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「年収300〜400万円が一番危ない」残業続きの真面目なエンジニアほど海外FXで破産しやすい

プレジデントオンライン のロゴ プレジデントオンライン 2021/06/10 09:15 高山 一恵
※写真はイメージです © PRESIDENT Online ※写真はイメージです 投資で失敗してしまうのは、どんな人が多いのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「長時間労働で低収入の人ほど、時間をかけてコツコツお金を育てるのではなく、一山当てようとする傾向がある」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山氏のもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

真面目な32歳エンジニアが150万円の借金

コロナ禍で収入が伸び悩む中、それをカバーするために投資を考える人もいるのではないでしょうか。ここ一年でつみたてNISAやiDeCoを始めた人は私の周りでも非常に多いです。

そんな中、袴田修吾さん(仮名)が選んだ投資は「FX」でした。しかし、私のもとにやってきたとき彼は150万円の借金を抱え、破産寸前の状態。仕事熱心で真面目な32歳のエンジニアがハマった「FX沼」について考えてみたいと思います。

つみたてNISAや外貨預金など、資産運用にはさまざまな種類が存在します。その中でFXを選ぶ人は、「一発逆転」狙いの人が多い印象を受けます。一昔前は株を選ぶ人も多かったですが、『四季報』を読んで銘柄や財務分析をするような勉強が必要な株は正直、手間がかかります。

一方のFXは、為替が円高にいくか円安にいくかという、ある意味「丁か半か」の世界。つまり、ギャンブル性が強い取引ともいえます。もちろん経済の長期トレンドを読む力は必要ですが、そういった知識がまったくない人でも、勘が良く、その時バーンと大きくかけられる元手と度胸があれば儲けられてしまう場合もある。だから間口が広いし、手っ取り早く稼げるイメージにつながっているのでしょう。

きっかけは「一獲千金 投資」の検索

袴田さんがFXを始めたきっかけはネットでした。「一獲千金 投資」といった検索ワードでヒットしたのが「海外FX」だったそう。

FXでポイントになるのが、「レバレッジ」です。FXは手元の資金(=証拠金)が少額でも、レバレッジをきかせることで証拠金の10倍、20倍の取引が可能になります。たとえば手元にある10万円に10倍のレバレッジをかけると100万円相当の取引が可能ということです(1ドル=100円の場合)。

国内FXの場合はレバレッジ規制があり、現在かけられるレバレッジは最大25倍までとなっています。しかし、袴田さんが手を出していたのは、“海外”FXでした。海外FXは500倍や800倍といった高いレバレッジをかけられます。しかも、元手となる証拠金はクレジットカード決済が可能。つまり、いまこの瞬間、手元に一銭もお金がなくても高額の取引を始められてしまうのです。パチンコだって手ぶらではできません。これが、非常に危ないのです。

雪だるま式にクレジット決済が膨らんでいく

そもそもクレジットカードを使って海外FXに入金するというのは、ショッピング枠を利用して入金することになります。しかし、一獲千金狙いの人は、「借りたお金は儲かった分で返せばいい」と、気軽にクレジットカードのキャッシング枠を利用して海外FXを始めます。そして予定通りに儲からなければ借金だけが残り、その分を取り返すまでやめられないと、さらに雪だるま式に借金が膨らんでいく。これが「海外FX沼」のマズさなのです。

新規口座開設で5000円のボーナスが出たりするサイトもあって、初回のハードルを下げて誰でも始めやすくなっているのも、沼にハマりやすい一因かもしれません。

袴田さんはその結果、3枚持っていたクレジットカードすべてのキャッシング限度額いっぱいまで利用して海外FXに投資。負けが続いて、結果的に150万円の借金を負いました。200倍という高いレバレッジをかけていたので、相場が少し予想と違う方向にいくだけで、投資したお金がすべて飛んでしまうのです。

しかも仕事中に高いレバレッジをかけた取引をしていたので、そちらが気になってしまって仕事のパフォーマンスも落ち、上司から叱責を受けて減給もほのめかされるような状態だったといいます。

