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目先の見栄やこだわりは要注意。差し押さえになった「憧れの注文住宅」とは?<不動産執行人は見た13>

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2018/09/06 15:53

「注文住宅」――。

 それは多くの人にとっては憧れの最終形態であり、自分で間取りや建材を選べる楽しさからも人気は高い。とは言え、差し押さえ・不動産執行の現場で出会う「注文住宅」は、人々の想像とは程遠い。その残念さ加減も多様だ。

 例えば多くの奥様方が憧れるシルバニアファミリーのようなお家。パッと見は可愛らしい洋風作りなのだが、建材が規定フォーマットで日本の環境に適した大量生産品でないことが多く、可愛らしい洋風建築の“本場”とされる国から無理やり日本サイズに合わせたものを輸入する。

 すると、10年ほどで窓が開かない、扉の立て付けに不具合が、鍵が回らないといったことが発生する。

 これまでに出会った最悪のケースでは、家中の窓が全て開閉不能に陥り、はめ殺しのままという状況のものもあった。

 他にも自身のライフスタイルに合わせすぎた家、風呂だけ広い一点豪華主義、ビルトインガレージとダイニングが一体化、二人の愛の巣としてラブラブ手形や記念品を壁や柱に埋め込むも離婚。外光の取り入れを極限まで考え全ての部屋に大きな天窓を用意した家では、雨のたびに滝のような雨漏りに見舞われるというものさえあった。

◆親孝行のつもりの注文住宅が……

 そんな中、印象的だった物件がある。

「両親に家を建ててやりたい」

 親孝行したつもりが逆に、悲しい結果になってしまった注文住宅だ。

 物件は狭い敷地面積ではありながらも人気の住宅地内の端。駐車場はないが最寄り駅からは徒歩約20分。

 築年数が極めて浅いながらも、差し押さえが入るという不可解な案件だった。

 日当たりも悪いということはなく、不動産執行ではお馴染みの湿気も気にならない。建物自体にも外から感じられる欠陥はなく、地盤も良好。

 では一体何が問題なのか? 漠然と疑問を感じつつ屋内調査を開始した。

◆住居として基本的なものが欠けていた

 内部は独特な作りで、玄関を開けるなり収納機能も備えた急斜面な階段がそびえ立つという狭さなのだが、吹き抜けがあり窮屈さは感じさせない。

 引き戸が棚になっていたり、中二階に開放的な和室が設けられたりと、縦のスペースが有効活用された3階建て。まるで、某リフォーム番組の匠のような仕事っぷりが随所に光る。

 しかし……なんということだ。

 洗濯機置場がどこを探しても見当たらないのだ。当初は匠がどこかのスペースに収納してしまったのかと考えたのだが、あまりにも見つからないため債務者に訪ねてみると……。

「洗濯機置場、作るの忘れてしまって……」

 最終的に洗濯機置場は3階部分を切り取ったような、狭い屋上に無理やり設置されるということに。

 この急激な階段の連続、手すりもなく落ち着かない中二階和室、洗濯スペースが屋根のない屋上ということが災いしてしまった。

 債務者は掘っ立て小屋に住む老いた両親へのサプライズプレゼントとしてこの物件を用意したのだが、当初は喜んでくれた両親も、あまりの暮らし難さに数か月で元の掘っ立て小屋に帰ってしましい、機嫌を損ねた債務者がローンの支払を放棄。その後両者は顔を合わせることもなくなってしまったという――。

 築年数の浅いこの家が競売物件となってしまった“不可解さ”の正体はこのようなものだった。

 注文住宅には思い入れが強い。家主の思いのみで構成されているケース、他の人が住む可能性など微塵も考えられていないケースがほとんどだ。

 素晴らしいハウスメーカーであれば、これらを軌道修正し機能的で居住性の高い間取りに導いてくれるのだが、それでは注文住宅の意味がないと考える家主も少なくない。

 もし今後、注文住宅での設計を検討しているという方がいるようであれば、ひと呼吸おいて「他の人に売却するとしたら」「高齢者が住むとしたら」「小さな子どもに危険はないか」という視点で見つめ直してみるのはどうだろうか。

 目先の見栄えや夢だけで構築された物件はやがて大きな負担となり、貴方にのしかかって来るかもしれない。

ハーバービジネスオンライン: ※写真はイメージです © HARBOR BUSINESS Online 提供 ※写真はイメージです

【ニポポ(from トンガリキッズ)】

ライターの傍ら、債務者の不動産を競売にかける『不動産執行』のサポートも行う。2005年トンガリキッズのメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮やカルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント、週刊誌やWeb媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。

Twitter:@tongarikids

オフィシャルブログ:団塊ジュニアランド!

動画サイト:超ニポポの怪しい動画ワールド!

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