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「お金に振り回される人」と「お金で幸せになる人」の決定的な違い

ITmedia ビジネスONLiNE のロゴ ITmedia ビジネスONLiNE 2019/04/12 05:05
ある日突然大金を手にした人の末路は? © ITmedia ビジネスオンライン ある日突然大金を手にした人の末路は?

 日本に、億万長者が増えている。近年のベンチャー企業勃興とともに、事業売却や上場などで多額の売却益を手にする若者が増えているのだ。

 海外の有名な事例にInstagramがある。2012年当時、社員は13人で売り上げもほぼゼロだったInstagramの開発会社は、約810億円(当時の為替ベース)でFacebookに買収されると報道され、世界中が沸いた。日本でも、「○○が創業した会社、○○○億円で大手の○○に売却」といった華やかな報道が見渡せる。

 事業を売却しても上場しても、事業自体はその後も継続するので、ある意味では単なる「通過点」にすぎない。しかし、それでもさまざまな気付きやアイデアから事業を興し、それを赤の他人が大金を出して買いたがるほどの組織に仕立て上げたのは1つの大きなマイルストーンに違いない。筆者はExit(事業売却)経験がある全ての起業家たちに対し敬服の念を禁じ得ない。

●上場担当証券マンによる億万長者への忠告

 事業を売却(本コラムでは上場による持ち株の売り出しを含む)する人たちは、その莫大な現金を、何を思いながらどのように使っているのだろうか。よくよく見てみると、お金で幸せになる人と、人生を振り回される人がそれぞれおり、その違いには一定のパターンが見え隠れしている。

 筆者の知人に、大手証券会社の上場担当者がいる。彼は、顧客である企業オーナーが上場を果たした際、次のようなアドバイスをするという。「この度は上場おめでとうございます。これからたくさんのお金が手に入りますね。ただしお気を付けください。これまで上場のお手伝いをたくさんしてきましたが、車、時計、クルーズを購入して、(東京都)港区の高級マンションに住みながらファーストクラスで世界旅行をしても、かかるお金は4億~6億円程度で、そうした物欲は一巡するものです。一方で、全てのお金を失うのは、多額の事業投資を行う人たちです。事業投資にはお気を付けください」

 なるほど、そういうものなのかと思いたくなる忠告だが、いまいち腑に落ちない。会社を上場させるほどのやり手なら、次の事業投資も成功させそうに思われるからだ。事業投資の全てが成功しないとは決して言えまい。では一体、事業投資で一文無しになる億万長者と、そうならない億万長者の差は何なのか? 

●事業投資で全財産を失ってしまう際の心理

 筆者は一文無しになる億万長者とそうでない億万長者の差は「投資リスク管理力」だと考える。シンプルに言えば、「勇敢な勝負」と「無謀なばくち」を履き違えてしまう人たちだ。そして後述する通り、この能力差はより奥深い「人生哲学」に根差している場合が多い。

 筆者の友人にA氏がいる。彼は自分で興した会社をM&Aで売却し、億単位の現金を手に入れた。急に羽振りがよくなり、モデルやアナウンサーとのデートを楽しみだした。上場までは多忙でろくな趣味もなかった彼が、上場後は旅をして気に入った土地の不動産や絵画コレクションに投資し、ホテル暮らしを楽しんだ。そして、たまに気に入ったベンチャー企業に遭遇するとそこに小口投資をして、またもうけていた。

 そうした生活にも飽きた彼は、数年前、新たにスマホアプリ系ベンチャーを起業した。しかし、世間はそう甘くない。これまで外部投資家から数十億円の出資を取り付けて頑張ってきたが、その運転資金もいまやなくなりつつある。GAFAに代表される大手企業が類似サービスを展開しており、売り上げも伸び悩む厳しい状況だ。

 A氏は最近、最後の頼み綱だった投資家に出資を断られた。しかし、既存株主への恩義、これまで必死に頑張ってくれたチームのメンバー、そして自分の信念を捨てるわけにもいかず、彼は私財の大部分を投げうって先行きが心配な事業を継続させている。A氏の個人資産があとどれくらい残っているかを私は知らないし聞きたくもない。ただし現在、会社も彼の表情も、悲壮感あふれる不安な状況だ(個人を特定されないように、いくつかの事実を改変している)。

