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意外と多い会社内での「大人のいじめ」にあなたは気付いていますか?

文春オンライン のロゴ 文春オンライン 2018/06/08 07:00 吉川 ばんび

「大人のいじめ」を目の当たりにしたことがありますか?

「いじめ」と聞くと中学校や高校で起こるものをイメージしがちですが、大人の世界でもいじめは起こっています。とはいえ、どのようなものが「いじめ」に当たるのかがイマイチ想像しづらいかもしれません。気がついていなかっただけで、身近でも「いじめ」が行われているかもしれませんし、あなた自身も知らないうちに「いじめ」に加担してしまっているかもしれません。

 多くの人が「いじめ」だと認識していない「いじめ」が、社会の中では起こっているのです。

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ミスが多ければ、冷たくされても仕方ない?

 以前私が勤めていた会社で、いじめが行われているのを目にしました。

 その会社に転職する前に勤めていた会社でも、いじめを目の当たりにしました。

 いじめに遭っていたのは、たまたまですがどちらも男性でした。二人に共通しているのは「人よりも仕事の覚えが遅く、ミスが多いこと」。コミュニケーションは問題なく取れるけれども、ミスが多くて上司から叱責されていることがよくある、というような人でした。

「ミスが多いようなら、多少冷たくされても仕方ないんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。確かにこの2つのいじめの原因は、そういった考えからだったのです。

 部署における彼らの扱いは、ひどいものでした。

「物を運ぶ」だけの仕事をひたすらやらされた同僚

「わからないところがあるので教えて欲しい」という申し出に対して「そんなこともわからないで、今まで何をやってたの?」という威圧的な態度を取られたり、「みんなはできてることが、何でできないの? おかしいんじゃない?」とまくしたてられたり……。「ミスされるとたまったもんじゃない」という理由で本来の業務にはまったく関わらせてもらえず、「物を運ぶ」だけの仕事しかさせてもらえない時期もありました。

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 そのうち、会社内でも「あいつは仕事ができない」「足手まといだ」という噂が広まり、彼らへの風当たりはどんどん強くなっていきました。みんなが彼らを面白がって、話のネタにするようになったのです。

誰も「指導」をしていない

 私は彼らが叱られているのを聞いているうち、あることに気がつきました。

 誰も、彼らに「指導」をしていないのです。

 ミスをしたことに対して「怒り」の感情を露わにしているものの、「なぜそういうミスが起こったのか」は聞き取りせず、「どうしてくれるんだ」「何てことをしてくれたんだ」という言葉で責め立てるだけ。

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 本来、一番重要であるはずの「今後ミスをなくすためにどうすればいいか?」を教えている人が誰もいなかったのです。私はこの様子を見て「ああ、どうりでミスが繰り返されるわけだ」と思いました。

忙しい会社ほど……

 忙しい会社ほど顕著なのですが、激務ゆえにみんながイライラしていたり、追い詰められたりしていることがあります。そんなイライラのはけ口にされやすいのが「仕事ができない人」や「新人」だと思うのです。

 彼らは、職場においては「弱者」です。本来は、先輩から教育を受けることができる立場ですし、一人前に仕事ができるようになるまではサポートを必要としている人たちです。しかし私が見てきた会社では、それは「理想論」にすぎませんでした。忙しさのせいでみんな余裕がなく、社内には常にピリピリした空気が立ち込めていて、彼らに対しては特にひどい態度を取る人が多くいました。

「あの人は仕事ができなくて嫌われているから、きつい態度で当たってもいい」

 次第にそんな風潮ができあがり、彼らの上司だけでなく同僚、後輩たちでさえも、普段から理不尽な態度を取ったり、彼らを馬鹿にするようになっていったのです。

 これはれっきとした「いじめ」ではないのでしょうか。

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「怒ること」はメインではないはず

 本人が努力することはもちろんのことながら、ミスを本当になくしたいのであれば、彼らと真剣に向き合って指導するはずなのです。ところが実際は「ミスのせいで手間を取らされた」「イライラさせられた」という感情ばかりが先行して、「指導」ではなく「怒ること」がメインになってしまっているケースが散見される。

 こういう怒り方しかしていないくせに、彼らがまたミスをしたときには「なんてことをしてくれた!」とわめき散らして、これを延々と繰り返している。こんな状態で、ミスの再発を防げるはずがないじゃないですか。「どうしてミスをする前にやり方を聞かなかったんだ!」なんて責めるけれど、わからないことを聞いたりすると威圧的な態度を取られるのがわかっているから、彼らだって萎縮してるんじゃないですか。

退職を余儀なくされた同僚も……

 このサイクルに陥ると会社全体で見ても仕事効率が悪いし、生産性も落ちてしまうことはわかりきっているはずなのに、同じことを繰り返しているんですよね。ミスを繰り返す社員を擁護するわけではないですが、はたから見ていると、彼らは「仕事中に溜まったストレスを全力でぶつけるサンドバッグ」にされているとしか思えませんでした。

 さすがに見兼ねた私を含む何人かは、彼らに「もし困ったことがあったら教えてください」など積極的に声をかけるようにしました。上司にも「周りから厳しい態度を取られているようなので、少し気にかけてあげてほしい」と伝えたのですが、改善はあまりなかったように感じました。今振り返ると、「もっと彼らのために何かしてあげられることがあったのではないか?」と思うこともあります。しかし当時の私には、それ以上にできることが考えつかなかったのです。

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 結局、彼らのうちの一人は「仕事ができないから」という理由で、営業職から望んでいなかった倉庫内作業へと異動させられました。そしてもう一人は、社長から呼び出されて「自分で会社を辞めるか、辞めさせられるか選べ」と詰め寄られて、自分で会社を辞めてしまいました。初めは「妻と子供がいるので辞めたくない」と抗議したそうですが、会社側が一歩も譲らず、とうとう辞めなくてはならなくなったようです。他の社員の反応はというと、「あの人、嫌われてたから仕方ないんじゃない?」というような感じでした。

「いじめ」の加害者になってはいませんか

 これって、「会社ぐるみのいじめ」だと思いませんか。本人が望まない異動や退職をさせる前に、彼らを指導することができたと思いませんか。

 テレビのニュースでは、よく中学生や高校生のいじめを取り上げています。それはもちろん重要な問題だと思うんですが、意外と身近にある「大人のいじめ」についても、みんながもう少し意識するべきではないでしょうか。

 自分で気が付かないうちに「いじめ」の加害者になってしまっていないか。

 それぞれがこれを頭の隅に置いておくだけでも、いじめって防げると思うんですけどね。

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