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転職時、知らないと損する「社会保険の超常識」 会社員が知っておくべき3つのポイント

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/06/20 08:00 武澤 健太郎
転職を考える際には、社会保険料の仕組みをしっかり学んでおきましょう(写真:freeangle/PIXTA) © 東洋経済オンライン 転職を考える際には、社会保険料の仕組みをしっかり学んでおきましょう(写真:freeangle/PIXTA)

 先日、7年ほど勤めた会社を退職し、キャリアアップのため転職したSさん(35歳、男性)。転職先で初めてもらった給与明細と前職で最後にもらった給与明細を見比べて驚きました。

 同じ月に社会保険料が両方から控除され、しかも前職の社会保険料は毎月の金額の2倍近くも控除されていたからです。

 Sさんは、社会保険のルールに詳しくなく、それぞれの会社の計算が正しいのか、間違っているのかわかりません。前の職場に電話で確認するのも気が引けて困ってしまったのでした。

 転職市場が活況の中、転職を検討されている方も多いと思います。そこで、今回は、転職時に損をしないように押さえておきたい社会保険のルールについてお話しします。

知っていましたか?社会保険料は日割り不可

1. 押さえておきたい社会保険料の仕組み

 会社員が加入している社会保険(健康保険、厚生年金保険)。その保険料は、会社と折半で負担しており、社員分は、毎月の給与から源泉徴収という形で自動的に控除されています。また、社会保険料は、月単位でかかります。つまり、入社、退社の日付によって保険料が日割りにされることはないのです。

 では、いつからいつまでかかるのか。それは、『入社月から退職日の翌日の属する月の前月』までかかるのです。

 ちょっと込み入った話になりますが、要は、入社月は、1日入社だろうが、月末入社であろうが1カ月分の保険料がかかるということです。

 一方、退職月は月末退職であればその月まで、月末より1日でも前に退職すれば退職月の保険料がかからないことになります。例えば、5月31日退職であれば、5月分まで保険料がかかり、5月30日退職の場合は、5月分はかからず、4月分までの保険料がかかることになります。

 ただし、注意が必要なのは、5月30日で退職した場合。その会社では5月分の社会保険料はかかりませんが、5月31日付で転職したり、転職しなくても国民健康保険や国民年金に加入、変更することになるので、別途、国民健康、国民年金保険料がそれぞれ1カ月分かかかってしまいます。退職日を月末より前にすることによって必ずしもおトクになるわけではないので、ご注意ください。

 次に、毎月給与から控除される社会保険料についてですが、毎月の給与から控除されているのは、原則として前月分の社会保険料です。例えば、5月給与で控除されているのは、4月分の保険料ということです。そのため、一般的には入社月の給与からは保険料は控除されず、退職月の給与からは前月分と退職月分の2カ月分が控除されます。

 例えば、給与の締め日が月末で、支払い日が25日であった場合。5月31日退職したケースでは、5月25日に支払われる給与で4月分と5月分の2カ月分の社会保険料がまとめて控除されることになるのです。

2. 社会保険は要件を満たせば二重に加入

 社会保険は、勤務先で要件を満たせば、その会社の社会保険に加入しなければなりません。つまり、どこかで加入していれば免除されるわけではないのです。そのため、転職のタイミングによって、同じ月に別の会社で勤めてしまった場合は、社会保険に二重で加入することもあるわけです。

 冒頭のSさんの退職日は5月31日だったようです。ただ、Sさんは4月中旬から年次有給休暇を消化していた関係もあり、転職先には5月20日付で入社していたのです。そのため、転職先でも社会保険に加入することになり、5月分の社会保険料は両方の会社でかかっていたというわけです。

 しかも、前述のとおり前職では、退職月に4月分と5月分の2カ月分が控除されており、転職先は入社月から控除する会社であったため、両方合わせて3カ月分の保険料が控除されていたので、びっくりしてしまったのです。

「二以上事業所勤務届」を必ず出そう

 ところで、社会保険に二重で加入してしまった場合は、「二以上事業所勤務届」を本人が年金事務所等に届け出することによって、給与(報酬月額)を合算した金額で、標準報酬月額(以下、ひょうげつ)を算出してくれます。

 ちなみに、この「ひょうげつ」とは、社会保険の事務処理を簡略するために考えられた仕組みで、給与をおよそ1万円から6万円の幅で区分した等級であり、健康保険は、139万円、厚生年金は62万円が上限になっています。社会保険のあらゆる場面で使われる重要なキーワードで、自分の『ひょうげつ』がわかればいろいろな計算ができます(なお、詳しくは過去記事『給与が減ったと思ったら「この表」を見よ!』をご覧ください)。

 例えば、A会社の給与が月50万円でひょうげつが健保、厚生年金ともに50万円、B会社の給与が月60万円でひょうげつが健保、厚生年金ともに62万円だった場合、A社の保険料は、健保分(介護保険なし)が月2万4750円(協会けんぽ東京支部平成31年4月)、厚生年金分が月4万5750円になります。また、B社の保険料は、健保分(介護保険なし)が月額3万690円(協会けんぽ東京支部平成31年4月)、厚生年金分が5万6730円となり、月額合計15万7920円になります。

 一方、「二以上事業所勤務届」の届け出をした場合は、A社とB社の給与を合算することになるので、給与が110万円となり、ひょうげつは健保が109万円、厚生年金が62万円になります。そのため、保険料は健保分(介護保険なし)が、月額5万3955円(協会けんぽ東京支部平成31年4月)、厚生年金分が5万6730円となり、月額合計11万685円となります。

 つまり、「二以上事業所勤務届」を提出しなければ、5万円近くも損をしてしまうことになるのです。

 この差は、ひょうげつに上限があるためで、給与を合算しておよそ62万円を超える場合は、届け出しないと損をすることになり、給与が高ければ高いほど損をすることになります。

 なお、「二以上事業所勤務届」は会社ではなく、被保険者である社員自身が原則手続きをする必要があります。案内が年金事務所から自宅宛てに届くので、「二以上事業所勤務届」手続きをお忘れなく。

3. 賞与月は、月末前に退職すれば保険料はかからず

 前述のとおり、社会保険料は、月末まで在籍すればかかり、月末より1日でも前に退職すればかかりません。この仕組みは、毎月の給与にかかる保険料だけでなく、賞与についても同様です。

 そのため、例えば賞与が50万円支給された場合ですが、保険料率は毎月のひょうげつにかかる保険料率と同じなので、前述のケースと同じ金額になるため、健保分(介護保険なし)が月2万4750円(協会けんぽ東京支部平成31年4月)、厚生年金分が月4万5750円で合計7万500円になるわけですが、それが月末退職でない場合は一切かからないということです。つまり、手取りが約7万円多くなるわけです。

 なかなか、月7万円貯金することは難しいので大きな額だと思います。ただ、年金については、もちろんその分が将来の年金に反映されませんので、その点は頭に入れておいてください

 ちなみに、会社によっては、賞与について支給日に在籍していることが賞与の支給される要件だったり、また退職金等を算定するに当たって、1カ月在籍していない月はカウントされないといった会社独自のルールがありうるので、退職日を検討する際は、それらを十分確認したうえで、判断する必要があります。

 社会保険のルールを知らないと損することも多いです。転職前にこれらのルールを頭の片隅に入れておくといいかもしれません。

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