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格差社会は「平和の代償」という不都合な真実

マネーポストWEB のロゴ マネーポストWEB 2019/10/18 16:00
「ベルカーブの世界」と「ロングテールの世界」 © SHOGAKUKAN Inc. 提供 「ベルカーブの世界」と「ロングテールの世界」

 日本は高度経済成長によって分厚い中間層が生まれ、「一億総中流」と呼ばれる時代が長く続いた。しかし、それが崩壊して「格差社会」が到来。格差は開く一方で、すでにその差を埋められないどころか、先進国を中心に「上級/下級」への分断はますます加速している――。

 そんな実態をさまざまな角度から解き明かした『上級国民/下級国民』(小学館新書)の著者である作家の橘玲氏は、「こうした分断は、平和な世の中が続く限り拡大する一方だ」という。どういうことか。橘氏が説明する。

「かつて一億総中流と呼ばれた時代は、富の蓄積が平均値を中心に正規分布する『ベルカーブの世界』でした。しかしグローバル化によって世界が全体としてゆたかになり、先進国と新興国のあいだの格差が縮小したことの代償として、先進国では中間層が崩壊し、富が一部の富裕層に集まる『ロングテール(べき分布)の世界』が出現しました。

『下級国民』というのは、かつて『中流の下』にいた人たちがショートヘッド近くの貧困層に集まる現象です。その一方で『中流の上』の人たちは富を増やし、そのテール(尻尾)がどんどん伸びて『上級国民』を形成しています」(橘氏)

 アメリカでは最富裕の上位400人が所有する富が下位50%の富の合計を上回り、上位1%が同国の個人資産の42%を所有している。だがこれは「1%対99%」に富が局在しているということではなく、いまやアメリカでは10世帯に1世帯がミリオネア(金融資産100万ドル以上)だ。橘氏は、「これはもはや後戻りできない流れになっている」という。

「皮肉なことに、格差は、社会が平和で安定しているからこそ拡大しいきます。資産は複利で増えていきますから、毎月の余裕資金を株式などに積み立てていけば、30年、40年後には大きな資産を形成できます。それに対して、毎月稼いだ分をすべて生活費に使ってしまえば、いつでまでたっても銀行口座の残高は増えません。これを2世代、3世代と繰り返せば、両者の『経済格差』はとてつもなく大きなものになるでしょう。これが、平和な社会が『上級国民(富裕層)』と『下級国民(貧困層)』に分断されるメカニズムです」

 実はこれは、アメリカの歴史学者ウォルター・シャイデルが『暴力と不平等の人類史』(東洋経済新報社)で述べていることで、歴史的に見れば、平和な時代にはどこでも格差が拡大している。であるならば、そうした不平等を是正するにはどうすればいいのか。

「シャイデルはこの大著で、人類史に平等をもたらした4人の『騎士』を取り上げています。それは『戦争』『革命』『(統治の)崩壊』『疫病』です。二度の世界大戦やロシア革命、文化大革命、黒死病(ペスト)の蔓延のような『とてつもなくヒドいこと』が起きると、それまでの統治構造は崩壊し、権力者や富裕層は富を失い、平等が実現するのです。

 そのように考えれば、戦前までは格差社会だった日本が戦後になって突如『一億総中流』になった理由がわかります。ひとびとが懐かしむ『平等な社会』は、敗戦によって300万人が死に、国土が焼け野原になり、アメリカ軍(GHQ)によって占領された“恩恵”だったのです。

 これが正しいとするならば、『いかなる犠牲を払っても平等な世界を実現しなければならない』と主張するひとは、その前にまず社会全体を“破壊”しなければなりません。シャイデルによれば、そのもっとも効果的な手段は核戦争です」(橘氏)

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