私も国内FXで1000万円を失ったことがあります

かくいう私も、国内FXで1000万円を失ったことがあります。その時かけていたレバレッジは20倍。円安にいくと張っていた相場が円高にいってしまい、5分も経たないうちに証拠金がみるみるなくなり、あれよあれよという間に強制的に取引終了(=ロスカット)。本当にあっという間の出来事でした。

主婦のお客さまで、FXで2000万円儲かった方もいます。そうなると病みつきになりますよね。ただその方は失敗もしています。彼女は1000万以上、FXで飛ばしているのです。

運に賭けると感情的になりやすく、負けを認めたくなくて泥沼にハマりやすくなります。取引が気になってしまい、袴田さんのように普通の生活が損なわれる可能性もある。FXはギャンブル性が高いと言いましたが、付き合い方のコツはきちんと資金管理をした上で、ルールにのっとり冷静に、淡々と、です。

低年収、劣悪な労働環境の人ほどハマってしまう

袴田さんって、見た目はパリッとした好青年で、“ギャンブル漬けでくたびれたおじさん”みたいな雰囲気は皆無なんです。他の海外FXをしている方もごくごく普通で、男性が多いんですけど、エンジニアやIT関連企業で地道にやっている方ばかりです。

ただ彼らに共通しているのが、低収入なのにものすごく働かされる、劣悪な労働環境です。みんな年収が300〜400万円で、毎日終電帰りなのに給料は全然上がらない。袴田さんも深夜残業が当たり前なので、通勤が少しでも楽になるようにと、会社近くの都心にマンションを借りていて、家賃は月10万円。年収350万円だと手取りは25万円くらいですが、それに奨学金の返済が月3万円もあり、余裕はありません。

彼女が欲しくてマッチングアプリに登録したけど、「大企業でもないし年収も良くないからか、女の子から連絡がない」とぼやいていました。そう、袴田さんは結婚のためにもお金を増やしたかったんです。

家賃を抑えたり、月1万円かかっていた携帯代を削減したり、趣味のお金を縮小するなど、もう少し早く相談に来てもらえれば海外FXをやる前にお手伝いできることがあったかなという気がしています。ただ、日々の生活で疲弊している袴田さんにこれ以上、節約という努力を強いるのは酷な気もしました。

不安な人ほど「今のお金」を求める

海外FXやビットコインといった「一山当てる」系の投資を選ぶ人は男性に限りません。女性でよく見かけるのは、美容師などの美容関係の方。長時間労働で賃金が上がりにくい点は男性と共通しているかもしれません。

彼らはみんな先行きに不安を抱えています。私のもとに相談に来てくれた方にはまず、つみたてNISAをおすすめしています。……が、低賃金で今まさに不安を抱えて逼迫(ひっぱく)している方ほど、時間をかけてコツコツお金を育てる「未来のお金」ではなく、「今のお金」に焦点があたる。そういう方がFXの世界に入って上手くいかなくなると、「海外FXの成功例」みたいな高額商材も買ってしまう。もうドロドロです。

FXのスクールもありますが、授業料3カ月30万とかね。プロの目から見ても謳い文句は秀逸で、これはひっかかるなと思います。ただ、取引云々の前に勉強だけでかなりの大金が飛ぶわけで、そこまでお金をつぎこまなくても、もっとスモールに始められる投資はたくさんありますよ、と言いたい。

袴田さんは私が紹介した多重債務に詳しい弁護士さんのところにも相談に行き、毎月3万円ずつ借金を返していくことにしました。借金を返し終えるまでクレジットカードは使えませんし、万が一、借金を返済できずに自己破産……なんてことになったらブラックリストに載ってしまう瀬戸際です。ただ、数年後にきちんと借金を完済できれば仕切り直せるチャンスは大いにあります。この高い代償をどうにか未来につなげていってほしいと思っています。

---------- 高山 一恵(たかやま・かずえ) Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。 ----------

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