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「投資では長期・分散・低コストが大事」で思考停止すると危険な理由

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2020/06/25 06:00 深田晶恵
投資格言「卵は一つのかごに盛るな」は、分散投資の大切さを伝える先人の教え Photo:Sacura14/gettyimages © ダイヤモンド・オンライン 提供 投資格言「卵は一つのかごに盛るな」は、分散投資の大切さを伝える先人の教え Photo:Sacura14/gettyimages

「投資では長期・分散・低コストが大事」だという考え方が個人投資家にも広まりつつある。ただ、その「答え」だけを覚えただけで思考停止に陥ってしまうと、思わぬ落とし穴にはまってしまうことがある。なぜ「長期・分散・低コスト」が大事なのか、理由をあらためて解説しよう。(株式会社生活設計塾クルー ファイナンシャルプランナー 深田晶恵)

「インデックスファンドがいい」と

答えだけ覚えておくことの弊害

 個人投資家サイドに立って発言をするマネーの専門家のほとんどは、投資信託で資産運用をするなら「長期・分散・低コスト」が原則と語る。これは、「手数料が安く、分散投資の利いた投資信託を、長期投資のスタンスで投資をするといい」という意味だ。

 金融庁も、つみたてNISA(少額投資非課税制度)の対象投資信託を「手数料が低水準、頻繁に分配金が支払われないなど、長期・積立・分散投資に適したもの」としている。投資をする上でのスタンダードな考え方といえる。

 勤務先で確定拠出年金(DC)制度が導入されたり、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAを始めたいと思ったりした。そんなことがきっかけで、インターネットの記事や単行本を読み、インデックス型の投資信託で投資デビューをした人も多いことだろう。インデックス型の投資信託を勧める専門家は、「長期・分散・低コスト」をベースの考え方にしている。

 私もコンサルティングやセミナーでは、インデックス型の投資信託を勧めることが多い。ただ、最近「日本株や世界株のインデックスの投資信託を買っておけば、定年退職する頃に増えているんですよね?」「インデックスってリスクが低い投資信託のことですよね?」といった質問を受けることが増えていて、そのたびに驚いている(もちろん、顔には出さないが)。

 なぜそう考えるのだろうと考えてみた。おそらく、このような質問をする人は「インデックス型がいい」と「答え」だけを覚えているのだろう。しかし、インデックス型の投資信託=低リスクではないし、値動きがある以上、「買っておけば、そのうち確実に増える」というわけではない。

「答え(結論)」だけを覚えておくのは危険。投資は買って終わりではなく、「買って、持って、売って」というひと通りの経験を積むことがとても大事だ。投資している間のマーケットの動きに気持ちを振り回されないよう、ベースとなる考え方や理屈も合わせて覚えておきたい。

 今回は、マネーの専門家がなぜ口をそろえて「長期・分散・低コスト」と言うのか、解説しよう。

手数料と税金は

もうけの足を引っ張るもの

 そもそも、投資の世界での「リスク」とは、値動きの幅のこと。「リスクが大きい」とは、「値動きの幅が大きい」ということだ。株式と債券を比べると、値動きの幅は株式のほうが大きいので、一般に株式投信は債券に投資するものよりリスクが大きいのだ。

 なので、日本株や世界株に投資をするインデックス型の投資信託は、株式に投資をする以上、値動きが大きいので、リスクは決して低くない。

 では、専門家の多くがなぜインデックス型を勧めるのか。

 その理由は、インデックス型は積極運用するアクティブ型に比べ、「低コスト(=手数料が安い)」だから。「投資のもうけの足を引っ張るのは『手数料』と『税金』」という言葉を覚えておこう。

 たとえば、日本株に投資をする同じような投資信託が2本あり、手数料(信託報酬)が1つは年0.5%、もう1つは2%だとする。年率4%で運用できたとき、手数料が0.5%なら3.5%増える、しかし2%なら、2%しか増えない。

 当たり前のことだけれど、高い手数料(たとえば1.5%以上)の投資信託を金融機関で勧められて買う人は、「手数料は投資のもうけの足を引っ張るもの」という事実に気が付いていない。同じような運用成績で安い手数料のものが存在することを知らないからだ。

 1年で見るとわずかに見える手数料の差も、長期間では大きな差となる。たとえば、300万円を30年間4%で運用できたとき、手数料が0.5%なら300万円は814万円になるが、2%なら533万円。その差は約280万円にもなるのだ。

「税金」も同様にもうけの足を引っ張る。投資信託は収益に対し、約20%の税金がかかる。50万円増えたら、税金は約10万円、100万円なら約20万円にもなる。見逃せない金額だ。

