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「親が支払いしてる」「つまりクソ野郎」ドコモ侮辱メモでわかったケータイショップ“悲惨な接客現場”

文春オンライン のロゴ 文春オンライン 2020/01/14 19:20 石川 温

 ドコモショップ市川インター店において、店員が客に対して侮辱的な応対をしていたことがSNSで拡散されて話題となり、1月10日にはNTTドコモが正式に謝罪コメントを発表する事態となった。

ドコモ本社も謝罪する事態に ©iStock.com © 文春オンライン ドコモ本社も謝罪する事態に ©iStock.com

 接客中のメモに「親が支払いしてるから、お金に無トンチャク」「つまりクソ野郎」という言葉が記載され、そのメモが客の手に渡ってしまったというのだ。

 確かに侮辱的な接客であるし、ドコモショップ市川インター店は許されるべきではない。今後、業界をあげて、このような騒動が再発しないように祈るばかりだ。

 全国に数千店舗、キャリアショップが存在するが、ほとんどのショップの店員さんは真面目に働いている。しかし、今回の騒動により、キャリアショップ全体のイメージが失墜してしまうのはとても残念なことだ。

経営危機にさらされるキャリアショップ

 実は全国津々浦々にあるキャリアショップは、厳密にいうとNTTドコモやauブランドを掲げるKDDI、ソフトバンクが経営しているものではない。ごく一部だけ、キャリアの直営店やキャリアの関連会社が運営している店舗はあるものの、大半は代理店が運営しているものになる。

 都心部など大規模なところであれば、商社や端末メーカーだった企業の関連会社などが運営している。地方ともなれば、地元でガソリンスタンドやファミレスなどを経営している会社がキャリアショップを運営しているというところもある。つまり、NTTドコモやau、ソフトバンクの看板を掲げてはいるものの、大半は「別会社」なのだ。今回の騒動を起こしたドコモショップ市川インター店も代理店で兼松コミュニケーションズという会社が運営している。

 そんなキャリアショップはいま、どこも経営危機にさらされている。

 総務省による端末の割引規制により、とにかくスマホが売れなくなっている。かつては「実質0円」や「一括1円」といった割引施策によって、スマホを手軽に買えていたが、いまでは総務省から割引に対して規制が入ってしまったため、上限2万円しか割引ができない。

 結果として、ユーザーがキャリアショップから遠のき、キャリアショップとしては経営が立ち行かなくなっているのだ。

 もうひとつ、キャリアショップの経営が厳しさを増しているのが「人手不足」だ。とにかく、キャリアショップの店員になろうという人がいないのだ。

 実際、キャリアショップの店員は、相当ハードな接客業と言われている。店頭では、クレーム客から罵倒されるケースも少なくないという。むしろ、日頃から侮辱されているのはキャリアショップの店員だったりする。実際に筆者も、キャリアショップで料金の支払いや修理対応で店員を罵倒している中年男性を見かけることがある。

 また、キャリアが提供する新サービスや新料金プランなどは、頻繁に追加されたり変更されることがある。それらをしっかりと勉強し、頭の中に叩き込み、わかりやすく接客するというのは本当に骨の折れることだ。

 いまではスマホの機種変更をすれば、対応時間が2時間近くなることもある。長時間、同じ客に対してわかり易く丁寧な接客を心がけようと思えば、精神的にも体力的にもつらい仕事となる。

シニアの溜まり場になった?

 数年前までは、スマホが飛ぶように売れたので、スマホさえ売っていればよかった。しかし、割引規制が強化されたこともあり、とにかくスマホが売れない。

 そんななか、キャリアショップが存続していくには、コンテンツなどの有料オプションに加入してもらい、さらに月々の支払額が高い料金プランに切り替えてもらうしかない。今回の騒動も、有料オプションや高額な料金プランへの勧誘がきっかけとなっていると言えるだろう。

 現状、キャリアショップは「儲からない」と嘆く代理店関係者が多い。

 例えば、地方のキャリアショップでは平日の午前中、シニアの客しかいないところも多い。その関係者によれば、シニアがキャリアショップに訪れ、若い店員を話し相手に時間をつぶしているというのだ。もはや、シニアにとってキャリアショップは、病院と同じような“社会との接点の場”という位置づけなのだ。

 当然、オプションも料金プラン変更も行わず、ただ話をしているだけのシニアからは1円も利益は発生しない。

 また、都心部のキャリアショップでは、ネット通販などで購入したキャリア契約の安価なスマホを持参し、設定だけをキャリアショップの店員に頼むという猛者に困っているという話を聞く。

 キャリアショップでスマホを購入してくれれば、その店の売上につながるが、他のところで購入したスマホを持ち込まれても、キャリアショップにはこれまた1円の売上にもならない。

 客とすれば「ドコモで契約しているのだから、設定して当たり前」というのだろうが、代理店としては本当に仕方なく接客しているというのが現状なのだ。

 このままでは代理店の経営が立ちいかなくなるため、NTTドコモでは2019年12月1日より、ショップ店頭以外で購入したスマホに対してのサポートは有償としている。

ショップが地方都市から消える日

 将来的に、キャリアショップの経営から撤退する代理店が相次ぐ可能性がありそうだ。「近所からキャリアショップがなくなる日」も近いかも知れない。

 そこで困ることになるのが、我々ユーザーだ。

 都心部に住んでいれば、近所のキャリアショップが撤退しても、隣駅のショップに行けば、いざというときに対応してくれる。

 しかし、これが地方となれば話は別だ。北海道であれば、近所のキャリアショップが撤退したら、次に近いキャリアショップは100キロ以上も離れているということもあり得るのだ。

 キャリアショップは、スマホが壊れた時など、いざというときのサポート拠点でもあるし、ケータイからスマホに乗り換える時など、ITに詳しくない人がITにデビューするための、きっかけを与えてくれる場所でもある。

 日本全国、ITの力によって生活を豊かにしていくために、キャリアショップというのは貴重な存在でもあるのだ。

 改めていうが、今回のドコモショップ市川インター店の対応は許されるべきものではない。しかし、それとは別の話だが、いまのキャリアショップにおける惨状にも目を向けてもらいたいものだ。

(石川 温/週刊文春デジタル)

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