談したという。その会談の中で今回合意された内容が確認された上に、「ロシアは(同盟が)EUの制裁に反対する意向を表明してもらいたい」と伝えられたという。(参照:「El Pais」、「MUNDIARIO」)

 統一ロシアの副書記長セルゲイ・ゼレニャックは、同盟との合意のあと、「五つ星運動とも合意を結ぶ予定であった」と取材記者に語った。彼は、「我々はイタリアのどの政党とも合意する用意がある。五つ星運動には親近感を持っており、彼らとも接触はある」「彼らの方で合意をしたいと望んだ時点でいつでも署名できる。我々の方は準備できている」と語っていたという。(参照:「El Pais」)

◆欧州で暗躍するプーチン

 コンテ首相が所信表明の演説をしていた時に、プーチン大統領はオーストリアを訪問していた。オーストリアのセバスチアン・クルツ首相と会談の為であった。

ハーバービジネスオンライン: ロシアへの接近で暗躍したのは、極右政党としても知られる「同盟」のマテオ・サルビニだ。photo by Fabio Visconti via Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0) © HARBOR BUSINESS Online 提供 ロシアへの接近で暗躍したのは、極右政党としても知られる「同盟」のマテオ・サルビニだ。photo by Fabio Visconti via Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0)

 オーストリアの政権はクルツの右派国民党と極右派の自由党が連携しての政権である。プーチンがこの訪問の目的としたのは、旧ソ連からオーストリアに天然ガスを供給して50周年に当たるということを記念しての訪問であったという。しかし、プーチンの今回の訪問の真の狙いは別の所にあった。即ち、今年9月からEUの議長国がオーストリアになるということにプーチンは関心をもっているのである。

 クルツ首相は、ウイーンは東と西を繋ぐ架け橋になりたいと望んでいるという。また、ロシアとは政治交流を深めたい意向も表明している。プーチンにとっても、オーストリアが親ロシア派として動いてくれることを望んでいるのである。

 プーチンのロシアにとって、中央ヨーロッパのウイーンと地中海のローマとそれぞれ政権を持っている政党とのパイプが出来たというのは地政学的に重要なのである。

 更に、プーチンの戦略に加担するかのように、東欧にはヴィシェグラード・グループというのが存在している。このグループに加盟しているのはハンガリー、ポーランド、チェコ、スロバキアの4か国で、どの国も嘗て旧ソ連の影響下にあった国で、今もロシアに親近感を持っている国々である。特に、ハンガリーとポーランドはEU委員会の政治方針に常に異論を唱えている2か国である。

 イタリアのポピュリズム2政党の政権が親ロシア色を強めると西欧と東欧のEU加盟国の間で均衡が崩れる可能性は十分にある。

 しかし、イタリアに関しては疑問もある。即ち、イタリアはコンテ首相が指摘しているように、イタリアはNATO加盟国の一員であると認めている。しかし、NATOは敵をロシアと設定している。イタリアにもNATOの基地がある。レトニアやエストニアにはロシアからの脅威の前にイタリア軍が派遣されている。ロシアを擁護しようとしているイタリアの新政権はNATOの加盟国として今後どのように振る舞って行くのか観察してゆく必要がある。

<文/白石和幸 photo by Fabio Visconti via Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0) >

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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