古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

客足戻らぬカプセルホテル 感染対策”見える化”試行錯誤も

NEWSポストセブン のロゴ NEWSポストセブン 2020/07/04 07:05
個室スタイルを取らないカプセルホテルはコロナで大打撃 © NEWSポストセブン 提供 個室スタイルを取らないカプセルホテルはコロナで大打撃

 コロナによる休業や客離れで甚大な影響を受けたホテル業界。中でも、プライベート空間が極めて狭く、個室スタイルを取らないカプセルホテル業態は、いまだに客足が戻らず苦しい経営を強いられている。進化型カプセルホテルとして人気を博していた「ファーストキャビン」の突然の破産も大きな話題となったが、果たしてカプセルホテルはこのまま衰退してしまうのか。ホテル評論家の瀧澤信秋氏がレポートする。

 * * *

 コロナショックの影響を大きく受けた業界の筆頭として宿泊業界が挙げられる。事実、破綻も相次いでいるが、移動自粛の緩和や「Go Toキャンペーン」事業など明るいニュースも見られるようになった。とはいえ、長引く未知のウイルスとの闘いに、予断を許さない状況は今後も続くだろう。

 宿泊業界といってもホテルや旅館、民宿、民泊などさまざまで、ホテル名の付くものだけでもシティホテル、ビジネスホテル、リゾートホテル、レジャー(ラブ)ホテルなど多様であるが、ホテルに共通しているのは基本的に「個室」を提供している点だ。プライバシーを確保できることで、コロナウイルスに感染した軽症者の受け入れ施設としてホテルに白羽の矢が立った。

 一方、ホテルと名のつくものの個室を提供しない業態に「カプセルホテル」がある。カプセルホテルは個室ではなくユニットで仕切られたプライベートスペースを有し、基本的に複数のゲストが同じ空間に滞在することになる。こうした特性からコロナ禍において好ましくないスタイルというイメージで、一般ホテル以上に厳しい経営を強いられている。

 カプセルホテルには全体を取りまとめるような大きな業界団体はなく、コロナ禍の対応、休業状態などまとまったデータはないが、緊急事態宣言下での筆者の首都圏店舗リサーチでは、ごく一部営業を続ける施設はあったものの、一般ホテルのそれと比較すると「ほぼすべて休業」という状態だった。

 宿泊施設全体の動きをみると、5月末をひとつの区切りとして6月1日から営業再開するホテルや旅館が目立ったが、カプセルホテルでいえば未だ営業休止という施設もみられる。現状はどうなのか。再開準備を始めたというカプセルホテル業界では名の通った施設へ取材に出向いた。

 JR新宿駅の東南口、甲州街道の高架に沿うように立地する「豪華カプセルホテル 安心お宿プレミア新宿駅前店」に到着すると、多くのスタッフが営業再開に備え、館内の清掃や消毒に勤しんでいた。こちらのカプセルホテル、じつは新型コロナウイルスのニュースが拡散し始めた頃に「カプセルホテルの感染症対策」というテーマで取材した経緯がある。

 そのとき驚いたのは、コロナ禍に関係なく以前からマスクを無料配布し、館内の至る所に手指消毒やうがい薬を設置していたことだった。

 そもそもカプセルホテルは、清掃をはじめ感染症対策等の衛生面への徹底した対応が顧客獲得そのもの(業績)へリアルに直結する業態だ。もちろん施設によりさまざまであろうが、こちらでは施設の開業時から感染症対策に取り組んできたこともあり、コロナ禍の感染症防止においてもスムーズに対応できたと担当者は話していた。

 そのような施設が今回の営業再開に際してどのような“追加”対策を施すのか、カプセルホテルならではの視点とはどのようなものなのか。

 一般的なホテルへ出向くと感染症対策について“見える化”が進んでいることがわかる。パッと見でわかるサインでビジュアルとして注意喚起する。ここのカプセルホテルでもパブリックスペースのポップなど同様の光景が見られたが、バックオフィスでも見える化が進んでいた。

 スタッフ全員の体温・体調・手袋マスク着用のチェック一覧表を全員が共有でき、コロナ対策としてパブリックスペース、接客時、宿泊、ラウンジ、清掃等のそれぞれの注意点が計35項目並び、それぞれに準備品や手順が明確に記されている。こちらも共有されている。

 営業再開後の宿泊に関して聞いてみたところ、「しばらくは稼働を25%に抑制する」という。すなわち4つに1つのカプセルのみをアサインすることになる。カプセルスペース内の消毒・換気は当然として、気になるのがカプセルユニット内部だ。これについては、UV(紫外線)を用いた器具を設置すべく専門の事業者と開発、まもなく導入できる予定だという。殺菌効果は高く、コロナウイルスにも効果がある一方で人体には影響がないという。

 ゲストへの情報提供という点では、各々のスマホやタブレットで混雑状況が確認できるシステムを導入。QRコードでラウンジや大浴場などパブリックスペースの状況がビジュアルとして見られるようにしたという。これまでゲストがピックアップしていたアメニティは個別のバッグへまとめられ渡される。そこにはアルコール消毒液のパックも入っている。

 筆者の知る限り、一般のホテルでもここまでの対策はなかなか見られないが、それだけカプセルホテルの抱く危機感を物語っているといえよう。

 感染症対策も周知したうえで利用してもらいたいと、営業再開に合わせてなんと無料利用のサービスもするという。

 NTTコミュニケーションズと提携し、同社が提供する外出先などオフィス以外の場所でスマートにワークスペースを確保できるサービス「Dropin(ドロッピン)」の実証実験に参画。6月25日の営業再開日から大浴場とカプセルのデイユースを無料利用できるプランを打ち出したのだ。無料利用ということで様々なゲストが訪れることを想定、清潔感の確保にも注力する。

 今回紹介した施設以外にも、カプセルホテルならではといった感染症対策は様々な店舗で見られる。ここまで清潔に消毒されていることは、カプセルホテル業界史上初の出来事だろう。過剰なまでの感染症対策は、その業態を鑑みればある意味当然ともいえるが、その一方で完璧な対策がないのも事実だ。

 カプセルホテル業界全体の先行きについては、極めて厳しいと予測する業界関係者は多い。モノの購入とは異なり、そもそもサービス業ではペントアップ・デマンド(抑え込まれていた需要)は生じにくい。特に、ラグジュアリーな旅、デスティネーション(旅行目的地)的な宿泊施設カテゴリーでもないカプセルホテルにおいては、以前のような需要の高まりはもはや期待できない。インバウンド需要の回復も当面見込めないだろう。

 コロナ禍は未知の感染症への恐怖を広げ、ソーシャルディスタンスなど新たな生活様式を植え付け、人々の心理に“囲い”を作った。そんな環境下、ドアのない鍵のかからないカプセルホテルでは、さらなる試行錯誤の日々が続く。

配信元サイトで読む

NEWSポストセブン
NEWSポストセブン
image beaconimage beaconimage beacon