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ソフトバンク、携帯ショップ強制閉店の非情 ルール運用が「優越的地位の濫用」との指摘も

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2020/02/15 07:20 山田 雄一郎,奥田 貫
ソフトバンクで運用されている携帯販売店の閉店ルールがわかった(編集部撮影) © 東洋経済オンライン ソフトバンクで運用されている携帯販売店の閉店ルールがわかった(編集部撮影)

 ソフトバンク担当部長:店舗評価Dを6カ月で3回取った低評価店舗は、勧告してから期限までに商流変更できなければショップコード(店舗ごとの識別コード)が停止になって、運営自体が終了になってしまいます。今から半年後以降の運営はできません。

 携帯電話販売店オーナー:要は店を強制で閉めろ、店を他のオーナーに売れということでしょうか?

 ソフトバンク担当部長:そうですね。原則オーナーチェンジの形になります。

 携帯電話販売店オーナー:(その店舗で)利益が出ているのに売れと言うのですか?

 ソフトバンク担当部長:まあ、そうですね。ソフトバンクショップ事業から勇気ある撤退をしていただいて、違う事業に専念いただいたほうが御社にとって先が見えるのではないでしょうか。

D評価が3回で「低評価店舗」に認定

 以上のやり取りは東洋経済が入手した、ソフトバンクの担当部長と携帯電話販売店オーナーの会話記録の一部である。この中に出てくる「商流変更」とは別のオーナーの店にスマートフォンなどを卸す変更のことで、「オーナーチェンジ」は店舗運営のオーナーが変わることを意味する。

 ソフトバンクの携帯販売店はさまざまな項目で採点され、S、A、B、C、Dの5段階でランク分けされている。その評価に、客からの評判はあまり関係ない。他社からの乗り換えをどれだけ取れたかなどに加え、ソフトバンクが売りたい大容量のデータ通信プランや有料オプションにユーザーをどれだけ加入させたかで評価点が決まってくる(詳細は「ソフトバンク携帯販売店が受ける『過酷な評価』)。

 ソフトバンクが毎月配布しているショップ施策をまとめた資料「〈2020年2月度〉ソフトバンク・ワイモバイルショップ施策 運営支援金制度および支援条件」中に「低評価店舗施策」という項目がある。そこに記されたルールをまとめたのが上記の表だ。

 直近6カ月間に店舗評価Dが3回以上だと「低評価店舗」とみなされる(Cが2回でDが1回とカウント)。そして、翌々月をメドにソフトバンクが「商流変更・閉店を勧告」するというもの。冒頭の会話でソフトバンクの担当部長が口にしているのがこの低評価店舗施策である。

 例えば、2020年2月にある販売店の評価がDとなり、直近6カ月で3回目となって低評価店舗に認定されたとしよう。その場合、2カ月後に「商流変更・閉店」の勧告を受け、以下のように2020年10月末までが「閉店猶予期間」となり、店をたたむことを強いられる(新店や移転後1年以内の店舗などは、低評価店舗施策の対象外になる)。

 関係者によると、この運用が始まったのは2016年から。販売店に対して定期的に配布されている店舗施策の資料に新たなルールとして盛り込まれたという。問題は、この閉店ルールが販売店のオーナー側との合意なしに一方的に導入されたことだ。ある大手販売店の幹部は「ソフトバンクの施策変更は、(現在の)強制閉店ルールも含めて事前通告や相談はまったくない。いつもいきなりで、合意もない」と証言する。

 ソフトバンクと販売店オーナーが合意して取り交わす「代理店委託契約書」にはこの「商流変更・閉店ルール」は明記されていない。同契約書71条には「甲から契約解除ができるのは委託業務の履行実績が一定の期間を通じて不振である等相当の理由があると甲が判断する場合、1カ月以上前に予告することによって契約を解除できる」と書かれている。「甲」とはソフトバンクのことだが、何をもって「一定の期間を通じて不振」とみなすのかは記されていない。