 それを解決するのは、NISAやつみたてNISA、iDeCoを含むDC制度だ。収益にかかる税金が非課税になる制度なので、積極的に利用したい。投資額には上限が設けられているが、まずは、非課税の特典があるNISAやつみたてNISA、DC制度を活用しよう。さらに資金に余裕があれば、課税対象になる投資信託を買う、この順番がいい。

 期待できるリターンが同じ程度であれば、税金が非課税になる制度を利用して、手数料の安いものを買う。そのことにより、課税対象で高い手数料の投信よりも「損をする可能性を低くする」ことができるのだ。

「時間分散」をするなら

積み立て投資でやろう

「長期・分散・低コスト」の「分散」は、「投資先の分散」と「時間分散」の2つの意味を持つ。

 投資先を集中させると、大きく値下がりしたときダメージが大きいので、銘柄を分散すべきなのは説明するまでもないだろう。先日、退職金の全額をつぎ込んで日産株を買った人に会った。買って半年後に、「ゴーン逮捕」により日産株は下落し、その人の資産は大きく目減り。持っている資産の大半、しかも退職金で一極集中投資というのは、やってはいけないことの典型だ。

「分散投資」が大事と考え、勤務先のDC制度の投資信託10種類をすべて等分で買っている人を見たこともある。これも驚いた事例だ。なぜ?と聞いてみると、「分散すればするほどいいと思ったから」と言う。

 その人の勤務先のDC制度における投資信託のラインナップは、日本株が2つ、世界株が3つ、債券型が3つ、バランス型が2つの10種類。等分に買うことのメリットはないし、それによりリスクが軽減することもない。それよりも、手数料の安いもので日本株1つ、世界株を1つ買うくらいでいい。

「分散投資は大事」と答えだけを覚えていたため、失敗した例だ。

「時間分散」は、まとまった額の投資資金で一度に投資せずに、何回かに分けるとか、積立投資をしたりするといいということ。

 投資は安いときに買って、高いときに売れば、利益は大きくなる。ところが、いつが安い時期だったのかは、後になってみないと分からない。個別株ならその企業の業績などをよくスクリーニングして、株価が割安なときに買うのも選択肢となる。ただ、投信のようにマーケットの影響を受けやすいものだと、「安値で買って大成功」するのは、難しい。

 将来の株価の動きが分からないからこそ、積み立て投資で時間を分散しようというのも、最近定着しつつあるスタンダードな考え方だ。

「長期投資の呪縛」から

解放されよう

 最後の「長期」は、「長期のスタンスで投資をしよう」という意味なのだが、実は、「長期投資」はマネー業界でも人により微妙に発言の意味合いが異なる。

 投資信託は「半年以内にもうけて売り抜けよう」といった短期投資で臨んではいけない、という考え方は全員共通している。では、長期投資とは何年なのかと考えてみると、あれ、そういえば何年なんだろうと思考停止に陥る。

 よくセミナー会場で「長期投資がいいという話はよく聞くと思いますが、長期とは何年だと思いますか?」と参加者に尋ねてみる。すると、みなさん、「考えてみたこともなかった」とびっくりした表情になる。

「1年、2年、5年、10年、20年、20年以上のどれかを選んでください」と挙手を求めると、多いのは10年。大阪だと1年、2年も結構いて(せっかちが多いのかも)、東北だと20年以上が多かったりする(長生き志向?のんびりしている?)。

 長期投資は何年かという問いに正解はない。漠然と「投資を始めたら長期で持ち続けなくてはいけない」という呪縛にかかっている人が多いのだ。これを私は「長期投資の呪縛」と呼んでいる。

 私自身は、「数年でもうけようと最初から決めて投資に臨むのはNG。結果として10年、20年持っているのもいいけれど、お金が必要になったときにもうかっていたら、たとえ10年経っていなくても、売って使えばいい。マーケットがいいときに一部を売って利益確定するのもあり」と考えている。

 個人投資家は、機関投資家に比べて資金力や情報量が少ないかもしれない。しかし、売ったり買ったり買わなかったり、という投資判断の自由度は機関投資家よりもはるかに高い。個人投資家は、長期投資の呪縛から解放され、もっと自由に投資をしてもいいのではないかと、いつも思う。

 投資信託の運用会社の人が「さぁみんなで長期投資を」というのは、当たり前だ。お金を集めて運用している会社が「好きな時に売っていいですよ」とは大きな声で言えないはずだ。そこは割り引いて聞いてあげよう。

 投資の3原則「長期・分散・低コスト」の理屈が分かったところで、投資を始めるなら「何を買うといいのか」を次回考えてみたい。

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