●「リスク管理」しながら「勝負」せよ

 こうした事例は表に出ないだけで多数ある。しかも、パターンが酷似している。突如大金を手に入れ、贅沢(ぜいたく)に飽き、事業投資を始めるが想定が外れてしまう。しかし、周囲に迷惑をかけたくなかったり、諦めきれなかったりといった理由で、追い打ちをかけるように私財をベット(賭け)してしまい、全てを失うパターンだ。「ここまできて身を引くなんてあり得ない」という気持ちが、億万長者の理性を圧倒してしまい、ロスカットして身を引く気持ちにどうしてもなれないのだ。

 筆者は現在、社会課題解決につなげるインパクト投資ファンド「ミッション・キャピタル」を経営させていただいている。私の自己資金に加え、投資家の方々の大切な資産を預かって運用する立場である。投資先の精査、分散投資によるリスク分散、海外投資の際の為替ヘッジ、そして景気後退時のリスクヘッジなど、あらゆるリスクを検討するのは私の負う当然の責務だ。「うまくいったらもうかる投資」で、「きっとうまくいく自信がある」からといって、リスク管理やリスクへの対応を怠っていいことには決してならない。リスク管理とリスクテークの関係性は表裏一体が真実で、二者択一ではない。

●お金で自分を幸せにする人の共通点

 お金で自分を幸せにできているのは、投資リスク管理のうまい人たちだ。そして、彼らにはある共通点がある。「お金を増やすことは目的ではなく、あくまでも手段。人生の目的は他にあり、何を成し遂げたいかを決めるのは自分だ」と明確な哲学を持っている点だ。

 この「非金銭的目的意識」は、事業投資で想定が外れた場合、判断に謙虚さと冷静さを与える役割をする。「そうか。この手段(お金の使い方)では目的に到達できないのか。では現時点で他にどんな手段があり得るか」という、精神的規律が働く。

 また、そうした人たちは、自己実現をするための目標設定にたくさんの時間を使う分、お金では買えないロマンをもっていることが多い。「よりすばらしい美女たちとおいしいものを食べて平日からクルーズに乗り、優越感に浸りたい」という衝動がなくはないにしても、「大義と信義を重んじ、自分がこの地球で生まれた意味や証を残したい」という願望が強い。

 こうした自制心とロマンが、事業投資の想定が外れた際のブレーキをかけてくれるのだ。仮説が外れたら素直に失敗を認め、軌道修正をしたうえで再び勝負し、また理想を追求していく。なお、1つ付言すると、非金銭的目的意識を持つ人たちは、事業投資で全財産失うことを回避するだけでなく、多額の報酬を自ら「捨てている」場合も多い。今の地位や役職でそれなりに成功して、億単位(場合によっては10億単位)の報酬が約束されていても、自分のロマンを追求することを優先する。そのため、よりよい手段があれば、あっさりとそれまでの地位などを捨てて起業する人を、筆者は多く知っている。

●お金に対しても「意識高い系」になろう

 投資リスク管理の教訓は、何も事業売却をした億万長者の世界に限った話ではない。一般層にも通じる話である。それは、株式市場や仮想通貨市場をみればよく分かる。

 人気のAI・バイオ関連企業の株価や仮想通貨の価値が上昇すると、それに乗じて「最良のシナリオ」だけを考えて信用買いをし、悪いサプライズニュースが出たときに追証を支払えず財産を失う個人投資家が多い。投資時の仮説が楽観的過ぎたのは仕方ないにしても、その後も安易に信用買いを重ねたり、ロスカットを頑(かたく)なに拒否するところに「リスク管理をしくじりお金に人生を振り回される」パターンが見てとれる。

 一文無しになってでも全ての勝負に勝たないと気が済まず、実際一文無しになっても満足しているような、一部のニッチな方々には大変大きなお世話となるようなコラムになってしまった。ただ、それ以外のほとんどのケースでは、投資リスク管理は人生を大きく左右するほど重要だ。そして、お金と最良な「お付き合い」をするには、実はお金以外を人生のよりどころにすべきだということを、成功者たちは物語っている。

金武偉(キム・ムイ)

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