抗議しても取り合ってもらえない

 冒頭のやり取りにある販売店オーナーがソフトバンクの販売店を始めたのは、現在の閉店ルールが始まった2016年より何年も前。店舗開設のために銀行から億円単位の借り入れもしているという。それだけに、「代理店契約書に『D評価が3回なら強制退店』と最初から書いてあったなら、そんなリスクの下では契約を結ばなかった。ある日突然、一方的にソフトバンクが決めたルールを押し付けられた。当時から抗議しているが全く取り合ってもらえていない」と憤る。

 フランチャイズ問題に詳しい中村昌典弁護士は、「契約内容を変更するなら変更合意書が必要だが、それがないのは問題だ。これほどあからさまな優越的地位の濫用はほかに例がない。民法の一般条項に反しており、公序良俗違反、信義則違反、権利の濫用にあたる」と指摘する。

 中村弁護士はセブン-イレブンをはじめとするコンビニエンスストアのフランチャイズ問題に力を入れて取り組んでいるが、「コンビニでもこんなひどい閉店のさせ方をしていない。ソフトバンクが代理店に強いていることは1ミリたりとも正当化できない」と批判する。

 通信業界のルールのあり方について議論する総務省の有識者会議のメンバーで、野村総合研究所パートナーの北俊一氏は「(店舗運営のルールで)同じような問題を抱えるコンビニ業界に対して、経済産業省が研究会を開催しているが、総務省でも早急に議論を開始すべきではないか」と話す。

 販売店に課している閉店ルールは優越的地位の濫用に当たるのではないのか。ソフトバンクに尋ねると、「機密事項や営業戦略に関わるため、各種資料や質問状に記載いただいた内容について、事実関係の有無を問わず、詳細のご説明は差し控えさせていただきます。なお、本件に関わらず各種施策は、社内弁護士や顧問法律事務所に確認のうえ実施しています」(広報室)との回答だった。

 ソフトバンクには店舗評価のほかに「オーナー評価」という指標もある。これはオーナーが運営する店舗全体の成績のほか、運営規模などさまざまな項目に基づいて決まっている。店舗評価と同様、S、A、B、C、Dの5段階でランク分けされている。店舗評価がSでもオーナー評価が低いとソフトバンクから支払われるインセンティブ(手数料や報奨金)が少なくなる。

 以下は冒頭のソフトバンク担当部長と販売店オーナーとの別のやり取りだ。

 ソフトバンク担当部長:オーナー評価Bだとどの企業も今、赤字になっていて、継続運営は難しいということで他社に譲渡いただく商談をさせていただいています。オーナー評価Bだと今後、儲けさせることができないからです。

 販売店オーナー:Bで、儲からないですか?

 ソフトバンク担当部長:儲からないです。

 販売店オーナー:S、A以外はもう、死ねということですか?

 ソフトバンク担当部長:「死ね」とは言わないですけれども、うちの事業ではA以上をとっていただかなければ、儲からない形になります。

6割近いオーナーが消える?

 このやり取りの中で、ソフトバンクの担当部長は「B以下のオーナーが全体の約6割」とも話している。そこと「他社への譲渡」について商談しているのであれば、成績上位の4割のオーナー(評価がSかA)に販売店運営の集約を図っているということになる。野村総研の北氏はこうした動きについて、「ソフトバンクは今後1年以内に販売店の整理・再編にメドをつけようとしているようだ」と見る。

 同業他社のNTTドコモやKDDIもこれまで販売店の整理・再編を推し進めてきた。それは、「ドコモは20年、KDDIは10年がかりの取り組みだ」(北氏)。ソフトバンクは携帯事業で数千億円規模の利益を毎期上げている。B評価のオーナーでも儲からないような状態にするのではなく、販売店に対する利益の分配を考えるべきだろう。

 ソフトバンクは「店舗の閉店につきましては、一方的に行うものではなく、当社と店舗側との協議のうえで進めさせていただいています」(広報室)と言う。だが、冒頭のソフトバンク担当部長との会話記録からは、一方的に決めたルールに機械的に当てはめて、閉店を勧告しているようにしか見えない。

 前出の中村弁護士は「閉店以外の選択肢を与えていないので明らかな強制だ。仮に販売店の承諾を取ったとしても、それも承諾と称する強制にあたる。ソフトバンクは、販売店が文句を言えない立場に付け込んでいる」と批判する。はたして、D評価が3回で”アウト”という閉店ルールの運用をどこまで続けるのだろうか。

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